ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大病院の分娩室を“開放”

2006年06月16日 | 地域周産期医療

当科の場合も、オープンシステムの制度は一応あるにはある。婦人科疾患の場合に紹介元の先生と一緒に手術を実施した例はあるが、産科ではまだその制度を利用した例はない。開業の先生方にとっても、昼間は御自分のクリニックでの外来診療で忙しく、夜間や休日にお産でいつ呼び出されるかわからないようでは身が持たない。妊婦検診は開業医で、分娩は大病院でというセミオープンシステムの方が、開業の先生方には利用しやすいと思われる。しかし、妊婦さんたちにとっては、日頃お世話になっている先生が分娩時にも立ち会ってくれたら非常に心強いと思うので、今後は、産科でも開業の先生方が(セミオープンシステムだけでなく)オープンシステムの方も今より利用しやすくするような方策をいろいろと考えていきたい。

当科の場合は、今のところ、セミオープンシステムが主流となっているが、分娩時に医師や助産師と初対面ではまずいと考えて、妊娠8週前後と妊娠28週前後、および妊娠34週以降の妊婦検診は当科で実施している。また、助産師外来も創設し、バースプランやフリースタイル分娩も取り入れた。

****** 読売新聞、2006年6月15日

大病院の分娩室を“開放”

 産科医不足の今、お産を大病院に集約する動きがあるが安全と妊婦の安心を両立できるとして注目を集めているのが、「オープンシステム」だ。

 大阪府池田市の主婦加藤真由美さん(35)は今年4月、このシステムで二男を出産した。妊婦健診は大阪府豊中市の開業医、千葉喜英さんのもとに通い、陣痛が始まると大阪厚生年金病院(大阪市)に入院。千葉さんは外来診療の合間を縫って何度も病院を訪れて加藤さんを励まし、最後は分娩(ぶんべん)室に入って赤ちゃんを取り上げた。

 長男(9)を国立病院で産んだ時の主治医が千葉さん。「その後開業した先生の医院は健診のみ。でも、健診からお産まで一貫して担当してもらい、安心できました」

 同システムは、病院の分娩設備や人員を地域の開業医に開放するもの。米国のシステムにならい、開業医は自分の医院で妊婦健診のみを行い、お産は病院に出向いて指揮を執る。

 欧米では、お産は設備と人員の整った大病院で行うのが一般的だが、日本ではお産の47%が、診療所(ベッド数19以下)で行われている。1990年代半ばに静岡県浜松市の病院が先駆的に同システムを導入し、2003年に厚生労働省の研究班も「安全なお産には同システムが望ましい」と提言した。昨年度から国のモデル事業も始まり、今年度は全国6病院が参加し、他の病院にも広がってきた。

 加藤さんが出産した大阪厚生年金病院も、一昨年4月に同システムを導入。産婦人科部長の高木哲さんは「地域医療を担う公的病院として、健診のみの開業医のお産を受け入れることにした」と話す。

 同病院は開業医だけでなく、地元の開業助産師とも提携した。すると、「ベテラン開業助産師の技術を目の当たりにして、私たちも自然なお産への意識が高まった」と、同病院の助産師西条洋美さん。自由な分娩姿勢や、妊婦に「どんなお産がしたいか」を書いてもらう「バースプラン」を取り入れた。

(以下略)

(2006年6月15日  読売新聞)