なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

今年のまとめ

2017年12月31日 | 
 色々あったような、なかったような・・・・・。馬については、ようやく上向きという所でしょうかね。

 突発する跛行について、いったいどうやって対応するべきなのか、そもそもその病理実態は何なのか、でもって、治療をどうするべきなのか、把握するのに結局3年がかりになってしまったわけだが。

 病態は要するに腺疫の後遺障害で、その実態は免疫異常。腺疫罹患馬の1%前後に発症するもので、予後不良、なーんてものの本には書いてある。免疫異常で予後不良なんて、ふざけんなよ~、小動物ではこの程度の免疫異常なんぞ今はごく普通に起こるもんだ、それで予後不良なんか、少なくとも当院では絶対にならん!!と思ってあれこれ調べたんだけど。分かったことは「馬の臨床はなーんも進歩がない」というしょうもない現実。結局体内での薬物動態すらまともに研究されていないんだから。

 免疫異常で予後不良とはどういうことかというと、免疫疾患の第一選択は当然ながらステロイド、ところが馬にはステロイドは使えません、使っちゃイケマセン、使ったら即蹄葉炎を起こしてアウトです、とものの本には書いてある。確かに、ステロイドを体重換算して使ってみたら、蹄葉炎を起こしたらしくて、跛行が最悪状況になって、そこから復活するのにナント3か月以上かかった、のは事実。この時はもうダメかと思った。これが2年前くらいか。効果が上がると分かっている薬を使えない、という治療上のジレンマに陥っちゃったんですよね。
 蹄葉炎を疑わせる酷い跛行を改善できたのが、実は漢方薬で、それ以来その漢方薬は手放せない薬になってしまった。ずうっと継続投与しないとだめそうな。

 しかーし、残念ながら、漢方薬をずっと投与してればいいかというと、やっぱり跛行が起こる。しかも脈絡なく突発的に起こる。これをどう解決するべきなのか、考え続けてきた。

 で、そもそも馬に使われているステロイドの種類、その投与量に問題があるのでは、という結論になったわけ。

 動物用医薬品で馬が対象となっているステロイド薬はデキサメサゾン。これ、強すぎますよ。かつ、強いわりに効果が上がらない、のは小動物での臨床上の印象。人医では、ステロイドはウイーク~ストロンゲストまで5段階に分類されてる。強いほど投与には注意が必要なのだ。デキサは4のストロングに該当する薬で、自分の中では、かなり要注意薬。それを能書に書かれてる通りの量で投与したら、危険ではないか?そもそも、推奨投与量にはなにか根拠があるのか?ないんじゃないのか?

 ところで、ステロイドを投与するとなぜ蹄葉炎?メカニズムが自分の中ではかなり整理されて分かってきたのだが。
 馬、というか草食獣は、我々人間や犬猫のような雑食~肉食獣と比べると、物凄い種類・数の腸内細菌を消化管内に飼っている。それなしではあんなカサカサした草を消化しきるのは不可能。その中には善玉菌ばかりじゃなく、当然悪玉菌も山ほどいて、そのバランスが日々微妙に揺れ動いている、はずなんだ。それを消化管の免疫が仕切っている。ステロイドを投与すると、全身の免疫が抑制されちゃうから、腸の免疫力も低下する、その結果、悪玉菌がどっと増殖して血流に乗っかっちゃって、蹄に集中した結果、蹄内で炎症が起こって蹄葉炎、という事じゃないかな。

 これは、濃厚飼料を多給した場合も同じで、その結果消化管内の細菌バランスが崩れて、同じ状況に陥るわけだ。濃厚飼料の何がまずいかというと、糖質。草食獣に糖質は禁忌と言ってもいい。

 あと、草食獣の免疫機構はどうも雑な感じなんですよ。我々と比較すると。それもやはり、腸内細菌の複雑さと関係している感じがする。下手に強い免疫を働かせてしまうと、善玉菌も全滅しちゃうものね。雑だから、なんか感染症に弱い。感染症をきちんと自力で治す、パワーが弱い。雑なくせして免疫異常を起こす、というのもヘンだが、事実だからしょうがない。

 だもんだから、雑な免疫を必要以上に弱らせると、もう、雑菌大繁殖、ということになっちゃうみたいなんですわ。

 ので、今回から、やってみたのは、跛行が出たら速攻でステロイドを投与する、但し、使うのはプレドニゾロン。これはミディアムクラスのステロイドだが、免疫調整には相当な力を発揮する。それを、もう、ほんの少量、しかも、連日ではなく、週に2回程度投与する。一回につき、いいとこ2ml/head。こんなの大型犬に使うのと同量ですよ。
 犬や猫の免疫疾患については、ステロイドはバンバン使う。そうしないと押さえられない。しかし、馬はこんなんで十分らしいのだ。

 この方法で、蹄葉炎に全くならず、効果が上がった。
 そもそも馬の体重500㎏というけど、その1/5位は、多分腸内容物でして、「体重」ではない。だから、単純に体重換算して投与量を決めるのは危険だ。海外で使われてる動物薬について調べてみると、馬については体重当たりの投与量がメチャクチャ少ない。体重換算すると犬の1/100 位になっている薬が大半。経口投与する薬の場合は、馬の消化管がやたら長くて、薬を吸収しきってしまうから、じゃないかと。

 まあ、そんな感じで突発跛行に対応するようにして、大分跛行が落ち着きやすくなってきた。なんかねえ、装蹄師とかが跛行についてあーでもないこーでもないとやってますけど、こういう全身疾患に起因する跛行なんて、「跛行」のみについて書かれている本にも毛筋も触れられてないわけよ。この件、誤診が多いんじゃないかね。ましてや、装蹄師なんぞに分かるわけがない。

 他にも、なんで裸蹄管理が難しいのか、そう管理するべきなのか、もほぼ分かったので、来年からは管理がし易くなって練習の成果も上がりやすくなるのではないかな。この件は、また、書きましょう。

 ということで、あー自分が獣医でよかった~~!!しかも、小動物臨床医でよかった~~~!!!という結論。馬の獣医なんか、ヤブばっか。こんな話、全く理解できないらしいんだもん。獣医同士なのに話が通じないってどういうこと?結局、馬の獣医は馬しか知らん。だから、「比較検討」ってのができない、から、ヤブになっちゃうんだろうな。
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大河ドラマ

2017年12月19日 | 
が終わっちゃって、つまらなくなった。今年の大河ドラマは大傑作じゃないかと思う。「平清盛」以来の面白さ!!

 で、今回はただ面白いだけじゃなくて、受け手に対する各テーマの投げかけが厳しかったなあと。首桶がホイホイ出てきて、磔ががっつり映されるし、実際にさらし首も出てくるし。。。。堀川城のジェノサイドもきっちり描いてて、もうこうまで見せられると「戦国時代のどこがいいんじゃ?」となる、わけで。その一方、お笑い・色、もうすごい詰め込み方だったし~。
 万千代君が「殿のご寵愛を頂いたぞ!」と宣言した時は大笑いでしたっけ。「殿は衆道は嗜まぬ筈!」にもたまげたし更に「それはおぬしらが不細工だからじゃね?」みたいな返しのセリフに大爆笑~。うわ~~、これ、女がしゃべってたら、かーなーりーえげつないわあ。そういう男女ひっくり返しパターンがメチャクチャ多くて。

 そして、人の描き方。群雄割拠なる言葉に騙されてましたけど、当り前だがその下に山ほど人がいる、その階級や仕事を網羅して、その人たちがきちんと名前付きで紹介され、どこかで重要な役割を果たし、死を悼まれる存在にまでなる。全員がとにかく魅力的。今までそんなドラマありましたっけ?
 有名人の描き方も秀逸。とにかく従来の解釈を全部塗り替えちゃったところがすごい。徳川家康は戦嫌いで、あまり目立つのが好きではない「可愛らしい」人物で、織田さんは人間関係ぶきっちょ、瀬名さんは悪女、じゃない、政次は奸臣と見せかけてた、と、いう解釈のひっくり返しが、全く荒唐無稽に見えない。これ、大変なことだ。
 その中でも特に凄いと思ったのが今川氏真。これは、尾上松也さんの名演のおかげで、凄い振幅のある人物になって、驚いてた。今川氏って、桶狭間で潰れた訳じゃないのか~~程度じゃ済みませんでしたね。最後はパリピの宴会部長だもんなあ~~~織田暗殺にも一役買ってるし。

 しかし、そういう名演を引き出しているのが、直虎役の柴咲さんで、なんだろう、受けの演技とも違う、なにかこう、常にまっすぐな感じがね。

 今まで大河ドラマの舞台巡り旅行なんかする人の気が知れないと思ってたんだけど。今年は初めて行ってしまった。



重要な場所になるご初代様の井戸。最終回、南溪和尚さんが井戸端に並べる盃の多さときたら・・・・・。南溪さんも本当にお気の毒な・・・。実際、自分の身内ほぼ全てが先に死んでしまったんですもんね。



龍潭寺の山門。



龍潭寺のお庭。ちゃんと解説が流れます。そうだなあ、実家の寺が真田家ゆかりの大輪寺だもんで、大きい寺が普通という感じがしてたんだけど、改めて見ると、維持管理が大変そう。。。。大輪寺はどうしてるのか?龍潭寺は拝観料を取ってましたけど。まあ、当然ですよね。



ここに来た観光客の皆さんがついつい撮ってしまう、「井伊谷」の交差点。この近くのコープで買ったミカンがメチャクチャうまかったんですよね。



「紀行」で紹介されてた遺跡なんだけど、なんと神社の境内の中にあるのだ。龍潭寺から歩いて行ける距離。ちなみに、龍潭寺の裏手にはこれまた立派な神社がある。南北朝の、南朝天皇が祀られてて、なるほど、この話を持ち出して検地を切り抜けたのかあ、と納得。あの回はイマイチよく分からなかったので。



で、浜松城。井伊谷から路線バスで1時間。しかし、あまり山越えてという風じゃなかったから、そんなに遠くはなかったんじゃないかな。徒歩で山道として8時間もかければ着いたんじゃないかな。馬ならもっと速い。3時間程度かなあ。馬といえば本多忠勝を演じた高橋政宏さん、馬乗るのお上手!馬乗りなもんで、ついついそういう所に目が行っちゃうんだ。

 旅行に行って変わった事。それまでは、「浜松城」なる言葉だけだったんだけど、旅行に行ってからは、割と具体的に距離感が分かるし、ビジュアルとして目に浮かぶ。井伊谷当たりにお住いの皆様には、まさに「ご近所物語」だったんだろうなあ。

 という訳で、今回も行った甲斐があって面白かったですね。全部は行ききれなかったので、また遊びに行きましょう。 
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青色申告説明会

2017年12月16日 | 仕事
へ。毎年行っているのだが、そういう人間は実は少ないらしい。来場者ほとんどが起業したばかりとかの、要するに初心者なんだそうな。知らなかった・・・・。

 なんで毎年行っているかというと、税制がちょこっとずつ変わったり、特例ができたり、その特例がなくなったり、という情報を得るため。特例は大概年度末で切り替える(できるにせよ、やめるにせよ)なので、その特例を利用するかどうか、または利用できる案件があるかどうか、3月末まで時間的な猶予があるから、対策しやすい。情報抜きではどうにもならんし。小規模事業者対象の「1台10万以上の物品も30万円以下なら一括償却できますよ~~」というのは延々続いているようなのだが、今回もまだ続きそう。この特例措置を使うかどうか、毎年悩むんだけど・・・・。

 今回ちょっとへえ~~と思ったのは、税務署の「アンケート兼出席票」なるものが配られた事。ちょこちょこ起業したり副業したりする人が増えて、確定申告する人が増えて、青色申告者も増えてきて、で、税務署は大変になる、のも、青色申告の仕方をみんな知らないから。ので、ちゃんとできる人が増えるように記帳指導しますから、それが必要なら回答してね、ご希望に沿えるかは分かりませんけど、ということらしい。なら、ということで、記帳指導してください、と一応書いておいた。どうなるかなあ?

 最近は会計ソフトというか、ウエブ上のアプリも増えてきてそれで記帳している人がどんどこ増えてると思う。だから、それを使った方法を広めちゃうほうがいいんでしょうけど、でもねえ、基本的には簿記が分かってないと結局使えないわけで。簿記を義務教育で教えるべきじゃないかとずっと思っているんだけどなあ。算数や数学にかける時間の1割くらいを簿記に振り分けるとかして。プログラミングも結構ですけどさ、簿記を学ばないと、カネのことが全く分からないで社会に出ることになる、今後はこれ、命にかかわる事態になるのでは?カネの使い方、散らし方を知らない人が多過ぎる、から、ビンボー人が増えるのだ。

 貧困記事を読むと、驚くほどパターンがそっくりなんですよね。人とのかかわりが下手っぴいで、いいようにこき使われて、カネをどぶに捨てて、貧困になると。人が信用できないなら、カネを味方につけるしかないのに。金の教育は命を守る手立てを教えることだ。「金の話は汚い」みたいなことを真顔でで言ってる奴は大馬鹿もんだよ。
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