色々あったような、なかったような・・・・・。馬については、ようやく上向きという所でしょうかね。
突発する跛行について、いったいどうやって対応するべきなのか、そもそもその病理実態は何なのか、でもって、治療をどうするべきなのか、把握するのに結局3年がかりになってしまったわけだが。
病態は要するに腺疫の後遺障害で、その実態は免疫異常。腺疫罹患馬の1%前後に発症するもので、予後不良、なーんてものの本には書いてある。免疫異常で予後不良なんて、ふざけんなよ~、小動物ではこの程度の免疫異常なんぞ今はごく普通に起こるもんだ、それで予後不良なんか、少なくとも当院では絶対にならん!!と思ってあれこれ調べたんだけど。分かったことは「馬の臨床はなーんも進歩がない」というしょうもない現実。結局体内での薬物動態すらまともに研究されていないんだから。
免疫異常で予後不良とはどういうことかというと、免疫疾患の第一選択は当然ながらステロイド、ところが馬にはステロイドは使えません、使っちゃイケマセン、使ったら即蹄葉炎を起こしてアウトです、とものの本には書いてある。確かに、ステロイドを体重換算して使ってみたら、蹄葉炎を起こしたらしくて、跛行が最悪状況になって、そこから復活するのにナント3か月以上かかった、のは事実。この時はもうダメかと思った。これが2年前くらいか。効果が上がると分かっている薬を使えない、という治療上のジレンマに陥っちゃったんですよね。
蹄葉炎を疑わせる酷い跛行を改善できたのが、実は漢方薬で、それ以来その漢方薬は手放せない薬になってしまった。ずうっと継続投与しないとだめそうな。
しかーし、残念ながら、漢方薬をずっと投与してればいいかというと、やっぱり跛行が起こる。しかも脈絡なく突発的に起こる。これをどう解決するべきなのか、考え続けてきた。
で、そもそも馬に使われているステロイドの種類、その投与量に問題があるのでは、という結論になったわけ。
動物用医薬品で馬が対象となっているステロイド薬はデキサメサゾン。これ、強すぎますよ。かつ、強いわりに効果が上がらない、のは小動物での臨床上の印象。人医では、ステロイドはウイーク~ストロンゲストまで5段階に分類されてる。強いほど投与には注意が必要なのだ。デキサは4のストロングに該当する薬で、自分の中では、かなり要注意薬。それを能書に書かれてる通りの量で投与したら、危険ではないか?そもそも、推奨投与量にはなにか根拠があるのか?ないんじゃないのか?
ところで、ステロイドを投与するとなぜ蹄葉炎?メカニズムが自分の中ではかなり整理されて分かってきたのだが。
馬、というか草食獣は、我々人間や犬猫のような雑食~肉食獣と比べると、物凄い種類・数の腸内細菌を消化管内に飼っている。それなしではあんなカサカサした草を消化しきるのは不可能。その中には善玉菌ばかりじゃなく、当然悪玉菌も山ほどいて、そのバランスが日々微妙に揺れ動いている、はずなんだ。それを消化管の免疫が仕切っている。ステロイドを投与すると、全身の免疫が抑制されちゃうから、腸の免疫力も低下する、その結果、悪玉菌がどっと増殖して血流に乗っかっちゃって、蹄に集中した結果、蹄内で炎症が起こって蹄葉炎、という事じゃないかな。
これは、濃厚飼料を多給した場合も同じで、その結果消化管内の細菌バランスが崩れて、同じ状況に陥るわけだ。濃厚飼料の何がまずいかというと、糖質。草食獣に糖質は禁忌と言ってもいい。
あと、草食獣の免疫機構はどうも雑な感じなんですよ。我々と比較すると。それもやはり、腸内細菌の複雑さと関係している感じがする。下手に強い免疫を働かせてしまうと、善玉菌も全滅しちゃうものね。雑だから、なんか感染症に弱い。感染症をきちんと自力で治す、パワーが弱い。雑なくせして免疫異常を起こす、というのもヘンだが、事実だからしょうがない。
だもんだから、雑な免疫を必要以上に弱らせると、もう、雑菌大繁殖、ということになっちゃうみたいなんですわ。
ので、今回から、やってみたのは、跛行が出たら速攻でステロイドを投与する、但し、使うのはプレドニゾロン。これはミディアムクラスのステロイドだが、免疫調整には相当な力を発揮する。それを、もう、ほんの少量、しかも、連日ではなく、週に2回程度投与する。一回につき、いいとこ2ml/head。こんなの大型犬に使うのと同量ですよ。
犬や猫の免疫疾患については、ステロイドはバンバン使う。そうしないと押さえられない。しかし、馬はこんなんで十分らしいのだ。
この方法で、蹄葉炎に全くならず、効果が上がった。
そもそも馬の体重500㎏というけど、その1/5位は、多分腸内容物でして、「体重」ではない。だから、単純に体重換算して投与量を決めるのは危険だ。海外で使われてる動物薬について調べてみると、馬については体重当たりの投与量がメチャクチャ少ない。体重換算すると犬の1/100 位になっている薬が大半。経口投与する薬の場合は、馬の消化管がやたら長くて、薬を吸収しきってしまうから、じゃないかと。
まあ、そんな感じで突発跛行に対応するようにして、大分跛行が落ち着きやすくなってきた。なんかねえ、装蹄師とかが跛行についてあーでもないこーでもないとやってますけど、こういう全身疾患に起因する跛行なんて、「跛行」のみについて書かれている本にも毛筋も触れられてないわけよ。この件、誤診が多いんじゃないかね。ましてや、装蹄師なんぞに分かるわけがない。
他にも、なんで裸蹄管理が難しいのか、そう管理するべきなのか、もほぼ分かったので、来年からは管理がし易くなって練習の成果も上がりやすくなるのではないかな。この件は、また、書きましょう。
ということで、あー自分が獣医でよかった~~!!しかも、小動物臨床医でよかった~~~!!!という結論。馬の獣医なんか、ヤブばっか。こんな話、全く理解できないらしいんだもん。獣医同士なのに話が通じないってどういうこと?結局、馬の獣医は馬しか知らん。だから、「比較検討」ってのができない、から、ヤブになっちゃうんだろうな。
突発する跛行について、いったいどうやって対応するべきなのか、そもそもその病理実態は何なのか、でもって、治療をどうするべきなのか、把握するのに結局3年がかりになってしまったわけだが。
病態は要するに腺疫の後遺障害で、その実態は免疫異常。腺疫罹患馬の1%前後に発症するもので、予後不良、なーんてものの本には書いてある。免疫異常で予後不良なんて、ふざけんなよ~、小動物ではこの程度の免疫異常なんぞ今はごく普通に起こるもんだ、それで予後不良なんか、少なくとも当院では絶対にならん!!と思ってあれこれ調べたんだけど。分かったことは「馬の臨床はなーんも進歩がない」というしょうもない現実。結局体内での薬物動態すらまともに研究されていないんだから。
免疫異常で予後不良とはどういうことかというと、免疫疾患の第一選択は当然ながらステロイド、ところが馬にはステロイドは使えません、使っちゃイケマセン、使ったら即蹄葉炎を起こしてアウトです、とものの本には書いてある。確かに、ステロイドを体重換算して使ってみたら、蹄葉炎を起こしたらしくて、跛行が最悪状況になって、そこから復活するのにナント3か月以上かかった、のは事実。この時はもうダメかと思った。これが2年前くらいか。効果が上がると分かっている薬を使えない、という治療上のジレンマに陥っちゃったんですよね。
蹄葉炎を疑わせる酷い跛行を改善できたのが、実は漢方薬で、それ以来その漢方薬は手放せない薬になってしまった。ずうっと継続投与しないとだめそうな。
しかーし、残念ながら、漢方薬をずっと投与してればいいかというと、やっぱり跛行が起こる。しかも脈絡なく突発的に起こる。これをどう解決するべきなのか、考え続けてきた。
で、そもそも馬に使われているステロイドの種類、その投与量に問題があるのでは、という結論になったわけ。
動物用医薬品で馬が対象となっているステロイド薬はデキサメサゾン。これ、強すぎますよ。かつ、強いわりに効果が上がらない、のは小動物での臨床上の印象。人医では、ステロイドはウイーク~ストロンゲストまで5段階に分類されてる。強いほど投与には注意が必要なのだ。デキサは4のストロングに該当する薬で、自分の中では、かなり要注意薬。それを能書に書かれてる通りの量で投与したら、危険ではないか?そもそも、推奨投与量にはなにか根拠があるのか?ないんじゃないのか?
ところで、ステロイドを投与するとなぜ蹄葉炎?メカニズムが自分の中ではかなり整理されて分かってきたのだが。
馬、というか草食獣は、我々人間や犬猫のような雑食~肉食獣と比べると、物凄い種類・数の腸内細菌を消化管内に飼っている。それなしではあんなカサカサした草を消化しきるのは不可能。その中には善玉菌ばかりじゃなく、当然悪玉菌も山ほどいて、そのバランスが日々微妙に揺れ動いている、はずなんだ。それを消化管の免疫が仕切っている。ステロイドを投与すると、全身の免疫が抑制されちゃうから、腸の免疫力も低下する、その結果、悪玉菌がどっと増殖して血流に乗っかっちゃって、蹄に集中した結果、蹄内で炎症が起こって蹄葉炎、という事じゃないかな。
これは、濃厚飼料を多給した場合も同じで、その結果消化管内の細菌バランスが崩れて、同じ状況に陥るわけだ。濃厚飼料の何がまずいかというと、糖質。草食獣に糖質は禁忌と言ってもいい。
あと、草食獣の免疫機構はどうも雑な感じなんですよ。我々と比較すると。それもやはり、腸内細菌の複雑さと関係している感じがする。下手に強い免疫を働かせてしまうと、善玉菌も全滅しちゃうものね。雑だから、なんか感染症に弱い。感染症をきちんと自力で治す、パワーが弱い。雑なくせして免疫異常を起こす、というのもヘンだが、事実だからしょうがない。
だもんだから、雑な免疫を必要以上に弱らせると、もう、雑菌大繁殖、ということになっちゃうみたいなんですわ。
ので、今回から、やってみたのは、跛行が出たら速攻でステロイドを投与する、但し、使うのはプレドニゾロン。これはミディアムクラスのステロイドだが、免疫調整には相当な力を発揮する。それを、もう、ほんの少量、しかも、連日ではなく、週に2回程度投与する。一回につき、いいとこ2ml/head。こんなの大型犬に使うのと同量ですよ。
犬や猫の免疫疾患については、ステロイドはバンバン使う。そうしないと押さえられない。しかし、馬はこんなんで十分らしいのだ。
この方法で、蹄葉炎に全くならず、効果が上がった。
そもそも馬の体重500㎏というけど、その1/5位は、多分腸内容物でして、「体重」ではない。だから、単純に体重換算して投与量を決めるのは危険だ。海外で使われてる動物薬について調べてみると、馬については体重当たりの投与量がメチャクチャ少ない。体重換算すると犬の1/100 位になっている薬が大半。経口投与する薬の場合は、馬の消化管がやたら長くて、薬を吸収しきってしまうから、じゃないかと。
まあ、そんな感じで突発跛行に対応するようにして、大分跛行が落ち着きやすくなってきた。なんかねえ、装蹄師とかが跛行についてあーでもないこーでもないとやってますけど、こういう全身疾患に起因する跛行なんて、「跛行」のみについて書かれている本にも毛筋も触れられてないわけよ。この件、誤診が多いんじゃないかね。ましてや、装蹄師なんぞに分かるわけがない。
他にも、なんで裸蹄管理が難しいのか、そう管理するべきなのか、もほぼ分かったので、来年からは管理がし易くなって練習の成果も上がりやすくなるのではないかな。この件は、また、書きましょう。
ということで、あー自分が獣医でよかった~~!!しかも、小動物臨床医でよかった~~~!!!という結論。馬の獣医なんか、ヤブばっか。こんな話、全く理解できないらしいんだもん。獣医同士なのに話が通じないってどういうこと?結局、馬の獣医は馬しか知らん。だから、「比較検討」ってのができない、から、ヤブになっちゃうんだろうな。