ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

命の燃料、酢が肝心=東京大学

2009年02月04日 | 遺伝子組替マウス
 極度の飢餓状態にある人や糖尿病患者にとって、酢がかなり重要なようだ。東京大先端科学技術研究センターの酒井寿郎教授(代謝学)らがマウスで明らかにした。3日付米科学誌セル・メタボリズム(電子版)に掲載される。

 体内では、代謝によってできるATP(アデノシン三リン酸)が、体を動かしたり体温を維持したりするエネルギー源となっている。ATPを生み出すには、瞬発系の運動ではブドウ糖を、持久系の運動だと脂肪酸やケトン体を主に使うことが知られている。

 チームはATPをつくる代謝経路に酢酸も関係していることに着目。遺伝子操作し、ブドウ糖や脂肪酸は代謝できるが酢酸は代謝できないマウスをつくった。このマウスと正常なマウスで、エサを与えた場合と48時間絶食させた場合を比較。酢酸を代謝できないマウスだけが、絶食状態のときに著しく体温と持久力が低くなることがわかった。

 酒井教授は「ブドウ糖の吸収、利用が極端に低い糖尿病患者に、血糖値を上げないエネルギー源として酢が役立つかもしれない」としている。(小林舞子)

[朝日新聞 2009年02月04日]
http://www.asahi.com/science/update/0203/TKY200902030390.html

横顔は生後8カ月でやっと認識 乳児発達で=中央大学、自然科学研究機構生理学研究所

2009年02月03日 | 心のしくみ
 生後8カ月の赤ちゃんは、人の横顔を顔として認識するが、生後5カ月では顔と分かっていない可能性が高いとする研究結果を中央大と自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の研究チームが3日、発表した。

 中央大研究開発機構の仲渡江美研究員(発達認知心理学)は「生後5カ月ぐらいでは、携帯電話に向いているお母さんの横顔がたぶん分からない。メールは寝かせてからにして、目を見て話をしてあげて」としている。

 実験では、生後5カ月と8カ月の乳児各10人に、脳の血流量を示すヘモグロビンの量を、頭の表面から測る装置を装着。さまざまな写真を見せた際に、顔を認識する機能がある右側頭部位の血流がどう変化するかを調べた。

 すると、野菜の写真を見せたときと比べて、母親以外の女性の正面を向いた顔の写真の場合、5カ月児、8カ月児の脳血流は平均して増えたが、同じ女性の横顔の写真では、血流が増えたのは8カ月児だけだった。

[共同通信47NEWS 2009年02月03日]
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009020301000628.html

ES細胞:がん化防止にコラーゲン活用…マウス実験で成功=ハーバード大学

2009年02月01日 | 再生医療
さまざまな組織や臓器になる万能細胞「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」で、実用化への課題だったがん化防止に、米ハーバード大研究員の八巻真理子・松本歯科大講師(幹細胞生物学)らがマウス実験で成功した。骨や皮膚に含まれるたんぱく質「コラーゲン」を使った。人工多能性幹細胞(iPS細胞)への適用も可能とみられ、再生医療実現に新たな道を開くと注目されそうだ。1日付の日本再生医療学会誌で発表する。

 ES細胞やiPS細胞は、分化する過程で「テラトーマ」という腫瘍(しゅよう)を作ることがある。このため、ES細胞やiPS細胞を特定の組織や臓器にして患者に移植する場合、がん化させない手法の開発が重要になっている。

 研究チームは、ES細胞から立体的な細胞や臓器を作るのに使われる牛のコラーゲン製の人工素材で実験を重ねた。素材は無数の小さな穴が開いたスポンジ状構造をしている。

 その結果、マウスのES細胞を増殖させた人工素材49個をマウスの腎臓に移植すると、約3カ月後までにがん化したのは2例だったが、ES細胞のみを移植した15例では100%がん化した。また、神経細胞になったES細胞で試しても、人工素材を使った場合は全くがん化しなかったが、使わないと6割以上でがんができた。高効率でがん化を抑えたのは初めてという。

 抑制できた仕組みは未解明だが、皮膚や骨に多い1型という種類のコラーゲンで効果を発揮した。八巻講師は「このタイプのコラーゲンがES細胞と結合する際に何らかの腫瘍化抑制機能が働くのではないか」と話す。【奥野敦史】

 ◇分化に向いた素材
 久保木芳徳・北海道大名誉教授(生化学)の話 細胞は種類に応じて分化と増殖に適した環境がある。「居心地のいい家」がないと腫瘍化などの異常が起きる。今回の人工素材は適切な分化に向いていたのだろう。腫瘍化対策の重要性は高まっており、画期的だ。

[毎日新聞 2009年02月01日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090201k0000m040093000c.html

妊娠中の親マウスに酸化チタンを注射、子の脳などに異常=東京理科大学、栃木臨床病理研究所

2009年02月01日 | 保留
 光触媒として使われる酸化チタンの微粒子を妊娠中のマウスに注射すると、生まれた子の脳や精巣に粒子が入り込み、細胞死や機能低下を引き起こすことが、東京理科大学の武田健教授と栃木臨床病理研究所の菅又昌雄所長らの研究で分かった。

 1日付の日本薬学会の専門誌に発表する。

 酸化チタンは光を当てると、汚れを分解する光触媒として、便器や浴室のタイルなどに使われる。日焼け止め化粧品にも含まれる。

 実験は直径40ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の酸化チタン粒子0・1ミリ・グラムを食塩水に混ぜて、妊娠中のマウスに4回皮下注射した。生後6週目の子どもを調べると、末梢(まっしょう)の血管が詰まり、大脳皮質や海馬で細胞死が確認された。精巣にも異常が見られ、精子を作る能力が2割以上低下していた。

 酸化チタンは世界保健機関が「発がん性の可能性がある」と指摘している。

 国立医薬品食品衛生研究所の菅野純・毒性部長は「吸い込んだ場合でも同じような毒性があるか、確認が必要」と話している。

[読売新聞 2009年02月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090201-OYT1T00207.htm

タミフルと風邪薬併用でネズミに異常行動=ワシントン大学

2009年02月01日 | 薬理
 インフルエンザ治療薬「タミフル」とカフェインなどの風邪薬成分を同時に飲むと異常行動が起きる可能性が高まることを、米ワシントン大学(ミズーリ州)の和泉幸俊(ゆきとし)教授(精神医学)らが明らかにした。ネズミを使った実験だが、和泉教授は「タミフル類と他の風邪薬の併用は避けたほうがいい」と呼びかける。論文は近く米国の専門誌に掲載される。

 和泉教授らは、タミフルをネズミに注射し、2時間後にカフェインとエフェドリンを追加注射した。その直後に行動の冷静さを調べる「Y字迷路」というテストをすると、ネズミは落ち着かず、同じ通路に何度も入り込み、行き当たりばったりに動いた。何も注射していないネズミと、タミフルだけを注射したネズミは正常な行動をした。

 タミフル後にカフェインとエフェドリンを注射した若い雄ネズミ12匹を観察すると、全匹とも体中にぐっしょり汗をかき、30分以上にわたって跳び上がったりそわそわしたりする過剰な活動をした。うち2匹は、仲間の上に乗るという異常行動を繰り返した。

 神経細胞の働きを直接調べる実験では、タミフルが体内で変化した状態の化合物にカフェインやエフェドリンをそれぞれ単独で加えた場合には異常はなかったが、双方を同時に組み合わせると神経伝達に異常応答があった。

 カフェインは眠気防止のため市販の風邪薬やドリンク剤の多くに入る。エフェドリンは生薬「麻黄」の主成分で、生薬系の風邪薬に入っている。気付かぬうちに併用してしまう落とし穴に陥る可能性がある。

 国立感染症研究所の岡部信彦感染症情報センター長は「大変興味深い。ただ、動物実験の結果はストレートに人間に結びつけられないので、人間での疫学調査も必要だろう。インフルエンザは、病気自体が異常行動を起こすことがある。薬を飲む、飲まないにかかわらず、看病する人は患者の様子を注意して見守ってほしい」と話している。(編集委員・中村通子)

[朝日新聞 2009年01月31日]
http://www.asahi.com/science/update/0131/OSK200901310104.html