ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

超多剤耐性結核:菌に効果の化合物開発=微生物化学研究会

2008年10月28日 | 創薬
 4種類以上の抗生物質が効かない超多剤耐性結核菌に効果のある化合物を、財団法人微生物化学研究会(東京都品川区)などが開発した。2012年の臨床試験開始を目指す。治療薬ができれば非営利で普及させるという。

 超多剤耐性結核は世界約50カ国で確認され、毎年5万人近くが発病しているとされる。有効な治療薬がなく、国内では02年、3122人の結核患者のうち17人から、この結核菌が検出されている。

 同研究会は抗結核薬「カプラザマイシン」から、より活性を高めた化合物「CPZEN-45」を作った。10種類の治療薬に耐性がある結核菌に感染させたマウスに投与したところ、何も与えなかったマウスに比べて、菌が100分の1に減少、副作用も確認できなかったという。

 同研究会の赤松穣・微生物化学研究センター長(生化学)は「より耐性菌が出にくいように、複数の治療薬を組み合わせる投与法も考えたい。非営利で取り組むことで、臨床試験に協力してくれる機関が出てくることを期待している」と話している。【関東晋慈】

[毎日新聞 2008年10月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081029k0000m040036000c.html

肝がん細胞を光らせ切除 再発防止へ新手法開発=大阪府立成人病センター

2008年10月28日 | 可視化技術
 肝臓がんの手術中にがん細胞だけを光らせることで残らず切除する手法を大阪府立成人病センター(大阪市)の研究チームが開発した。28日から名古屋市で開かれる日本癌学会で発表する。

 微小な肝がんを取り残すと約7割が5年以内に再発するとされ、センターは「手術後の再発防止につながりそうだ」としている。

 チームは、肝機能検査で使う試薬「インドシアニングリーン」が肝がん細胞に一定期間とどまるのを発見。光学機器メーカー「浜松ホトニクス」(浜松市)の小型赤外線カメラで患部を観察するとがん細胞だけが光って見え、従来は見つけることができなかった5ミリ以下のがん組織を手術中に見つけるのに成功した。

 昨年2月からセンターで肝がん手術を受けた患者39人にこの手法を適用。うち7人で手術前の検査で見つからなかった新たながんを発見、切除したという。

[共同通信47NEWS 2008年10月28日]
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008102801000329.html

がん細胞増殖の仕組み解明=愛知医科大学

2008年10月28日 | 癌、腫瘍
 がん細胞の増殖に重要な働きをするタンパク質を、愛知医科大の笠井謙次准教授らのグループが突き止めた。このタンパク質を制御する薬物が開発されれば、膵臓(すいぞう)がんのような難治性がんの治療も期待できるという。成果は米国がん専門誌に掲載、28日に名古屋市で始まった日本癌(がん)学会で29日に報告される。

 がん細胞内にあるタンパク質「GLI1」は単独で核内に入り込むと、がん細胞の増殖を活発化させる。正常時に、GLI1はタンパク質「SUFU」と結びつき、核内に入っても働きが抑えられている。SUFUとの分離が、がん細胞増殖の引き金となっていたが、その原因は不明だった。

 笠井准教授らは、がん細胞の増殖が始まると、タンパク質「SIL」が過剰に合成されることに気付いた。そしてSILはSUFUと結合し、GLI1を外す役割をしていることを突き止めた。SILを人為的に破壊すると、SUFUが再びGLI1と結合し、がん細胞の増殖は停止した。

 SILが合成される仕組みは不明だが、笠井准教授は「SILの発生を抑える薬物が開発されれば、将来的にがんを抑制できる」と話している。

◆非常に興味深い
 <高橋雅英・名古屋大大学院医学系研究科教授(腫瘍=しゅよう=病理学)の話> 難治性のがん細胞が増殖していくメカニズムを解明した非常に興味深い研究成果だ。薬物開発には、さまざまなステップをクリアする必要があるが、膵臓がんの新しい治療法開発に大きな可能性を持たせる。

[中日新聞Web 2008年10月28日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008102802000259.html

カフェイン:痛み緩和の効果見つかる=自然科学研究機構

2008年10月28日 | 脳、神経
 コーヒーの成分のカフェインにヒトの痛みを和らげる効果のあることが、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の久保義弘教授らの研究で分かった。カフェインを使った新しい鎮痛薬の開発につながる可能性がある。米国科学アカデミー紀要(電子版)で今週発表する。

 痛みを感じる代表的なヒトのタンパク質TRPA1に、カフェインを投与すると、通常よりも反応が鈍くなった。さらに、TRPA1に痛みを感じさせるマスタードを投与して刺激させた後、カフェインを投与すると反応が抑えられた。実験で使ったカフェイン濃度は水1リットル当たり2グラム。

 カフェインには覚せいや利尿などの作用があるが、久保教授によると「ずきずきする痛みなどを抑える新しい作用が分かった」という。ただ「実験では投与する濃度が高く、ほかの作用も効きすぎてしまうため、薬を開発するには課題も多い」とも説明している。

 一方、マウスのTRPA1に同様にカフェインを投与すると、活性化して痛みが増え、ヒトとは正反対の反応を示した。ヒトのTRPA1と構造の一部が違うためで、久保教授は「マウスを使った実験でも、カフェインが痛みに影響を与える新しい作用が分かった」と注目する。【中村宰和】

[毎日新聞 2008年10月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081028k0000e040058000c.html