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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

マウスの記憶の選択消去に成功、PTSDの治療に有効か=ジョージア医科大学

2008年10月23日 | 心のしくみ
【10月23日 ワシントンD.C./米国発 AFP】
米ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)はマウスを使った研究で、マウスの記憶を選択的に消去することに成功したと、23日発行の医学誌「セル・プレス(Cell Press)」に発表した。PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、記憶に起因する障害の治療に応用されることが期待される。

 記憶は通常、獲得・連結・保持・想起(再生)の4段階に分けられる。各段階で一定の役割を果たすとみられる「記憶分子」は、これまでの研究ですでに特定されている。

 今回、研究チームは、この記憶分子と呼ばれるタンパク質の一種、「CaMKII(カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII)」の活動を短時間で操る化学的な技術を開発した。CaMKIIは脳細胞間の伝達において重要な役割を果たし、学習・記憶におけるあらゆる局面に作用する。

 チームは、CaMKIIを大量生産するように遺伝子を組み換えたマウスで、短期的・長期的な恐怖の記憶や、新たな物体認識の記憶の再生を操作できるかどうか試験した。この結果、記憶が刺激されたときに、マウス脳内のCaMKIIを操作できることを確認した。さらに脳が刺激に関連する記憶を再生する能力を観察した。

 CaMKIIの操作によってチームは、刺激に関連する記憶の再生を遮断するだけではなく、その他の記憶再生能力にはまったく影響を与えずに、該当する記憶だけを消去する技術を発見した。

 研究を主導した同大のジョー・チェン(Joe Tsien)氏は、「記憶の選択消去はもはやサイエンスフィクションの世界だけのものではない」と語る。チェン氏は1999年に学習・記憶能力を強化した遺伝子操作マウス「ドギー(Doggie)」を開発したことでも知られる。

 同チームは、今回開発した新技術はまだごく初期の段階にあると強調するが、将来的には戦争帰還兵などのトラウマ的記憶や深層心理に根付いた恐怖を消去するなど、PTSDなどの治療に役立てられることが期待されている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年10月23日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2531231/3457955

白血病薬アレムツズマブ、多発性硬化症にも効果=ケンブリッジ大学

2008年10月23日 | 創薬
【10月23日 ロンドン/英国発 AFP】
 英ケンブリッジ大(University of Cambridge)の研究チームは23日、白血病治療用に開発された薬剤アレムツズマブが、多発性硬化症(MS)にも効果があるとの発見を報告した。多発性硬化症の進行を阻止するだけでなく、回復も促進するという。

 多発性硬化症は自己免疫疾患の一つと考えられており、白血球やリンパ球などの免疫系が中枢神経系の神経線維を攻撃してしまう結果、視力の低下や四肢のまひ、疲労といった身体障害のほか、抑うつや認知障害などを起こす。患者数は世界で数百万人とされ、英国では10万人、米国では40万人が発病している。

 試験では、アレムツズマブによって発症回数が減り、さらに障害を起こした機能が回復した。破壊された脳組織が修復されたためで、研究開始時よりも患者の健康障害が改善した。

 今回の研究を多方面で準備した同大臨床神経科学部の講師、アラスデア・コール(Alasdair Cole)博士は、「脳組織の修復を促進するMS治療薬の存在はかつてなかった。十分早期に使用されれば、MSの進行を停止すると同時に、組織修復により失われた機能も回復させる薬だ」と期待する。

 英国最大の患者支援団体、多発性硬化症協会(MS Society)の主任研究員リー・ダンスター(Lee Dunster)氏は、今回の試験結果に対し、市販薬として承認を受けるまでにはさらなる研究が必要だとしながらも「MS治療で病状の進行を止める可能性がある薬は初めて。(アレムツズマブは)さらに機能回復効果もあるという。毎日症状に苦しんでいる人たちにとって、この上ない朗報だ」と歓迎を表明した。(c)AFP/Alice Ritchie

[AFP BB News 2008年10月23日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2531500/3458248

たばこの煙、ぜんそく起こす仕組み解明=山梨大学

2008年10月23日 | 免疫
山梨大医学部グループ、学会誌に掲載 研究者「発症予防につながる」

 山梨大は22日、同大医学部の中尾篤人教授(45)の研究グループが、たばこの煙がぜんそくを引き起こすメカニズムを解明し、研究内容が米アレルギーぜんそく免疫学会誌電子版に掲載された、と発表した。喫煙がぜんそくの発症原因になることは確認されていたが、その仕組みはこれまで分かっていなかった。
 中尾教授の研究グループは、体内で免疫の働きを調節するタンパク質の1つで、アレルギー型の免疫反応を起こさせる「TSLP」に注目。マウスの鼻にたばこの抽出物を付けて喫煙状態にし、ぜんそくを引き起こす過程を調べることで、喫煙によって肺の中にTSLPがつくられることを証明した。
 さらに、たばこの煙だけではぜんそくは発症せず、ダニなどアレルギーの原因物質(アレルゲン)を喫煙時に吸い込むことが、発症条件になることも分かった。
 喫煙するとアレルゲンが体内に入りやすくなり、TSLPの作用とともにアレルギー型の免疫反応を引き起こす。たばこの煙成分が細胞の障壁機能を弱めている可能性があるという。

[山梨日日新聞WEB版 2008年10月23日]
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2008/10/23/5.html