シネマ見どころ

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「来る」 (2018日本映画)

2019年01月18日 | 映画の感想・批評


原作小説のタイトルから主題を取り去った「来る」。何が来るか。
作品自体にも化け物の名前が消えているので監督自身「化け物にフォーカスしないほうがいいのでは・・・」と思ったのかもわかりませんね。

話の大筋としては「山にいる凶悪な得体の知れない化け物が、愛されていない子供を呼び寄せ、その子供を使って、弱い心を持つ人間を襲いに来る」と言った所でしょうか?

単純な感想として画にインパクトのある映像が多いので面白いですが、怖がらせようとしているけれど、そこまで怖くない作品という印象の映画でした。
まず思ったのは、化け物云々では無く「人間の怖さ、不気味さ、小ささを見事に描いた中島ワールドになっていたと思う」作品でした。
必要の無いシーンにそこそこの尺を取り過ぎなのではないか、とも思いました。
逆に必要の無いシーンの尺を抑えて作品自体の尺を少し伸ばして化け物をCGで作りこんでみても面白かったのでは無いかな・・・とは個人的にも思います。
そうすれば、化け物のキャラクター販売なんかも出来たんじゃないかな。とも思います。
番宣である俳優が「新しいジャンルの開拓する場面に出会えました」と言っていた記憶がありますが、見終わった感想としては「どこら辺が新しいジャンルなんだろう?」と思ってしまうセリフでしたかね。あと映画のラストシーンで子役が「オムライスが食べたい」とかなんとか言ったんですがそこからオムライスの映像と歌が始まりました。あのシーンは意表を突く可愛らしさと監督の遊び心が垣間見えた瞬間でありましたね。

原作は澤村伊智のデビュー作で面白いです。中島哲也監督は人物の造形に力を注ぎ、人間の裏の顔の恐ろしさを強調しているので、原作の化け物ホラーの要素を期待すると「あれ?」と思う作品ではあります。これが例えば、黒沢清監督などの手によって映像化されていたら、どんな怖い映画になったかと夢想してしまう作品ではありました。

小松菜奈さん、柴田理恵さんの演技は素晴らしかったですね。
小松菜奈さんがあまり出てこない女優さんですが『上手い』と思いましたね。
2019~2020年辺りブレイクする女優さんかもしれませんね。
柴田理恵さんは出番こそ少ないですが抜群の存在感でした。
上映後にもしアンケートがあったとして「一番良かった、印象に残っていた俳優さんは?」
と聞かれたら、間違いない「柴田理恵さん」そう答えていると思います。
(chidu)

監督:中島哲也
脚本:中島哲也、岩井秀人、門間宣裕
原作:澤村伊智
撮影:岡村良憲
出演:岡田准一、黒木華、妻夫木聡、小松菜奈、青木崇高、柴田理恵、太賀、伊集院光、石田えり、松たか子