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「舞妓はレディ」(2014年日本)

2014年10月01日 | 映画の感想・批評


 秋も深まり、京都には国内はもとより海外からも多くの観光客が訪れる季節がやって来た。「Shall we ダンス?」よりも前から、20年来の企画を温めてきたという周防正行監督の新作は、京都の花街を舞台にした楽しいミュージカル風ドラマだ。
 歴史の古い花街・下八軒には、舞妓はたった一人しかいない。そのたった一人の舞妓・百春も三十路がすぐそこまでやってきているという危機的状況だ。そんな下八軒の老舗のお茶屋・万寿楽に舞妓志願の少女・春子がやってくる。ところがこの春子、津軽弁と鹿児島弁を混ぜこぜにして話し、何を言っているやらまるで通じない。たまたま居合わせた言語学を教える大学教授・京野のはからいで春子は万寿楽の仕込み(見習い)になれるが、彼女を待っていたのは舞踊・鼓・三味線の厳しい稽古、花街のしきたり、何よりも京野がじきじきに教える京言葉のレッスンだった。
 あれ、これってどこかで見たような…。下町のコックニー訛り丸出しのイライザと、彼女に英語の正しい発音を教え込もうとするヒギンズ教授が繰り広げるミュージカルの名作「マイ・フェア・レディ」である。そう思って見ていると、「マイ・フェア・レディ」の中の名曲「スペインの雨」ならぬ「京都の雨はたいがい盆地に降る」と歌い出すではないか。そう、これはまさに京都版「マイ・フェア・レディ」なのだ。だいたいタイトルからして「舞妓はレディ」と察しが付く。
 上流階級のヒギンズ教授が、正しく英語を発音できないイライザたちを見下しているのに比べ、京野教授は決して春子の方言を否定しないところに好感が持てる。むしろほほえましく思っているが、世界の観光都市・京都の舞妓はやっぱり京言葉でおもてなしと、レッスンがスタートする。
 一見さんお断りのお茶屋の様子がうかがえ、併せて京都観光もできる、肩が凝らずに楽しめるエンターテインメント映画だ。(久)

監督:周防正行
脚本:周防正行
撮影:寺田緑郎
出演:上白石萌音、長谷川博己、富司純子、田畑智子、草刈民代、渡辺えり、竹中直人、岸部一徳