シネマ見どころ

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「WOOD JOB! ウッジョブ!~神去なあなあ日常~」 (2014年 日本映画)

2014年05月11日 | 映画の感想・批評


 若者の成長物語を描いたなら、この人の右に出る者はいないだろう。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」で、高校生たちに目標を持って仲間たちとがんばることの意義と楽しさを教えてくれた矢口史靖(しのぶ)監督が、今回選んだテーマは、何と林業!!
 大学受験に失敗し、彼女にもフラれて行き場がなくなった主人公の勇気は、街でふと目にしたパンフレットの表紙を飾る美女に見惚れ、1年間の林業研修プロジェクトに参加する。ローカル線を乗り継いでたどり着いた『神去(かむさり)村』はケータイの電波も届かない超山奥。そこでの様々な体験と村人たちとの交流を通し、ノー天気な都会っ子だった勇気に少しずつ変化が…。
 勇気を演じるのは染谷将太。「ヒミズ」「悪の教典」などの屈折した青春像とはうって変わって、今回は少しとぼけたキャラクターを好演。過酷な研修で失敗を繰り返しながらも、たくましく成長していく姿に、思わず応援したくなってしまう。「がんばれ、勇気!!」パンフレットの美女・直紀に長澤まさみ。この役のためにオートバイの免許をとったそうで、その入れ込みようは相当なもの。すっぴんの地元の先生役は今までにない爽やかさだ。勇気の研修先・中村林業のエース、ヨキを演じた伊藤英明の頑張りにも目を引かれた。ちょっぴり気取った「海猿」より、こちらの方がぜったい似合っている。林業で生きる野性味あふれる青年をまさに“怪演”。
 神去村?!たしかに、そこに神様はいた!!それはクライマックスの「大山祇さんの祭り」を見ればわかる。褌姿の男たちが、先祖から受け継いだ千年桧を切り出し、山から麓へと降ろす神々しい祭り。全くCGを使わずに撮影されたというこの奇祭のシーンは、きっと映画史に残ることであろう。笑いと涙でぐしょぐしょになった後、この村を訪れたくなって思わず地図帳を取り出し、三重県のページを開いてみたら…。
 (HIRO)

監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
撮影:芦澤明子
原作:三浦しをん
出演:染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明、優香、西田尚美、柄本明、光石研、近藤芳正、マキタスポーツ