シネマ見どころ

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「ペコロスの母に会いに行く」 (2013年 日本映画)

2014年02月11日 | 映画の感想・批評


 2月に入り、2013年度の映画各賞が決まりだし、マスコミをにぎわせているが、あのアカデミー賞より1回回数が多いという「第87回キネマ旬報ベスト・テン」の日本映画NO.1に選ばれたのがこの作品。奇しくも同じ老人介護を扱った「愛、アムール」が外国映画のNO,1となったが、ますます高齢化社会となってきた我が国にとって避けては通れない問題だ。ちょっぴり悲惨ともいえる結末を迎える「愛、アムール」に対し、撮影時御年85歳の森崎東監督は、喜劇を得意としていただけあって、各所にユーモアいっぱいのエピソードを散りばめ、観客に終始笑みをもたらせながら、しっかり何度も泣かせてくれる。こちらのほうが救われるなあ。
 原作は長崎在住の漫画家、岡野雄一が自身の経験をもとに描いたエッセイ漫画で、現在も週刊朝日に連載中。ハゲちゃびんの小さな玉ねぎ(ペコロス)のゆういちが、毎日認知症になった母に会いに行くという何気ない日常とともに、二人の歩んできた歴史が語られていく。
 主人公のゆういちに長崎生まれで劇作家・演出家・監督など多岐にわたり活躍中の岩松了。母のみつえには本作で89歳にして映画初主演を務めた赤木春恵。この二人の掛け合いが本物の親子のようで何とも微笑ましい。ハゲ頭を見せて自分を息子だと確認させたり、「な~んもしぇん」「おこらんといて」と自分の失敗を必死に許してもらおうとするみつえに、自分と父母を重ね合わせられた方も多いことだろう。
 つい最近のことでもすぐに忘れてしまうのに、どういうわけか幼いころの思い出の中で、細かいところまでしっかり覚えていることがある。認知症とはそれがさらに増幅された症状なのだろうか。でも、それも悪くはないかもしれない。にぎわう長崎ランタンフェスティバルの最中に、みつえの心の中にいる大切な人たちがみんな集まってくるラストシーンは、幸福感いっぱいだ。
 今週から「キネマ旬報ベスト・テン特集上映」と名うって、この作品を含め受賞6作品の凱旋興行が始まった。見逃された方はぜひこの機会に“選ばれた劇場”へお出かけ下さい。
 (HIRO)

監督:森崎東(長崎出身)
原作:岡野雄一(長崎出身)
脚本:阿久根知昭
撮影:浜田毅
出演:岩松了(長崎出身)、赤木春恵、原田貴和子(長崎出身)、原田知世(長崎出身)、加瀬亮、
竹中直人、大和田健介、宇崎竜童