今日(4月5日)、沖縄県の埋立承認「撤回」に対して、沖縄防衛局長が「撤回」の取り消しを求めて国土交通大臣に行った行政不服審査請求の裁決があった。
予想どおり、国土交通大臣は、審査請求を認め、県の埋立承認「撤回」を取り消した。
裁決書が送られてきたので目を通したのだが、あまりのひどい内容に呆れるほかない。国は、国民の権利救済の制度である行政不服審査請求を行うことができないと指摘されてはいたが、そもそも、右手で出したものを左手で受け取るような、政府内部の「自作自演」で、公正な審理などできるはずはない。全くの茶番劇だ。
特に、軟弱地盤問題についてはひどいものだった。
この間の国会審議でも、海面下90mまでの軟弱地盤があるにもかかわらず、その地点で試料を採取して強度試験を行っていないこと、650万㎥にも及ぶ砂の供給の問題、ぎっしりと詰まった工程は可能か、ケーソンの仮置場となる海上作業ヤードの基礎地盤も軟弱地盤であることなどが問題となってきた。しかし、今回の裁決書は、こうした点については全く具体的に検証せず、ただ、「地盤改良工事を実施すれば、所要の安定性を確保して工事を行うことは可能である」と繰り返しているだけである。政府答弁のオウム返しにすぎないのだ。
特に裁決書には、政府がこの間、繰り返してきた「海面下70m以深は『非常に硬い』粘土で、地盤改良の必要はない」という主張が全く無くなってしまっていることが注目される。裁決書では、「未改良地盤が残されても、対策は可能である」と主張しているだけなのだ。
さらに、国土交通大臣の裁決を裏付けるものとして、日下部治東工大名誉教授の鑑定書を再三、引用している。この鑑定書も、「当該地での検討対象とされる土層は、深くかつ層厚が厚いため、SCP改良地盤下部に改良されない部分があるが、---対策も確立している」と、海面下70m以深が「非常に硬い」とは言っていない。
鑑定書そのものは、政府の主張を追認したものだが、それでも、「引き続き詳細検討が行われ、断面の修正、地盤調査・土質試験の追加の可能性も含め、『必要があれば前段階に溯って再検討を行う』ことが想定されている」と、追加の地盤調査・地質調査を行うよう指摘している点が注目される。まだまだ、データが不足しているのだ。
いずれにしろ、県はこの問題についても法廷闘争に入るだろう。しかしその間も、埋立工事は強行される。
昨年8月31日の埋立承認「撤回」は、残念ながら取り消されてしまった。それなら、ただちに再度の「撤回」に踏み切ろう。県民投票で示された圧倒的な県民の民意、埋立に使われている赤土混りの土砂の性状の問題---、新たな「撤回」理由はいくつもある。