杵家弥七、大阪進出

杵家弥七、大阪進出


さあ、念願の三味線譜ができた。
これを使えば、いままでよりはるかに効率よく稽古をすることができる。

ヨウは手書き、手作りの文化譜を風呂敷に包んで、
意気揚々と三味線屋や本屋を回った。

しかし、期待とは裏腹に、譜面は一向に売れない。
ちゃんとした印刷ではないので、信用されなかったのと、
「譜面で稽古なんかもってのほか」
という時代の抵抗があったのだろ。

ヨウはそれでもくじけずに夏の暑さの中、根気強く何件も回った。
しかし、相手にされない。

ついに32才のヨウは決心した。
「ひとまず東京をあきらめ、関西に懸けよう」
ヨウは、どっさりと譜面を背負い、大阪行きの列車に飛び乗った。

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tea break
photo by　和尚