西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

坂田兵四郎 その10

2010-09-14 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
兵四郎初舞台


ちょうどその頃、16、7才になった坂田兵四郎は
京都の芝居小屋で唄方としての初舞台を踏んだ。
島原の遊女が唄う、”ぬめり”という小歌で
傾城ものの出端(では・出の部分)などを唄わせると客がうなる。

ぬめり町という言葉があり、色里を意味する。
色里のはやり歌が”ぬめり”というわけだ。

結局兵四郎は、役者の道より唄方の道を選んだのだ。
従兄弟にあたる兵七郎も、あれ以来消息は途絶えたままで、
生きているのか死んでいるのかさえも分からない。
藤十郎の血を引くのは兵四郎だけだったのに、
今は他人の二代目藤十郎が、
初代の真似をすることだけに、きゅうきゅうとしている。

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tea breaku・海中百景
photo by  和尚