チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

新年初レッスン 総ざらえと新たな課題

2011年01月05日 23時07分40秒 | レッスン

新しい年初めてのレッスンに向かった。
足掛け4年お世話になっている先生に、オケ退団の報告と、新しい弓のお披露目もかねて。

久しぶりのレッスン室に入ると、先生は机に向かい、五線紙に鉛筆で何かを書いている。珍しい光景だ。
覗き込むと、C-Dur、D-Dur、B-Durのスケールと運指が書き込まれてゆく。

「おっ新しい課題か!こいつは春から縁起がいい!」と期待が膨らんだ


しかし僕の楽器をいつものように調整したあと始まったのは・・
やっぱり、G線のダウンボーイングの基本からだった

弓をG線上に止め、ダウン。引き終えたら一旦弓を止めてアップボーイング。
相変わらずままならない。
「結局今日もこのままか」と思っていたら、先生はこの3年間の総復習をしてくれた。

まず右手でいうと
 ・弓の持ち方
 ・ダウンとアップの指と手首の動かし方
 ・アップとダウンの間に隙間をつくらないこと
 ・何よりも「脱力」

左手でいうと
 ・ネックの構え方(人差し指一本でぶら下がる感覚)
 ・その指を動かさず、腕を揺らすのがビブラートであること
 ・弦は押さえるのではなく、指先を滑らせて自然に止まる感覚に
 ・手は脱力して、指先が指板に重みで落ちる感覚で押さえる
 などなど基本中の基本を総ざらえしていただいた。

さらに 今日は新しいことも沢山盛り込まれていった

その1 小指での弦の押さえ方(無理に押さえるのではなく、自然に押さえる方法)
    (1,2,3と押さえたあと4の小指は弦に届かない。それをどうすることで弾けるのか)

その2 第1ポジションから第4以上に移動するときは腕が先行すること
    (腕が指に先行して、目的のポジションに移動していないと間に合わないということ)

その3 いわゆる「拡張形」の正しい方法
    (書籍やブログでは知っていたが目の前で「やって見せ、させてみる」のは初めてだった)

その4 これら3点の総合練習としての、スケールの練習
    (実は部屋に入ったとき先生が作っていた楽譜は、この練習のためのものだった)

その楽譜がこれだ

これは一部だけど、見て驚いたのはスケールが第4ポジションより上のハイトーンまで伸びていること。
「オーケストラでは色んな音を出さないといけないですからね」とおっしゃる先生の親心を感じた。
先生の本心は「プロでも弾きこなせない曲で無理するより、先に基本をマスターしたほうがいいのに」
だと思うけど・・・
僕としてはこれから、先生の作ってくれたスケールを、オケの練習の合間、プロレッスンの予習として
必ず励行してゆこうと思う。

最後に、プロ活動中に「奏法」を変革していった先生のエピソードを書いておこう。

先生は、日本でトップのオーケストラで長年演奏されてきたけど、実は演奏スタイルをプロ活動中に大きく変更された経験があったという。

変更の最大のポイントは、弓の持ち方のようだ。
以前は親指と人差し指を中心にして小指を添える「3点支持」法をとっていた。
しかしこの奏法だと弦の反発が強くなり、楽器を鳴らすには大きな力が必要だった。
小柄な先生としては十分音が出なかったという。
同時に、駒近くの弦を使いきれなかったそうだ。

そこでプロ活動をしながら、「3点支持」を中指と親指の「2点支持」に変えていった。
このことは想像するだけでも大変なリスクと苦労を伴うことだと思う。
プロの投手が、シーズン中に投球フォームを変更することを考えると想像がつく。
苦労をめったに口にしない先生が「大変だった」とおっしゃっていた。

先生は、右手は腕、肩ともに力を抜き、中指と親指で弓を支え、他の指は添える程度にする。
左手も腕から指に掛けては極力脱力して、必要最小限の力で弦が支えられている状態で演奏しているそうだ。
こうした状態のときこそ、最も豊かな深い音を自在に出すことができることを、身をもって証明されている。
またこの演奏スタイルは、力の弱い人、高齢者にとっては大変ありがたい奏法だし、美しい音を出せる演奏方法だと思う。
自分はこの先生に学べて大変運がよかったと感じている。

長年掛けて培った奏法を、プロ活動の最中に変革したお話に、プロの探求心、努力のすごさを感じさせたいただいたと思う。

コメント (2)
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