チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

「ドイツ音楽を学ぶ夕べ」のような、客演指揮者の総練

2014年05月19日 16時38分37秒 | 市原フィル

10月定期演奏会の客演指揮者・中島章博さんによるブラームス交響曲第2番の初合わせがあった。
「ドイツ音楽、ブラームスのエッセンス、音の形、調性感とかかなり積み込みましたね。」
とご本人が最後にまとめられたように、大変示唆に富んだ有意義な初練習だった。

でも一度聞いただけでは忘れてしまうので、きちんと復習しなければと、録音のディクテーションをしてみた。
以下なるべく中島さんのアドバイス、指示を書き留めてみよう。

●リピートについて

「まずは音を聞きながら、初めて通させてもらうので、やりたいテンポでやります。離脱しても結構ですが、特に4楽章は危ないですが。
 今回は1楽章は繰り返しなしてやりましょう。私はリピートにはこだわらないので、本番はどちらでもかまいません。」

●ピッチカート

1楽章終わったところでいったん止めて・・
「一番気を付けてほしい点は、弦でいうとピッチカートです。ピチカートはオーケストラの持病みたいなもので、必ず走る。
ピッチカートの表と裏が重なってしまったのもそれが原因。ただすごくいい音してますね(一同笑い)。
あとはバランス、節度を持って行けばよくなる」

●フレージング

「1楽章は4分の3と書いてあるが、管楽器の方1小節ごとにスラーが掛かっていると思いますが、フレージングとしては4小節のフレーズがある。
ドイツ音楽は音があるべき場所にしっかりあるというのは基本ですが、同時に音楽はどこに向かっているかを感じるとすごく良くなると思う。
たとえば冒頭に4小節のフレーズ(起承転結)があるけど、それを受けたあとの木管は4小節を起承転結とすると「転」の部分ですね(と転を強調して歌う)
ブラームスはリズムの重さ感覚がひっくり返ったりするところが沢山出てきますが、そういうところはブラームスが引っかけているんだということを分かって
”これは”というところがあるともっとよくなり、面白いと思います。」

●カウントの仕方

2楽章を終わったところで・・・
「2楽章の面白いところは、初めに16分音符軍団が出てくる、途中8分の12で3つに分割する軍団が出てきて、
最後に4つ軍団と3つ軍団がせめぎ合うところが面白いのです。気を付けないと付点8分や16分は必ず3連符になります。
そうするとこの曲の持つ面白さは半減しますから、必ず16分音符で数えてください。遅い楽章ほど細かくカウントしましょう!」


●ブラームスと調性について

4楽章終わって・・・
「ブラームスは気難しいと感じるかもしれませんが、大人に対して自分の意見言えなくて、本当は心の中はピュアで、子供が好きで自然が好き。
Gdurというのはベートーベンの第9の調で、歓喜の部分をフィーチャーしている。ブラームスらしさにはドイツ音楽の重たさがあるんですが、
重たいものを感じるときは、相対関係として、軽かったり、進んでゆくものがあるから重たさを感じるわけです。
一番良い演奏は自然であることだと思うんですが、自然はなぜ綺麗だなと思うかというと、シンメトリーっぽくてシンメトリーではなかったり、
コントラストがあるところが面白いと思います。音楽もコントラストがあるから面白い。
人間は欲しいものがあると、ピュアであるほど手を伸ばして、欲しいものに向かって行きたくなる、行きたくなるんだけど、
ちゃんとスーッと息を吐く重たさが必要です。そういった人間の感情と一致した形で入ってゆくといい演奏になると思うんです。
4楽章になると、始めに生き生きとした部分、spiritoと書いてあるけど、重さも軽さも感じられればいいなと思っています。」
(恐らく緩急のことなんだろうな~)

 

休憩後は第1楽章に集中し、下記のやり取りがあった。

 

●冒頭のチェロ、バス

「嫌な出だしだけど、怖がらず、2小節目につなげて柔らかく、拾ってあげるように弾くこと。
ダウンで開始するのは私も好きだけど、弓の根元ではなく、中間より上で弾くこと。弓を返す時はアクセントがつかないようにすること。」
「息を凝らさず、硬いものに乗っかって弾いているのではなく、息を吐きながら弾く。」
「怖いフレーズだけど、怖い時ほど弓を使うこと。」
「32小節目の3泊目Fはすごく大事。」

●3拍子

「3拍子は難しい。3は三位一体で完全を表す。ちなみに4拍子のCはABCのCではなく、完全ではない欠けていることを表している」
「チェロ3拍目から出るところ、重さがある。3拍子は1・2・3で1に重さを感じて」
「(低弦のピチカート2拍目が大きすぎを受けて)、2泊目を弱くすると、柔らかさや寂しさのような感じが出ます」

●sf(スフォルツァンド)

「ブラームスは、ドイツものは全てそうですが、スフォルツァンドは全てエスプレッシーボだと思って下さい。例外はありません。きつくなりすぎないように。」

●cant.(カンタービレ)

「82小節のCant.は歌ですね。歌の形式には、1+1+2というのが良くあります。1+1のあとは長いんです。
ここの部分は、ちょっとブラームスの子守歌に似ていますね。(4小節で)そういうのを感じながら演奏しましょう。」

●スタッカート

「スタッカートは「切ること」と思っている人はいますか?」
(あえて尋ねられれば、違うんだろうなと思いつつ手を挙げると・・・)
「20世紀の音楽が出てくるまでは、それは忘れてください。短いというのは20世紀の感覚です。
基本的には大昔の話ですが、昔の弓は均一に弾くのは難しかった。
バロックまではスタッカートは必ず2つ付いていた。この意味は減衰しないで弾いてくださいという意味です。

そこから転じて音と音の間を離すことがスタッカートの意味です。ということはセパレートという意味です。
ドイツ音楽らしさを出すには、大体音価半分にしてテヌートで弾くと、いつも皆さんが聞いているCDみたいになるはずです(笑い)、
どうしても日本人は三味線みたいにペンペンとはじいてしまう。
ちなみにモーツアルトはセパレートというより均一の意味が強くなってくるんですが、ベートーベンは必ずそうです。」
(ここらあたり、いずれ取り組む「コリオラン序曲」「ハフナー」の前ふりもあってのことだと感じた)

●メゾ・スタッカートの意味

84小節のメゾ・スタッカートについての質問に答えて・・・
「もともとは一弓でウワン、ウワンとやっていたんですが、音と音の間を空けてワンフレーズで弾く、少し音は離れるけどフレーズはくっついている奏法です」
(スラースタッカートってメゾスタッカートとも言うのね(^^;)

●fとff

「フォルテ1個とフォルテ2個はブラームスはきちんと使い分けています。」

●poco f espr.の意味

「136小節から始まり繰り返される旋律は、最後の付点2分音符とタイでつながった4分音符は伸ばし過ぎかもしれない。
 少し呼吸を感じてみてください。それがpoco f espr.の意味です。」

●piu f の意味

「ベートーベンだとかなり確率が高く9割5分くらいで、ブラームスで8割、ワーグナー7~8割はですが、
ピウフォルテはフォルテとフォルテシモの間に挟まれて使われる確率が高いです。
ピウフォルテが出てきたら、そこから強くする意味はありますが、それよりはffに向けて、どんどん力強く向かってくださいという、矢印が見える役割があります。
ベートーベンはすごくわかり易く、大体どの曲もfとffの間に使われていて、クレッシェンドに近いかも知れませんが、感情の変化を力強く引き出して
ffに音楽を向かわせてくれという意味です。これはドイツ音楽ではほとんど例外はありませんので、覚えておくといいかもしれません。」

●4分音符の奏法

「ドイツ人はドイツ語で考えています。」
(へ~そうなんだ!)」
「全部の言葉に間があるんです。」
(イッヒ・リーベ・ディッヒと隣のお嬢様がつぶやく)
「そうです。ちょっとだけ音と音の間に隙間がある。これが何も書いてないときの4分音符です。」
(ベタ弾きではないんですね?の問いに)
「私はよく言うのですが、羊羹や蒲鉾に切れ目が入っているような感じです。その蒲鉾を半分食べたのがスタッカートです。
だからはねる音というのはなかなか(ドイツ音楽には)ないんです」(わかり易い!)

 

以上、ドイツ音楽講座のような、高校の授業に戻ったような、和気あいあいとした楽しい時間だった。
ブラームス楽しみになってきた。でも今週末は、モーツアルトとベートーベンなので、頑張らないと。

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ブラームス2番の難所、やや解明!

2014年05月11日 23時46分15秒 | 市原フィル

ケガで参加できなかったオケに久しぶりに参加することができた。

チェロのための用意されたみたいな「ブラームス交響曲第2番」を
下ぶりの松川智哉さんが、実に丁寧にわかり易く指導していただき、
特に2楽章の難所の糸口が見つかった!

 

参加前夜、何度も歌ってみたりしながら繰り返しさらってはいたのだけど、練習番号Ⅽがどうしても弾けなかった。
変拍子とシンコペーションに惑わされて、何回やっても合っている気がしない。
一応音だけはさらっておいたのだが、心もとないまま練習に参加した。

案の定この部分は、松川さんも見逃さず、Vc,Vnとパートに分けながら、何回も練習させてもらった。
松川さんは「この第2楽章の難しさは何だと思いますか?」とみんなに訊いた。
「変拍子で、4分の4と8分の12が入り混じるところかな・・・」
と思っていたら
「この遅いテンポを維持することです」が答えだった。 

なるほど、一応さらってきて、個人で弾けるようになったあとは、adagioを一定に維持し
観客に納得のゆく演奏として届けるのは、至難の曲ということか。 

今日の松川さんは「ころばないで」と何回も注意を促していた。
ちょっと気になったので、どういう意味かを聞いてみた。
すると・・・
「転ばないで、というときは、主にスタッカートなどの連続するときに使います」
「滑らないで、はスラーでの演奏のときに言います。特に弦の場合左手を滑らせてしまうので」
「走るというのは、全体の問題で、滑る、転ぶは左手と右手のアンバランスが原因ですね」
とこれまたわかり易く解説してくれた。

僕の場合「エアらないで!」と言われそうだけど、それはあまりにも初歩的で・・・

 
さて、自宅に戻って難所の部分をもう一度演奏してみると・・・

なんと弾けるようになっていることが判明!アップ、ダウンの記号がガイドしてくれた。

このアップやダウンの記号は、Vnのみなさんが譜面に書き込んでいたボーイングを横目で見、
コンミスの弓の動きを見ることで、書き込むことができたのだった。

やはり分からない部分というのは、僕のような初心者には、どこでどのように切ったり、
弓を返したりしたらいいのかが分からない ということとイコールなのだと思う。
だから隣のVn嬢の譜面や、コンミスのボーイングなどを見ることで、初めて合わせられるようになたのだと思う。

それにしても、コンミスや先輩諸氏はいつ、どうやって、こんな難しいところをマスターしてくるのか全く驚異に感じる。
トレースすることすら難しいこんな曲を書く作曲家とは、いったい何者?・・・と改めて思ってしまう。

でもブラームスはやっぱり楽しい! 

 

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ブラ2の練習を開始、でもイタリア語が分からない!

2014年05月08日 16時20分33秒 | 市原フィル

すっかりご無沙汰なのは、ブログだけではなく、チェロも最近ご無沙汰。

というのもバイクでこけて、エンジンの下に右足が入り込み
手痛い打撲捻挫で椅子に腰かけていられないので、
チェロも、所属オケのアンサンブルコンサートも会社もお休みだった。

秋の定期演奏会は、最も好きな曲の一つ、ブラームスの交響曲第2番。
そろそろチェロを構えて練習めいたこともできるので、前プログラムの
ベートーベン「コリオラン序曲」やモーツアルトの交響曲35番は放っておいて
まるでチェロ弾きのために作曲されたようなブラームスに取り掛かった。

ところがである。見慣れてきたはずの楽譜なんだけど、知らない言葉が
随所に出現する。

最初に気になったのは2楽章で、4分の4拍子から8分の12拍子に変わった
ところに大きく書いてある 「L'istesso tempo」。CD聞いていて同じテンポでと
いう意味だとは分かるものの、正確には分からない。

そうすると楽譜のあちこちに、自分では訳せない言葉が出てきた。
以前ブルックナーのときにはドイツ語が分からなかったの随分調べたけど
ドイツ人のブラームスは全てイタリア語で注釈を書いているのだけど
それが結構たくさんあり、これらの指示を読み解かないと演奏にならないと
思って、一から調べ始めた。

それが下記の通り

1楽章

[non troppo]ノン・トロッポ   はなはだしくなく あまり~すぎないで

[dolce] [dol.]ドルチェ    柔らかに.甘く.やさしく

[cant.]カンタービレ     歌うように 表情をこめて(=cantabile)

[quasi]クワージ      ~のように. おおよそ

[riten.]リテヌート     直ちに遅くする(=ritenuto)

[ben marcato]ベン・マルカート    十分にアクセントをつけて

[poco forte]ポーコ・フォルテ    少し強く=[pf](特にブラームスが使う)

[espr.] エスプレッシーボ    表情を豊かに感情をこめて(=espressivo)

[cresc.]クレッシェンド    だんだん強く(=crescendo,cres.)

[sempre]センプレ    常に. 引き続いて

[perdendosi]ペルデンドージ    だんだん遅くしながらだんだん弱く.消えるように(rit+dim.)

[molto]モルト    非常に. きわめて多くの=[assai]

[ma]マ    しかし

[piu]ピュー    もっと. 今までより多く

[tranquillo]トランクイッロ    穏やかな. 心安らかな

[stringendo]ストゥリンジェンド       次第に早く

2楽章

[stesso]ステッソ    同じ. 同一の

[ L'istesso tempo]    前の部分とテンポを変えないで、1拍の長さを同じにする

[grazioso]グラツィオーゾ    優雅な. 優美に 華やかな

3楽章 

[assai]アッサイ    非常に.十分に(=molto)

[leggiero]レッジェーロ    軽快に. 軽く優美に(ノン+レガートで)

[poco a poco]ポーコ・ア・ポーコ    少しずつ. だんだんに

[sostenuto]ソステヌート    各音符の長さを十分に保って. テンポを少しおさえ気味に

4楽章

[con spirito]コン・スピーリト    元気に.活気をつけて

[spirito]スピーリト    精神.心

[sotto]ソット    下に. より少なく

[sotto voce]ソット・ヴォーチェ    声や音をひそめて

[largamente]ラルガメンテ    大きく. ゆったりと. たっぷりと

[unis.]ウニーソノ      同音. ユニゾン. 複数の声部が同じ旋律を演奏すること(=unisono)

[legg.]レッジェーロ    軽快に. 軽く優美に(ノン+レガートで)(=leggiero)

 

調べて気付いたのは、これまで案外不正確に誤訳していたということ。

さてさて調べもできたので、いよいよ演奏の練習にかかろうっと。 

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