プロのチェリストの先生は「しばらくオケに入らない方がいいよ」と言った。つまり無理やり弾こうとするから、ボウイングが自己流になり、美しい豊かな音色が出せなくなるよ、とおっしゃっているのだと思う。すこし迷ったが、やはりオーケストラの響きの中にいたい気持ちが勝って、自分で決めて参加することにした。
雨の日曜日、チェロを抱えて会場となっている体育館に向かう。まだ二回目だけど、練習会場の事前セッティングから参加でき、少し団員気分に。オーケストラには準備するものが多い。通常のテーブルや椅子の片付けから始まって、大物楽器のセッティングは全員で協力しないと始まらない。ティンパニー、大太鼓、ベースや指揮者の背の高い椅子、式台、全員の譜面台・・・なんやかやで30分近くかかって会場が整い、ようやく思い思いの音出しが始まる。
チェロの先輩に「まだ当分参加しないほうがいいでしょうか」と訊くと「いや、やりながらじゃないと上達しないでしょう。譜面を完璧に弾ける人はほとんどいないんですから、弾けるところから参加したらいいですよ」と、腰が引けた自分を励ましてくれた。
練習開始前から、赤ちゃんを抱いた若い母親が、会場を見守っていた。実はその人が完璧にチェロを弾ける人の一人だった。出産と、夫の転勤が重なり、オケを退団するための挨拶にこられていた。ご主人も管楽器奏者で、同時に二人抜けるのはオケにとっては痛いことだけど、それ以上にお二人の挨拶から市民オケの素晴らしさに気づかされることがあった。
お二人はそれぞれに、参加した2年間のオーケストラ活動の素晴らしさ、慣れない千葉県で暖かい交流が出来たことの幸せ、秋のコンサートには遠く離れてしまうために参加できないことの残念さを語っていた。
サラリーマンに転勤はつきもの。その転勤先で夫婦がともに地域に溶け込み、楽しい時間を過ごせる場として市民オケは最高だと思う。サンデードライブや、食べ歩きも楽しいが、ともすると夫だけが夜の付き合いや、ゴルフにでかけてしまい妻にとっては寂しい場合が多い。
転勤されるお二人は、きっと新しい任地で再び地域のオーケストラに参加することだろうと思う。「あー、僕ももっと早くに楽器を復活させておけばよかったなー」と少し後悔も混じった気分。
さて、練習が始まると、指揮者から当然ながら頻繁にストップがかかる。演奏会が視野に入ってきているからというより、やはり練習不足で、前回と同じミスが続くとさすがに先生もイライラが出てくるのだと思う。「だめだよ、こんなところ練習しておかないと」「その音半音違うよ」「ただ弾いてたってお客さん喜ばないよ」・・・今日はなんだか厳しい叱咤激励が続く。
その矛先は当然チェロにも向けられる。「チェロ、○○小節から、さん、ハイ!」とチェロだけで弾くことも多くなる。残念ながら、そういう場所に限って速い指使い、難しい展開に決まっている。僕は全く歯が立たない。ただひたすら、皆が弾くのを見て、聴いて「次こそやってやる」と控えているだけ。全員の視線が集まるようで、かなり恥ずかしく緊張もする。
ともあれ、3時間の練習はあっという間に終わった。中には初心者の自分でも初見で6割方追随できる曲もあり、楽しい時間を過ごすことができた。
先生に叱られる、指摘され直されるのは、なんだかとても、懐かしく、嬉しい体験だった。今度こそ、チェロだけで弾く時には少しは参加できるようにしたいと思う。
雨の日曜日、チェロを抱えて会場となっている体育館に向かう。まだ二回目だけど、練習会場の事前セッティングから参加でき、少し団員気分に。オーケストラには準備するものが多い。通常のテーブルや椅子の片付けから始まって、大物楽器のセッティングは全員で協力しないと始まらない。ティンパニー、大太鼓、ベースや指揮者の背の高い椅子、式台、全員の譜面台・・・なんやかやで30分近くかかって会場が整い、ようやく思い思いの音出しが始まる。
チェロの先輩に「まだ当分参加しないほうがいいでしょうか」と訊くと「いや、やりながらじゃないと上達しないでしょう。譜面を完璧に弾ける人はほとんどいないんですから、弾けるところから参加したらいいですよ」と、腰が引けた自分を励ましてくれた。
練習開始前から、赤ちゃんを抱いた若い母親が、会場を見守っていた。実はその人が完璧にチェロを弾ける人の一人だった。出産と、夫の転勤が重なり、オケを退団するための挨拶にこられていた。ご主人も管楽器奏者で、同時に二人抜けるのはオケにとっては痛いことだけど、それ以上にお二人の挨拶から市民オケの素晴らしさに気づかされることがあった。
お二人はそれぞれに、参加した2年間のオーケストラ活動の素晴らしさ、慣れない千葉県で暖かい交流が出来たことの幸せ、秋のコンサートには遠く離れてしまうために参加できないことの残念さを語っていた。
サラリーマンに転勤はつきもの。その転勤先で夫婦がともに地域に溶け込み、楽しい時間を過ごせる場として市民オケは最高だと思う。サンデードライブや、食べ歩きも楽しいが、ともすると夫だけが夜の付き合いや、ゴルフにでかけてしまい妻にとっては寂しい場合が多い。
転勤されるお二人は、きっと新しい任地で再び地域のオーケストラに参加することだろうと思う。「あー、僕ももっと早くに楽器を復活させておけばよかったなー」と少し後悔も混じった気分。
さて、練習が始まると、指揮者から当然ながら頻繁にストップがかかる。演奏会が視野に入ってきているからというより、やはり練習不足で、前回と同じミスが続くとさすがに先生もイライラが出てくるのだと思う。「だめだよ、こんなところ練習しておかないと」「その音半音違うよ」「ただ弾いてたってお客さん喜ばないよ」・・・今日はなんだか厳しい叱咤激励が続く。
その矛先は当然チェロにも向けられる。「チェロ、○○小節から、さん、ハイ!」とチェロだけで弾くことも多くなる。残念ながら、そういう場所に限って速い指使い、難しい展開に決まっている。僕は全く歯が立たない。ただひたすら、皆が弾くのを見て、聴いて「次こそやってやる」と控えているだけ。全員の視線が集まるようで、かなり恥ずかしく緊張もする。
ともあれ、3時間の練習はあっという間に終わった。中には初心者の自分でも初見で6割方追随できる曲もあり、楽しい時間を過ごすことができた。
先生に叱られる、指摘され直されるのは、なんだかとても、懐かしく、嬉しい体験だった。今度こそ、チェロだけで弾く時には少しは参加できるようにしたいと思う。