チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

「オケ老人!」が楽しい

2011年01月22日 22時42分55秒 | その他雑感

「オケ老人!」 (小学館文庫 荒木 源  著) を読んだ。

題名からして、ちょっと遊びが感じられて面白そう。
もう読まれている人も多いと思うけど、市民オケに入っている人は、読むと楽しいはず。

 

あらすじは・・・

主人公がたまたま立ち寄った市民オケの演奏会に感動して、入団希望の連絡をすると
オーディションもなく「即入団OK!」となった。
こりゃ嬉しいと、10年触ってなかったバイオリンを取り出し、リビングに防音室まで購入して
合同練習に駆けつけてみると、そこはまるで老人ホーム。「世界最高齢」のアマオケだった。

どこで勘違いしたのか、同じ街に紛らわしい名前のオケが二つ存在していて、入団したのは
「ボケ老人(失礼)」ばかりのガタガタの楽団だった。
このオケときたら、補聴器、呼吸器、認知症のメンバーが溢れ、合奏が成立しない。
ホルンなど不可欠のパートには穴があき、無論演奏会を開いた経験もなかったのだ。
30代とはいえ最年少の主人公は、ここでやむなく指揮者をやらされるはめに・・

「やってられない」と感じた彼は、
もう一方の「エリートオケ」のオーディションを受けて、辛うじて平行入団することにした。

しかし、ここからが大変。

「エリートオケ」では団員を切磋琢磨をさせるために各パートで技量が落ちるものを
一人だけ「降り番」にするルール。
演奏会に向けての練習には、なぜかロシアから世界的な指揮者が指導に来ることになっており、
団員のライバル意識は激しく、主人公は苦闘むなしく「エリートオケ」から脱落してしまう。

やる気を失った彼は、音楽そのものを諦めようとするも、
老人たちの希望で「老人オケ」の指揮を続けることになる。

実は「老人オケ」と「エリートオケ」はかつて一つの楽団だったが、
主催者の策略で、年寄りたちがはじき出されたという因縁があった。
物語の最後には「老人オケ」が力を出し切って市民を感動させ、
「エリートオケ」を解散に追い込み、再び一緒になるというめでたしめでたしの話・・・

無理にまとめると元も子もなくなるが、この小説の面白さは、この10倍あるのだ。

二つのオケのストーリーに絡み合って、いくつもの筋が展開してゆく。

1)なぜか、ロシアスパイ組織の日本に対する諜報活動の話が同時進行で展開してゆき
この二つのオケの確執に謀略がからみあって、最後は緊張感のある大団円に向かう。
つまり「エスピオナージュ」ものもハラハラどきどきもある。
2)老人の一人が「振り込め詐欺」にあい、その犯人を突き止める筋
3)地方都市の、電気店と大型チェーン店の生き残りを掛けての戦いの筋もある。
   (実はそのまま「老人オケ」のリーダーと「エリートオケ」の主催者になっている)
4)「ロミオとジュリエット」の悲劇を予感させる複線があり、両オケのリーダーの娘、息子が
恋愛にあるものの、両方の親は知らない・・・
5)主人公(高校教師)と女性教師との恋の行方・・・
6)スパイによる、謀略と、暗殺計画の進行。それがクライマックスに・・

書き出したらきりが・・ない。楽しさてんこ盛りのエンターテインメント=つまり面白い。

僕にとって一番リアリティーがあったのは、入団して必死に追いつこうと努力する主人公の姿。
なんだか、新しいオケに入団して、悪戦苦闘している自分を見ているようで。

それから文庫版の書評を書いているのが、あの藤谷治氏というのもいい。
盗まれたチェロが登場した「船に乗れ!」で睡眠不足にしてくれた藤谷さんに
解説でまた会えたのも嬉しかった。

音楽の小説は「ブラバン」と「船に乗れ!」くらいしか読んだ記憶が無いけど、
(あと小澤 征爾の自伝と、「僕はいかに指揮者になったのか」(佐渡裕)は面白かった)

どなたか、音楽関係の小説を紹介して頂いたら嬉しいのですが。
最近、なかなか本が読めなくなって・・こんな小説なら楽しいと思うので。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする