FeullardのDaily Exercisesを使って基本レッスンを開始して2ヶ月足らずなのだが、
本日のレッスンでとても大きな気付きがあった。
Feullardは筋トレを含む、基本のエクササイズなので、レッスンで指示された項目を自宅で練習し、
次のレッスンでその成果を確認し、また次の課題へと、一歩一歩 歩みを続けてゆく。
今日は1,2,3,5番のエクササイズまでは順調に進み、先生から
「左は大分落ち着いてきましたね。指がばたばたしなくなりました」
とちょっと褒められた。指全体で押えるという基本動作がこれまで出来ていなかったのだからね。
ここまではよかったけど、11番で予期せぬ躓きに遭遇した。
Feullard11番の4小節目は、#も♭もない、基本的アルベジオを、一音ずつ音程を大事にしながら
ゆっくり弾くだけのエクササイズなのだけど、何度やっても音程が定まらないのだ。
「もっと指を広げて。」「まだ狭い、もっと広げて」と何度も指示が飛ぶ。
今まで何度もオケの舞台に乗ってきたのに、こんなにダメだったんだと焦って、
力任せに指を広げるのだけど、上りと下りで微妙に音程が狂ってしまうのだ。
見かねた先生は、立ち上がると僕の左手をぎゅっとひねって
「こう・・・こう・・・。 腕から指先まで板が入っているように、真っ直ぐに。」
「指は斜めに押さえるんですよ。真横に構えたら指は広がらないでしょ」と
以前にも教えていただいた構え方に矯正してゆくと
「ほらこんなに広がる」。
要は、A線での左手の形が、D線、C線ではくずれてしまっているから指が広がらない。
「左指には、どのポジションでも同じ労働条件にしてやらないといけない。」
「そのためには肘と腕が何処にゆくにも、着いてこないといけない。」
「今までは、左手がさぼっているから大変になってしまうんです。」
ようやく先生の指示を飲み込むことができたので、指示通りに構えて演奏すると、
C線になると、かなり腕を持ち上げて、腕全体がネックを巻き込むように感じた。
「こんなんでいいんですか?」
「そうです、それでいいんです、プロなみです。」
たしかに、こういう構え方をすると、先程まで音程を維持するだけでも汗だくだったのに、
手から指を指板に下げるだけで、楽々と弦を押さえられるし、音程も全然ずれないではないか!
バイオリンの修理か購入相談に来ていた女性も「随分格好良くなりましたね」と
思わず言葉を掛けてくれたので、練習場は笑いに包まれたのだった。
左の構え方、腕や肘の動かし方という基本の基本が、音程を正しく押えるために
必須の条件だったと気付かされた。
何度も教えられながら身に付かなかったことの一つがクリアーできそうだ。
さて、本日驚きの気付きがもう一つあった。
Feullard15番は”指の機敏さ”のエクササイズなので、様々な押さえ方で練習するのだけど
4小節目の確認に入ったところ、音程が定まらない。
ネックの上方のファ、ソ、ラと上ったあと、下りでどうしてもファがずれてしまうのだ。
なぜずれるのか、それはファを押さえた指が上るときに、ずり上がってしまい、本来の音程を確保できない。
理由が判明した!
「人差し指を折り畳まず、伸ばして押さえているからです。指をたたみこまないと人差し指が、
どんどん持って行かれちゃう、だから、どうしても元の音に戻れないんです。」
この指摘と同時に、人差し指の第一関節をペコペコと折り曲げる練習をする話が思い出された。
「まさかあれが出来ないとハイポジションは押さえられないのだろうか・・・」と一瞬顔が曇った。
しかし先生の示してくれた方法は”指先ペコペコ”ではなかった。
「人差し指は折り畳み式なんですよ。そうすると、最初の位置で我慢できるでしょう。
上に行くほど、人差し指はもっと折り畳まれるんです」
と示してくれた方法は、第一関節をペコペコするのではなく、ごく自然に人差し指の先端で弦を押さえ、
カタツムリのように人差し指全体を畳み込むように押さえるのだった。
すぐに気付いたことがある。
「人差し指の先を立てて押さえるということは、そこに爪が伸びていたら決して押えることができない!」
本日の自分の爪は、そこそこ整えられてはいたが、指先で押えると爪が邪魔になって押えられない。
「すみません、今日は爪が伸びていて押えられません」と先生にお断りして練習を切り上げた。
これまでプロは無論のこと、チェロの上手な人の爪先は、みんな「赤ちゃん爪」になっていたが、
そうでなければハイポジションは押えられない、ということがはっきり分かった瞬間だった。
でもどうやったら「赤ちゃん爪」になるんだろう。
これまでも、格好だけでも真似ようと爪を切ってみたこともあるけど、深爪するのは痛い。
長くやっているうちにああなるんだろうか・・・。
何はともあれ、理由が分かった以上、本日から地道に「深爪ギリギリ」の世界に突入することにしよう。
( なぜかSUWADAの高級ニッパ式爪切りだけは以前から購入し、砥ぎ直し済みなので )
6年のチェロ生活でこれまでも何度も目にしたり、注意されてきたことが、基本エクササイズを進むたびに、
リアリティーをもって実感できるようになってゆく。
「今更で恥ずかしい・・」という気持ちもあるものの、基本的な演奏の作法の本質が解き明かされてゆくのは驚き一杯で楽しい。基本を学ぶことで『伸びしろ』はまだまだ存在すると感じられるのも嬉しい。