チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

ベルディー「レクイエム」本番終了

2009年02月22日 22時58分36秒 | コンサート
半年間に渡って練習を繰り返してきた大曲レクイエムが無事終了した。

終わっての感じ方がいつものコンサートとちょっと違う。何だろうと思っていたら、そうだお正月みたいだ、と思い至った。一年間仕事に追われ、最後は倒れこむように年末年始のお休みに入り、年が明けてほっこりしている・・あのお正月気分なのだ。 
 別にクリスチャンでもないけどクリスマスにはなぜかクリスマスキャロルなど聞いて敬虔な気持ちになって、すぐ初詣して、なんとも不思議な国民なんだけど、これらの行事がないと年が越せないというのは愉快でもある。ベルディーの「レクイエム」との格闘はそんな体験が凝縮していたような気がする。

 さて演奏会そのものだけど、今日ははるばる東京方面から数名の同僚が聞きに来てくれた(しかもチケットを購入してくれた)。そのことは嬉しく楽しいはずなんだけど、舞台裏からステージに出る前から手に汗をかいていた。舞台から見ると同僚たちは前のほうに席を取って笑いかけたりしてくれる。いつの間にか気合が入りすぎていたのか「DIES IRAE(怒りの日)」のフォルテシモのキザミのところで弓を取り落としそうになってしまった。この2年一度もこんなことなかったのだから、やっぱ緊張していいとこ見せようとしていたのに違いない。ひょっとしたら皆に気付かれたかもしれない。

 そんな小さなハプニングがあったものの、演奏会そのものは順調に進み、1時間40分のレクイエムは大成功だったと思う。
 自分はといえば、いつものとおり、本番というのは普段の8掛けの実力発揮がいいところなのだろう。今回は弾けないところははっきり自覚し、自分なりに姿勢・態度を決めての参加を志していたにもかかわらず、軽い飛び出し、音外し、見失い(今どこ?状態)が散発してしまった。でも一方で、自分の実力と「等身大」の演奏を積み重ねる境地にだんだん近づいてきているのは前進だと思おう。

 そんなこんなの中で幾つか発見を書いておこう

1)優れた演奏者の音は客席から識別できるのだ・・・これは家内が明言していることなのだが、チェロ席に座っていたプロの先生の音は(トップではない)圧倒的に客席に届いていたらしい。そして「第二バイオリンの女の子の音がきれいだった」。これだけで僕にはその女性が誰なのか分かったのだ。つまり家内のような音楽素人の人にも、美しい音色を出す演奏家ははっきり識別されているといいうことだ。格好だけではだめ、本当に美しい、遠くに届く音色を出せなければ通用しないんだ!

2)女性演奏者の見る目は怖いのだ?!・・・ゲネプロでの出来事。プロの声楽家と合わせ練習をしたのだが、指揮者から声が♭になりがちとの指摘を受け、何度かその場で演奏を繰り返した場面のこと。それを楽器を休めて見ている女性団員たちの表情の変化が凄い。特に管楽器の団員はちょっとでも声が揺れたり♭あるいは♯に偏ると顔をくしゃくしゃにしてまるで「抗議している」みたいになっている。同じ呼吸を使う楽器だからなのか、感性が鋭いからなのか、単に同姓に厳しいだけなのか・・・でもその厳しさこそが管楽器奏者を独り立ちさせているのだよな。でもオッカネーっ!

3)伴奏音楽も面白い・・・このことはチェロの師匠から「結構面白いものだよ」と聞かされていたのだけど、レクイエムは始めなかなか好きになれなかったなー。それがソリストや合唱と合同演奏してみると、彼ら彼女らの呼吸と一体となって演奏しないと音楽にならないことが感じられ、練習を続けるうちに、指揮者・声楽家・オケ全体に目配りをして「合わせてゆく」楽しさが感じられるようになった。 思えば、いろいろなソナタでピアノ伴奏をしている人がいるけど、きっと合わせること、ともに音楽することの楽しさを感じているのだと思う。それがオーケストラ全体で出来たら凄いのだが・・・

4)プロの方々も楽しんでいたんだ・・・演奏会終了後にソリスト4人から講評があった。講評と言えばオケの演奏会のあといつも指揮者やトレーナーの先生から辛口の講評があるので、覚悟していたら、むしろ演奏会に参加でき嬉しかったことを率直に語ってくれていたのが新鮮だった。ベルディーのレクイエムは初めてというソプラノ、テノールの方も「難しい曲」で挑戦的であったとの趣旨をおっしゃっていた。アルトの方はイタリア留学以来10年の夢がかなったと喜ばれていた。こんな「講評」は何回聞いても楽しいだろうなーなんて思った。

 さて、お正月気分はあっという間に過ぎることだろう。さ来週から定期演奏会の練習が始まる。今回のような大規模な演奏会ではないけど、一歩一歩何かをつかみとって前進したいものだ。
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ベルディー「レクイエム」の本番まであと5日

2009年02月17日 23時27分13秒 | オケの練習
 合唱団とプロのソリストとの合同練習が行われた。県民合唱団260人、オケが90人がffで吼えまくる「怒りの日」、ベルディーのレクイエムで最も有名で、合唱をやる人なら誰でも参加したいといわれているこのときの迫力は凄いものだった。

 一方でさすがだなーと感じたのは、プロのソリストの方々(ソプラノ:大隅智佳子 アルト:三輪 陽子 テノール:成田 勝美 バス:直野 資)の声量の豊かさ、声の美しさだ。一流のプロの歌を生で聴けるだけでも幸せものだ。

 それと全体を指揮する土田政昭先生の堂々たるリーダーシップに「さすがプロだなー」と感銘を受けた。いつも管弦楽で接してきたのでコーラスの指揮ってどうなんだろう・・・なんていうのは浅はかな考えだった。実はもともとコーラスグループの指揮者もずーっと続けてこられている。400人近い集団を前にユーモアも交え素晴らしい存在感を感じさせてくれる指導者だと思う。

 さて合同練習で一番心に響いたのは、会場から鳴り響くトランペットの響きだった。会場や楽屋など、舞台から離れて演奏されるアンサンブルを「バンダ」というそうだが、舞台上の5台のトランペットと客席奥からの4台のトランペットが、広いコンサートホールを”十字砲火”する具合に鳴り渡るとき、思わず涙腺が緩みそうになる。なぜだろう。
 一生懸命遠奏しているだけでは必ずしも感動するわけではないのだ。演奏者が渾身のエネルギーを注いだ結果、楽器からほとばしる張り詰めた振動が体を伝わり、心をも振るわせるのだろうか。張り詰めた、緊張した、研ぎ澄まされた、そこに神経が注ぎ込まれた・・・そんな人たちの高まったエネルギーは呼び起こす感動だという気がする。

 千葉県文化会館は県下最大の会場なのだろうか・・バルコニー席を含め奥行が深い会場に1500人が集まる予定で、ここがベルディーの1時間40分にわたる演奏の舞台になるんだ。かつて舞台に登ったこともある東京文化会館をちょっと思い起こさせてくれる。

 多くのお客さんに楽しんでもらえるよう、今週末まで練習&練習だ。
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メンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトにまたも涙

2009年02月09日 22時22分46秒 | コンサート
 仕事で知り合った方から所属するオケのチケットをいつもいただいている。昨日は久しぶりに仕事も練習もダブらなかったので、川口リリアホールまで飛ばした(免停になる寸前なので大人しくぶっ飛ばしたのだ)

 そのオケの名は「アンサンブル・アイン・ライム」。僕が感動してチェロを始めるきっかけになった素敵な楽団なのだ。
 いつも誘ってくれるのは会社では「偉いさん」で、夜昼無しに事業を動かす仕事をしている一方で、何十年もの間オケの一員として素晴らしいアンサンブルを創り上げていたのを知った衝撃は大きかった。
 翻ってみると自分は「忙しい忙しい」とか「地域がもっと都心にあればなー」とか「楽器高いからなー」などとオケの演奏をしたいのに30年近く、自分にも妻にも言い訳ばかりしていたのだった。
 それが自分などより何倍もの困難を超越して楽団員としての生活を見事に実現している人を目の前にして、一気にチェロ購入に走ったんだっけ・・

 そんなきっかけを与えてくれた、恩義もある憧れのオケが今日は見れる。しかもソリストを迎えてのメンデルスゾーンが聴ける。うーん胸が高鳴る。習志野で聞かせていただいドボルザークのチェロ協奏曲に感動したように、絶対カブリツキで見るぞ!

 リリアホールというのはこじんまりとした音楽専門のホール。パイプオルガンが美しい。その会場での第一曲目はプロコフィエフの「古典交響曲」。アインライムの音は、期待にたがわず第一音から圧倒的に澄み切った、素晴らしい響きで満たしてくれる。とてもオマオケとは思えない。美しい響きを奏でるために、腕を磨いたもの同士が集まっているといえばいのか・・・「第一音から惹きこまれる」ここが凄いと思う。

 そして二曲目がメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲。ソリストは佐原敦子さん。若く美しい、バイオリンを弾くために生まれ出た妖精のように見えた。かぶりつきなので、白魚のように繊細な指の一本一本までよく見える。
 僕はプロの演奏家の演奏をどう言葉で表現していいか分からない。でも僕の体に届いているのをモロに感じる。だってなぜだか涙が出てくるんだ。このような美しい曲を、何のミスも無く、美しく、速く、激しく、可愛く弾きこなす姿と響きに、ただただ口を開けて見とれるしかない。CDで聴いているその曲が、マイクも通さず、僕の目の前で、彼女の全てを駆使してこの世に表出されているという事実に、何も何も言うことが出来ないのだ。

 プロのソリストの凄さ、強さ、揺るぎ無い精神性、決して切れることの無い高い集中、音楽への没頭。そしてそれを支えているだろう、日々の鍛錬の日々・・・まるで神を見ているようだった。

 ソリストの佐原敦子さんとアイコンタクトしながらアンサンブルを創り上げていった指揮者の高橋俊之さん、アンコールに弦楽アンサンブルを聴かせてくれたアイン・ライムの皆さんに心から感謝をし拍手を送りたい。

 帰りながらパンフレットを読むと、アイン・ライムの由来とアンサンブルの美しさの秘密が判明した。

【ライム(Reim)とは「韻」を意味するドイツ語で、参加しているメンバーは一人ひとりの音を全て聞き合えるような緊密なコミュニケーションを取りながら、大オーケストラでは味わえない「響き」「余韻」そして「対話」と「一体感」を味わいたいと考えています】 

 正にそのとおり、第一音から素晴らしいのだ
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チェログループ難所レッスン

2009年02月08日 21時05分21秒 | オケの練習
 ベルレクの演奏会を間近に控え、延び延びになっていたチェロだけのレッスンを行った。我がオケには素晴らしいプロのチェリストが弦トレーナーになってくれていて大変幸せな環境にある。この先生の素晴らしさは「褒めて乗せる」技かもしれない。普段指揮者におこられっぱなしの弦族を前に「ここは天国の気持ちで」とか「ここはためらって・・」とか「周りの音が聞こえるまで耳を澄ませて」とか誰にでも分かりやすい表現で表現の仕方を教えてくれ、ちょっとでも改善すると「すばらしい、それでいいんです」と背中を押してくれて、みんな感嘆符付きで舞い上がってしまうものだから、当然ながらいい演奏に繋がる。

 今回のチェロレッスンは、そんな先生をチェロ族だけのために確保して、チェロの先輩の自宅での特別集中講座だ。さすがチェロが6台並ぶと大きめの自宅練習室もやや手狭だけど、それだけに先生の素晴らしく美しい生チェロの音も、互いの音もよく聞こえて練習ははかどった。

 とりわけ今回のチェロレッスンでは、本番が近くてとても基礎練習からやっていては間に合わない部分を、先生は「褒め技」だけでなく超実践的な「ごまかし技」も大胆に教えて導いてくれた。初めからごまかそうと言うのではないのだろうが、こうすればミスをしても大丈夫というような弾き方だ。

 例えば、アレグロでの早い移弦を伴ったスタッカートの連続(ベルレクでは”天国”場面のpppでこれが多い)の場合、「あまり一生懸命に弾かないこと。16分音符の4つの連続の場合、最初の2音だけをまず弾けるようになること」というので実際に見本を見せ、みなで練習させてくれる。無論全部弾ける主席さんたちはちゃんと弾くんだけど、僕のような初心者には歯が立たなかったのが、参加が出来るようになった。

 ごまかしではないけど「4弦全部をダウンで鳴らすにはどうしたらいいんですか」との問いに、その場でジャンと鳴らしてくれた。その解説は「全部を弾くんではなくて、下の3弦を鳴らせば共鳴してA線は鳴っています」とのこと。みんなでやってみると確かにそのとおりで、弓を捏ねて4弦全部を無理やり鳴らそうとするより鮮やかに鳴るのだった。ただしこのとき大事なのは確実に正しいポジションを押さえないと「共鳴」しないということ。

 それから第5ポジションから上のハイポジションでのレとかファを押さえなければならないチェロの主旋律が出てくるけど、そんなときどのように運指したらいいか(もはや親指はネックの上に乗ってしまっているけど)、幾つかの指のとり方を教えてくれたり・・でも出来ないものは放棄するいさいぎ良さも必要だけど。
 このハイポジションで気付いたし、前進に結びついたのは、弦を横から押さえていた自分の間違いを指摘してもらい、薬指なり中指を現に対して上から真っ直ぐ押さえること。そのためには、低いポジションの段階で、手の甲だけは上に持ち上げておくことで、高いポジションへの移動がスムーズになること・・だった。

 それぞれが会費を持ち寄っての大変有意義なレッスン3時間は、あっという間に終了。オケ全体の練習とは違った疲れ、充実感が残ったが、それと同時に自分の技量の至らなさがいやおうなしに明確化されたことも確かだった。いざとなると有効なごまかしすら出来ず、あの「エアー」が頻出する。もうこんなの嫌なので、それなりに毎晩の練習をしてきたけど、まだまだどころか、全然駄目。チェロへの道はまだまだこれからだ。

 

 
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