チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

なぜか楽しかった「第九」合同練習会

2010年09月07日 01時04分31秒 | オケの練習
炎熱の日が続いているものの、夕方になると動き始めた風の中に涼しさのかけらが感じられる。
そんななかで、二つのオーケストラの初めての「第九合同練習」が行われた。
はじめは緊張して参加したけど、終わってみると涼しい風に吹かれたように、楽しい経験になった。

その気分はちょうど文化祭でクラスの誰かが言いだしっぺに、不承不承参加したイベントが、
終わってみると成し遂げた清々しさを感じるような、久しぶりの感覚だった。

「たかが合同練習程度でそんな気分になれるなんて」と思ったらちょと違うんだな~
二つのオケが合同練習するというのは、それ自体が開催するだけでも大変なイベントだったのだ。


合同練習の大変さとは・・・


まず、何十キロも地域が離れた二つのオケが、どちらかの場所で一緒に練習すること自体大変だ。
日常でも1時間もそれ以上の時間を掛けて集まっている場所とは全然違う会場に向かわなければならない。
中には2時間半車を飛ばして駆けつけた人もいた。一日練習しての帰りが大変だ。

到着した土地は不案内。駅に降りてからの交通手段も簡単ではない(千葉の地方都市のこと結構離れている)。
迎える側では、遠方から参加してくれる団員たちの送り迎えはどうするの?昼食は?と心配は尽きない。

無論、練習会場はいつもの場所には入り切れない。猛暑の中、クーラー無しとは行かないから
それなりの施設を確保しなければならない。

楽器についても通常使っている「重楽器」はどうするのか。
ティンパニーは、コントラバスや大太鼓は?
それから何十人にもなると譜面台だけでも何十キロの重さになる。
(僕は譜面台係だったけど、譜面台が何十本も入ったケース持ち上げ損なってちょっと怪我しちゃった)


演奏についても、合わせて行くのは大変だ。
練習時の指揮者と本番では指揮者が代わるから、表現はきっと違う。
(自分のオケの指揮者の指導と全然違う指摘がされるかも知れないのだ)

指揮者の立場に立ってみても、新しい組み合わせの演奏者には、
これまで積み重ねてきたことを、再度示さなければならないから厄介だと思う。

弦楽器の場合、オケごとにボーイングは明らかに異なるから、途中での調整が頻繁に入る
(N響のと読響の第九と見比べてみるとはっきり違いがあるようにアマオケでも)

管楽器だと、パートのダブリをどう解消するか。どちらがトップを取るのか。
(遠目で見ていると、プライドの高いソロ楽器の皆さん、心のなかで色々思っているのでは・・
 ・・この人結構やるじゃんとか、俺に任せろ、私のほうが上よ・・とかね)

心理的にも、隣に座る人は「始めまして」からなので、気を使うことになる。
弾き方の癖やボーイングの違いで、弓と弓がチャンバラになっても、文句は言えない。
なんだかいつもと勝手がちがうのだ。人によって「間合い」の感じ方は違うのだろうから・・と自分に言い聞かせる。


そして、楽器の搬出と、片付けたあとの再搬入(我がオケの練習場は、体育館の二階でエレベーターが無いから、
みんな老骨に鞭打って、ティンパニーのお釜やら、指揮台やら、大太鼓、コンバス用の椅子
・・・等々を汗だくで上げ下げしなければならない。


新しい経験ずくめの大変な「合同練習」だったけど、
でもなぜか楽しい、うきうきした気持ちが残った。


なぜだろう?と考えてみた。


どうやら、秘密は単純で「みんな心を一つにして汗をかいた」ということに尽きそうだ。
高校でも、大学でも、会社に入ってからも、特に意味は無いんだけど、汗かいて、一生懸命やったことは
それ自体大した意味があるものでなくても、参画した本人にとっては、強い印象、愛着を残す。

「思いをこめた」とか「必死だった」とか「一緒になった」ということが、
後から振り返ると、楽しさ、さわやかさを感じさせることなのだと思う。

あと一つは、目先が変ることはそれ自体が楽しいものだ。
見た目の変化 ~ 知らない人が半分。黄色やら白やら、青のチェロケースが並ぶ。
聞こえる音の変化 ~ いつもと違う管楽器の音色(たとえばオーボエの泣き方とか)、
同じティンパニーでも叩く人で全然違うものだ・・みたいな。

いやいや、本当は自分の息子より若い、新人君がチェロに加わったことが励みになっているのかも。
キャリアは僕なんかよりずーっと長いし、上手そうだけど、なんせ3年目にして初めて迎える「後輩部員」なんだから。


これから秋が深まり、夕闇が早まり、木枯らしに切り替わるころに第九の演奏会がある。
この暑さでも、こんな楽しい気持ちだったのだから、きっと心に残る演奏会になるはずだ。
コメント (2)
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