~運命の日~髄液を抜かれる(3)~
かなり間があきました。
脳脊髄液を抜かれた日の続きを書きます。
髄液検査から17時間が経っていました。
その間、採取直後の200ccの点滴1本のみ。
水分は一滴も摂取しないのに、頻尿は続いていました。
完全な脱水症状です。
症状は刻一刻と悪化していくのが解りました。
気が狂ったかと思うほどの、身体の中心部から起る気分の悪さ。
喩えようのない、とてつもないダルさに襲われてきて
「死」の影が頭を掠めます。
脳脊髄液採取後の激変。
激しい頭痛、不整脈、頻尿、微熱、身体の振戦、メマイ、顔面違和感…
それらは典型的な「穿刺後低髄液圧症候群」の症状の数々。
百年前から医学の教科書に記載されているはずの、病態です。
あの日、いとも簡単に髄液を抜き取った医師は、
自分の犯した行為の残虐性を、本当に認知していなかったのだろうか……
と今でも思います。
もし本当に本当に知らなかった、としたら
脳外科医としての知識のなさに唖然呆然するばかり、
もし認識した上で放置し、「髄液採取と無関係!」という暴言を吐いたとしたら
殺人未遂に等しいのではなかったのか……。
医師としても人間としても、あるまじき行為です。
目の前で苦しんでいる患者を、冷酷に見捨てたのですから。
もし、この症状が脳外科の範疇ではない、と判断したのであれば
適当な病院を紹介するのが、医師としての最低限の任務でしょう。
それが「医師」としてのあたりまえの仕事だと思っていました。
でも、ただの思い込みだったようです。
救急車の要請は無視されました。
「必要性をまるで感じない。
あなたの状態は緊急事態だとは思わないね。
そんなに呼びたかったら勝手にどーぞ。」
殺人鬼は続けます。
「でも、救急車を呼ぶのは病院を出てからにしてくれ!
困るんだよ。ここに呼ばれちゃ。」
薄く微笑みさえ浮かべて。。。
もうこれ以上、この男と話をする気にはなれませんでした。
(さらにさらに続く)