「リリカルな」と表現すると、それはビル・エヴァンスに代表されるピアノを指すことが多い。少なくともその言葉からトランペットを連想する人はあまりいないのではないかと思う。
ただアート・ファーマーは例外だ。リリカルなのである。
ではリリカルとは何だろう。早速辞書で引く。「抒情的・抒情詩的であるさま」とあった。
うむ、抒情詩とは何だろう。またまた辞書を引く。「作者の思いや感情を表す詩。元来は楽器に合わせて歌う詩」なのだそうだ。
なんだやっぱり音楽に戻ってくるのかと一人で納得。
このアルバムで彼はフリューゲルホーンを吹いている。トランペットより、さらにやさしい音色だ。
そのやさしい音色で哀愁漂うメロディを次々と歌い上げる。選曲もよく、何度聴いても切ない感情がわきあがり感動してしまう。
ワンホーンの魅力がたっぷり詰まった一枚。素敵だ。