■にっぽん縦断こころ旅NHK・BSプレミアムの名物番組、「にっぽん縦断こころ旅」(朝7:45 夜7:00)。
俳優・火野正平が、視聴者の「こころ」にある忘れられない風景を自転車で訪ねる長寿番組である。
2011年からの放送だから今年で7年目。
火野正平を先頭に、カメラマン、マイク担当、ディレクター、整備マンの計5人が連なって走る。
田園風景などを5台で走る姿はなんとものどかで癒やされる。
かつて女性と多くの浮き名を流した火野正平も御年68歳、
頭はすっきりしたスキンヘッド。
まっ、早い話しが生臭坊主の懺悔旅ともいえる。
ところが人気なのだね。
特におばちゃんたちに・・。
握手してぇ~と突進してきたり、記念写真を一緒に撮ったりとおばちゃんは遠慮が無い。
みてると、もうお手上げや、という感じでサービスしている。
女性たちは火野正平が醸す不良オーラに誘因されるらしい。
若い娘(こ)から握手を求められたりするとデレデレ。
だけどおっさんにはつれない態度で実に分かり易い。
それと意外なことに高所恐怖症。
特に橋は大の苦手ときている。
へっぴり腰で情けない顔つきに母性がくすぐられる。
NHK的にはNGなのだろうがランチや休憩時に煙草のシーンが結構ある。
これは不良老人、火野正平だからこそギリギリ許容される画なんだろう。禁煙できないから坂道では相変わらずハァハァと息が苦しい。この番組で取り上げられる場所は
普通の暮らしの中で息づいてきた思い出の場所である。
あとで行ってみたいなぁと思う所が実に多い。
だから私はいつも録画したり、メモを取ったりしている。
そこで、今回はそのうちのひとつ、
東村山市・梅岩寺のケヤキを見にいくことにした。
■梅岩寺のケヤキ
鎌倉街道を車で2時間弱、梅岩寺に到着。
山門の両側に樹齢700年のケヤキ、600年のカヤが迎えてくれた。たしかに大きい。
番組では火野正平が和尚さんの指導下で鐘を突いていた。
本堂につながる道の両側には四国八十八ヶ所巡りの石仏が整然と並ぶ。駐車場を出るころ雨がポツポツときた。
もうひとつの目的地は東久留米市・南沢緑地。
東京の名湧水のひとつである。
ところが走るうちに雨脚がどんどん強くなってきた。
もう4時過ぎだし、どうしようかな・・と思い始めたとき、
ふと、みたことのある道に出た。
あぁ、あそこだ、国立ハンセン病資料館の近くだ。
名水よりこっちに行こうと、直ぐに決めた。
■ハンセン病資料館
東村山市の多摩全生園。
広大な敷地に国立ハンセン病資料館は建つ。
ここは何年か前に訪ねたことがある。
きっかけというのは、私がかつて四国八十八ヶ所の遍路歩きをしていたころ、
遍路とハンセン病との関係を知る一冊の本、
「四国遍路 八八ケ所巡礼の歴史と文化」(森正人著 中公新書)に出会ったから・・。
四国遍路の巡礼者には貧しい人々、村落を追われた人々が多くを占めた。飢饉で口減らしやハンセン病を患った人々は家を追われ、遍路に出た。物乞いしながら生きていくしかなかったのだ。
当時、ハンセン病は伝染病だと信じられていたため、
患者や家族に療養所への入所の重要性を説いて回った一人に小川正子(1902~1943)がいる。
長島愛生園(岡山県瀬戸内市)に勤務していた医師だった小川正子はハンセン病患者の収容に心血を注ぎ、その記録として「小島の春」(1938年)を著した。
しかし、このことが後にハンセン病裁判闘争のなかで批判されることになる。隔離政策は戦前から平成8年までの90年にわたって続けられた。今回、資料館を見て回っておやっと感じたことがある。
ハンセン病に関わった人物の写真パネル7~8枚が展示されていた。そのうちの一枚が小川正子だった。
解説文には彼女の足跡が淡々と記述されていた。
かつてのように隔離政策を積極的に推進・実行した国の手先・・のような辛辣さは一切見当たらなかった。
正直、これには驚き、そして安心した。
3年前の夏、わたしは山梨県にある「小川正子記念館」を訪ねた。その様子はこのブログの「507.小川正子記念館」に記録したとおりである。
そのとき小川正子記念館の人から聞かされたショッキングなエピソードからは想像しにくいのであるが、
ハンセン病資料館の正子のパネルの扱いをみるかぎり、彼女の歴史的評価を再考したのかもしれない。
だとすれば、小川正子の関係者はとてもホッとしているのではないだろうか。
国立ハンセン病資料館
資料館前に立つ遍路姿の母娘像雨脚が更に強くなった。
玄関で受付の女性が傘をお貸ししましょうか、と声をかけてくれた。
車を出し、小金井街道、國分寺街道を南へと走る。
府中市が通り道にあたるので母校に寄り道することにした。
大きくなったケヤキ並木の向こうに本館が建っている。
この本館は東大安田講堂を建築した内田祥三氏が手がけ、昭和9年に竣工。平成9年に国登録有形文化財に登録されている。
雨は降り続ける。
しっとりとしたキャンパスを散策する。武道館から学生たちの気合いのこもったかけ声がする。
ろくに勉強もせずサークル活動にうつつを抜かしたのが、ついこの間のようだ。数えれば半世紀も前のこと。
まさに光陰矢のごとしである。そういえば、いま放送の朝ドラは本館前でロケしたようだ。
エンドロールに母校の名が出てたから間違いない。
幼なじみの男の子と女の子が語らうシーンだったかな・・もう忘れてしまった。