次世代半導体向けに、フォトマスクなどの回路原版の開発競争が加速してきた。
凸版印刷は17日、既存の露光技術を使い、回路線幅14nmに対応するフォトマスクを米IBMと共同開発すると発表した。同市場でしのぎを削る大日本印刷は、22nmの量産に対応できる新方式の原版技術を開発。
露光技術の進歩が滞る中、原版の工夫で10nm台を早期に実現しようと競う。
●新原版技術の確立急ぐ
フォトマスクは、シリコンウエハーに回路パターンを転写するために不可欠の部品。
凸版印刷と大日本印刷が大手で、両社合計でシェア50%を超える。半導体の微細化が進むにつれて、回路線幅縮小のカギになっている。
凸版印刷とIBMは、システムLSI向けに14nmの微細化に対応するフォトマスクの開発を始める。現在最先端の20nm台後半の技術と比べて、数世代先に相当する。
12年中に製品を開発し、13年からの量産開始を予定。
現在の最先端工場の露光技術を使えるため、半導体メーカーは新規の設備投資を抑えられる。既存の製造ノウハウを活用できるのも強み。
一方で、大日本印刷は新たな原版技術の確立を急ぐ。ウエハーに原版を直接接触させて回路を転写する「ナノインプリント技術」だ。
線幅22nmで12年にも量産化する予定で、10nmにも対応できるという。現在の最先端露光装置が使う複雑だ光学系が不要になるため、実用化できれば装置の大幅な低コスト化を実現できる。
●開発遅れの危機感
両社が開発を急ぐ背景には、次世代露光技術の開発が遅れているとの危機感がある。
線幅10nmを実現するには、光源に極紫外線(EUV)を用いた露光技術が必要とされてきた。しかし、課題の解決が難航しており、木格的な普及は15年前後との見方が強い。
凸版印刷も大日本印刷も、10nm台から先はEUV技術が本命と見なし、その原版も開発している。
ただ、半導体メーカーが想定する量産時期に間に合わない可能性があるため、間をつなぐ技術として別々の方針を打ち出した格好。
現在は市場を二分する両社だが、今回の決断の成否によってシェアが大きく変動する可能性がある。
【記事引用】 「日経産業新聞/2011年1月18日(火)/4面」