エルピーダメモリは6日、中国で計画していたDRAMの合弁工場の稼働を1年程度先送りすると発表した。
総額50億ドル(約4900億円)を投じ、2010年1-3月期に稼働させる計画を8月に発表したばかりだったが、わずか3カ月で計画の修正を迫られた。
米国発の金融危機のあおりでDRAM市況の回復が想定より大きく遅れると判断し、供給過剰の回避を優先することにした。
●一寸先見えず
エルピーダは8月上旬、中国の江蘇省蘇州市に市当局系の投資会社と合弁でDRAM工場を建設すると発表。直径300mmウエハーで月産8万枚の能力を持たせ、広島工場などに並ぶ主力工場に育てる意向だった。
坂本幸雄エルピーダ社長は同日の記者会見で、DRAM市況について「一寸先が全く見えない」と指摘した。
主にパソコンに搭載されるDRAMの需要低迷に世界景気の減速で拍車がかかり、7-9月期には記憶容量一ギガビットの標準製品の価格が4-6月期比で2割ほど下落。
1個2ドル台前半とみられる同社の採算ラインを大きく下回った。同社は09年前半には市況回復が期待できるとの従来の見方を転換、投資を厳しく選別する方針を鮮明にする。
●市場回復に供え
中国合弁の稼働を延期するほか、1000億円を予定していた09年3月期の設備投資額を900億-950億円に減額する。
台湾の力晶半導体と折半出資するDRAM生産会社、瑞晶電子(台湾・台中)に200億円を追加出資する予定だったが、最小限に留める。設備投資抑制と並して、力晶との関係強化を進める。
09年1-3月期をめどに瑞晶をエルピーダの連結子会社にする方向で力晶と調整に入るほか、現在は出資比率1%未満で株式を持ち合う力晶と本格的な資本提携も検討する。
「市況回復に供えて、経営効率を高める狙い」(坂本社長)と説明している。
【記事引用】 「日本経済新聞/2008年11月7日(金)」