ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

シャツ。

2007年05月19日 | blog

じつはオーダーシャツを作るのは2枚目で、
一枚目にまつわるお話。

クリーニング屋のお話を読んで、
数年前に、一度だけ行ったお店を思い出しました。

近所にクリーニング屋がなくて、
同僚に会社の近所のお店を聞いて、
ためてしまったクリーニング物を持って行ったのです。

ラブホの向かいの小さな店で、
でっぷり太ったカウンターのおばちゃんが、
ぼんやりとたばこをふかしていました。

クリーニング屋でたばこ?

背中にかかった仕上がりものは、妙に派手な色艶で、
なにせフー族で有名な街だったので、さもありなん。

「ちょっとみためはあやしいけど」
と、同僚。
「仕上がりは悪くないですよ」

紙袋にまるめたシャツを数枚。
そのなかに、一枚だけ、オーダーシャツが混ざっていました。

たばこを灰皿にとまらせて、まるで興味なさそうに、
丸めたシャツをいちまい、にまい…

淡いピンクのシャツに手が触れた瞬間、
ぽつりと小さな声で、

「あら立派」





…ちょっと鳥肌立っちゃいました。

広げたわけでも、ためつすがめたわけでもないのに、
いったい何がわかったんだろう。

首のうしろが痺れた気持ちで、受け取りをもらいました。


数日後、仕上がりを取りに行くと、
おんなじようにたばこをふかして、
けれど前よりも、さらにぼうっとしたおばちゃんが。

あいからず興味なさそうに、
束ねたシャツをフックで寄せて、お会計して、
こっちはなんだか、すっかり次も頼む気持ちで、
「ここ、休みはいつですか?」
と聞いたのです。




「ああ、うちねぇ。きょうで最後なの」

「え?」

「受け取りがあるからね、あと一週間くらいは開けるけど、
 預かりはきょうで最後」

「…」

なにか呆然としたカンジで、仕上がったシャツを抱えて帰りました。



ほんとにあった、ほんとうのお話。

シャツ。

2007年05月19日 | blog
タカシマヤで、ワイシャツをつくってみました。
10,000円。

丸井で売ってる吊るしのシャツでも、そのくらいめずらしくないですから、
きちんと採寸して、生地からディティールから選べるシャツが
イチマンエンというのは、決して高くはないです。

オーダーシャツというのは、これはもうすばらしいもので、
着心地がいいったらありゃしない。
というか、着ていることをわすれるフィット感です。
どんなに腕を動かしても、どこにも突っ張るところがない。

この道ウン十年とおぼしき年配の店員さんが、ものすごく手際良く採寸されて。
でも袖丈だけ3回計りなおして、「右手が長いようですが」といわれたときは、
「はい正解!」とおもいましたね。

たしかに、長年バイクに乗っているせいで、
アクセルをまわす右手の肩が下がってるんです。
右の袖を、5ミリだけ長くしました。

ああもう、あらゆる服をオーダーしたい。
GパンもTシャツもスニーカーも!!

シャツというのは「定型」ですから、
「構造」は吊るしと変わらないとおもうんです。
ただ、各部のバランスが「適正化」されている。

パーソナライズとマスプロダクトのあいだ。
一点モノと大量生産のあいだ。
だんだんいろんなモノが、デザインが、
そーいう傾向になってきやしてませんかね。

とりあえずつぎは、スーツを狙っております。
気をつけてると、「なんとかスーツフェア」とか、あるんですよね~。