ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

Apple、iPhone5。

2012年10月17日 | blog

「スレート」とはうまい名付けだ。すべてを言い表している。

リークの姿そのままに発売されてしまったiPhone5だが、黒一色仕上げというのはバレなかったし、それなりの驚きがあった。Appleのサイトでははっきりと黒を推してきたので、「次は白!」と思っていた私も思わず黒を購入。

相変わらず賛否両論の新型iPhoneのデザインだが、それもいくぶんトーンダウンしているとおもう。iPhoneはすっかり「なくてはならない存在」だが、その価値はソフト&サービスによって提供されるものであり、ハードそのものにはもう、あまり、「用が無い」。

iPhone4が出たとき「黒子のハード」と感じたが、iPhone5はさらに「黒子」を推し進めた。より薄く、より軽くなり、黒一色の仕上げと「スレート」という名付けから、

「ハードはできることならその存在を消し、画面だけになりたい」

という意志を感じる。そして

画 面 だ け が 拡 大 さ れ た 。

結局のところ多くの人が、思い思いのお気に入りのカバーをかぶせて使っているように、すでにiPhone4の頃から、ハードの存在はその画面だけになろうとしていた。純正のバンパーが用意され、(サードパーティでカバーの設計が容易な)直線的なデザインになったとき、すでに「画面以外は黒子」という思いがあったのではないか。

「スレート」とは「石板」である。最古のメディアが壁画だとすれば、「スレート」は最古のモバイルメディアかもしれない。

エコシステムだ何だと言われているが、iPhoneはまた一歩、「21世紀のメディアの原器」に近付いたのだとおもう。ああ、iPhone、おそろしい子!