ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

テスト・ドライバーのスキル。

2015年07月24日 | blog
映画『デイズ・オブ・サンダー』で、トム・クルーズ演じる天才レーシングドライバーが、ロバート・デュバル演じるメカニックにキレるシーンがある。

「あんたはいつもあっちを削る、こっちをいじると言ってるが、そんな話オレにはさっぱりなんだよ!!」


***


昔読んだ自動車雑誌で、自動車メーカーのテスト・ドライバーの話があった。

いわく、テスト・ドライバーはテストを通じてどこに問題があるかを具体的に特定して、たとえばサスペンションのロワーアームのあの部分にこういう補強が必要、と具体的な改善手法も定義して、その場で自分で溶接とかまでしちゃう、という話だった。

早く走るレーシング・ドライバーと、製品開発をするテスト・ドライバーは、目的が違う、と。

テスト・ドライバーの評価というのは、すごくスピードを出したり高い負荷をかけた限界評価…というイメージがあるが、実際には「一般ユーザーの使われ方」をシュミレートする事が重要なのだと思う。

構造まで深く理解した上で、何も知らない一般ユーザーの感覚も維持し、問題に対して具体的な改善も実行できる。これって開発者としては理想の姿だ。

この二律背反を両立させるという意識が、インハウスデザイナーには足りないと思う。一般ユーザーの感覚はすぐにユーザー調査で…となってしまうが、その前に自分が評価できる目を持つべきだろう。

そのスキルは意識して磨くべきだと思うし、関わった製品は可能な限り自分で使い込む事に私がこだわり続けているのもそういうことだ。

デバイスを分ける。

2015年07月13日 | blog
Apple Watch 、すっかり落ち着いたところで。

発売の勢いで買った人は、自然に馴染んでそこそこ満足感もあり、様子見で買わなかった人は、結局決め手もないので買わないまま、という感じでしょうか。

最近気付いたことがひとつあるので書いておきます。

毎日iPhone使っていて、でも実際の用事はいろいろですよね。先日ちょっと書き出してみたんですが、

自動車保険の更新案内メールが来る→そのままリンクから手続き→家族へのギフト選びと注文→読みかけの本の続きすこし→娘が作ってる工作の写真を撮って→写真を送る

色々やってるんですが、はたから見ると、ずっとiPhoneいじってるだけの人です。

そして思いました。これ、すこし、「デバイス」を分けたほうがいいんじゃないか? って。

以前、Kindle Paper Whiteを買った時も同じようなことを考えました。何でもできるiPadだと集中して本が読めないから、専用機がいいんじゃないかと。(結局、動きがもっさりしすぎて使わなくなってしまいましたが)

Apple Watchも、何でもできるiPhoneから「デバイスを分ける」モノじゃないかと。

通知がチーンと腕時計に来るのは、大きいiPhone6plusをぐわっと取り出してロック解除して見るよりスマートです。iPhoneとiPadの関係も、用途とシーンで細かくデバイスを最適化していたと言えます。

込み入った用事や表現などのアウトプットは、結局キーボードと大画面のパソコンでやった方が効率が良かったり。

「何でもできる」と集約されたデバイスが、心地よさのために、また分解されていく。Apple Watchは、そのキッカケなのかもしれません。