ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

amateur。

2007年05月05日 | blog

「え?買いたいとおもうデザインがない?そりゃそうよー。

あなた、デザイナー?
そう。ふーん。
で、いままでいくつの製品のデザインをしてきたの?

あたしは、そうねぇ、もう十年以上やってるけど、
たぶん100個もないわね。

それで、あなた今年に入って、何個モノを買ったの?覚えてる?
覚えてないでしょう。去年は?一昨年は?
わからないけど、きっとたくさん買ってるわよね。

たくさん買ってるし、買わなかったモノは、
その何倍も、何十倍もあるのよね。ただ見たりしただけのものが。
そうでしょう?

あのね、みんな買うということについては、もうプロ級なのよ。
ものを選んだり、見極めたりということはね。

それだけの審美眼を、モノ作りの立場で、持てるかっていうことなのよ。

デザイナーだけじゃないわよ。商品企画とか、マーケティングとか、
みんなの総意でモノってつくっているわけでしょう。
これが正しい、これが売れる!って信じてね。

でもね、あたしおもうんだけど、そういう人たちも、
じつはアマチュアの域を出てないんじゃないかな。

だって数が違うのよ。経験の。

作るっていうことが、選んだり買ったりの、
何十分の一、何百分の一の経験しかないのよ、
そんなの、「かなうわけない」っておもうのよ。



みんなシンプルなものが欲しいって言うじゃない?
それで、ほんとうにシンプルなものをデザインすると、
商品企画とかは、びびるのよね。
こんなにシンプルなのでいいのかな?って不安になっちゃう。
だいじょうぶ?もっと、めっきとかバッジとかが、
必要なんじゃないの?って。

でも、じぶんがお店に行ったら、
できるだけシンプルな、
めっきとかバッジのない、トースターを選ぶのよ。

え?それでどうすればいいかって?
そんなのじぶんで考えなさいよ。
でもね、そういうことを意識するだけでも、違うとおもう。

どんなものづくりのベテランでも、
買うほどに、作ることの経験がないってことをね。

大人になったら子供の気持ちがわからないのと、おんなじよ」