ある日の会議でのこと。
「次の会議は27日になります」
(!!)
嬉しくなって、会議終了後、さっそくその発言者に聞いてみました。
「さっき、会議で27日って言いましたよね。いつもそう言いますか」
「そう言いましたか? 意識してませんでしたが……。そうかもしれません」
「○○さん、出身はどちらでしたっけ」
「大阪です」
実は、この同僚は、27日を「にじゅうなのか」と言ったのです。
私は27日について思い出があって、韓国人向けの日本語解説書を作っていたとき、日にちの言い方の項目で、27日は「にじゅうしちにち」以外に、「にじゅうななにち」、「にじゅうなのか」ともいう、という注意書きを入れようとしたのです。
すると韓国人の担当者から、「にじゅうなのかとは言わないはずだ」との声があがりました。
「いや、言うよ。ぼくもときどき使うし」
でも、私も日本語ネイティブながら少し不安になって、家族や周囲の日本人に聞いてみたのですね。すると意外なことに、「使わない、間違いだ、聞いたこともない」という日本人が多かった。
ただ、そういわれてみると、僕の語感も、「にじゅうなのか(27日)」はいいけれど、「じゅうなのか(17日)」は言わないような気がする、というような頼りないものだったので、結局韓国人向け解説書に入れることはやめました。
このことをしばらくは忘れていたのですが、会議で「にじゅうなのか」と言う人に遭遇したので、おもわず嬉しくなったのでした。
このブログを読んでいるみなさんは、冒頭の文をどう「読まれた」でしょうか。
可能性として、
にじゅうしちにち、
にじゅうななにち、
にじゅうなのか、
あるいは、
にじゅうしちんち、にじゅうななんち、にじゅうなぬか、なんていうのもあるかもしれません。
きっと、「にじゅうしちにち」がいちばん多いのでしょう。
ネットの「質問コーナー」などでも、「27日」の言い方(読み方)についての記事がたくさんありますが、「にじゅうなのか」を支持する意見はほとんどありませんでした。
日にちの言い方は複雑で、
ついたち、ふつか、みっか、…とおか、…はつか
という大和言葉系の言葉があり、
10以上は、
じゅういちにち、じゅうににち…
という漢字語系の言い方になるのに、なぜか14日は、じゅうよっかになる。
数詞についての1989年の研究を見ると(→リンク)、
14日は
じゅうよっか 77%
じゅうよんにち/よんち/よにち 23%
で、「じゅうよっか」が多く、
17日は、
じゅうしちにち(んち) 51%
じゅうななにち(んち) 49%
で、2つの言い方が拮抗、「じゅうなのか」は選択肢にはない。
残念ながら27日は調査されていないのですが、少数ながら「にじゅうなのか」が存在していた(今も存在する)のではないかと予想します。
ぼくも、アンケートなのでどの言い方をするかと聞かれれば、「にじゅうしちにち」と答えると思いますが、「にじゅうなのか」と言うこともあります。それを不自然に思わないのは、これまでの個人的な言語生活の影響によるのでしょう。
私は東京大田区で祖父母、叔母を含めた7人家族の中で育ちました。祖父は人形町、東銀座、神楽坂、大田区と転居してきており、祖母は蔵前の生まれ、母は目黒。ようするに、みな東京生まれ、東京育ちです。
大田区では新興住宅地で、転勤族もいましたが、おおかたは地元出身。中学・高校も東京山の手の子弟が多かったと思います。
「にじゅうなのか」という表現をどこで聞き覚えたのかはわかりませんが、たぶん家族の中で使われていたのではないかと思います。
冒頭の発言者は大阪の生まれ育ちですから、東京方言というのでもなさそうです。
そうして使ってきた日本語を、韓国人から、「間違っている」と指摘されたときは、あまりいい気持ちがしませんでした。
これは、地方出身者が、正しい表現と思って使っていたものを、「それは標準語ではない」と言われるたときと同じ気持ちなのでしょう。
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