犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

性奴隷とは(2)

2014-04-03 23:44:55 | 慰安婦問題

 韓国では、現代でも「性奴隷事件」がときどき起こっています。

 2000年には群山市で、監禁売春をさせられていた女性が火災で死亡。現代版性奴隷として騒がれました。

 次は、韓国の「女性新聞」の記事(リンク1)。2000年9月19日に起こった火災の直後、10月6日と13日に二回に渡って連載された記事です。

[緊急診断]群山惨事に見る売買春人権蹂躙(上)

いつになったら家に帰れるんだろう?

 群山売春施設火災惨事で明らかになった売春女性の人権蹂躙の実態にスポットライトをあて、これを解決するための国家・社会的な対策提案を2回にわたって連載する。

いつも願っている、売春生活はこの店で最後にしたいと…
神さま、来年の2月には家に帰れるようにしてください。

 群山市大明洞の売春施設火災惨事事件で犠牲になった、売春女性たちの日記帳と手帳が遺族の手で発見された。警察側は「防火設備の不備」だけを問題視し、消極的な捜査に終始してきたが、この事件は全く新しい局面に入った。

 犠牲者イムさん(20歳)の日記帳は、「監禁、恐喝、暴行、人身売買」など、韓国社会の売春女性に対する人権蹂躙の実態報告書だ。「韓国女性団体連合」、「群山女性の電話」など、100以上の女性・市民団体は、25日、「群山市淪落街火災事件対策委員会」を設け、徹底的な調査と関係者への厳罰、政府の対策を要求し、「民主社会のための弁護士の集い」は、「売買春を放置・幇助している国に最大の責任がある」として、国を相手どった訴訟を準備中だ。

 去る9月19日午前9時頃、人々が活動している時間に市場のど真ん中で発生した火災で、20代の女性5人が亡くなった。大明洞の売春街にある無許可の3階建ての建物の2階から発生した火災は、20分後に鎮火し、調査の結果、2階の入口階段脇の配電盤からの漏電が原因であることがわかった。3階にいた売春女性は、火災を目撃したオ・ソンギョ氏(45歳)によって運び出されたが、2階は窓が鉄格子でふさがれており、換気口も非常口もないうえに、外部に通じる唯一の通路である階段の鉄の扉にも施錠装置がつけられていて、結局、中にいた五人全員が窒息死したことがわかった。

 現在、警察は、イ・ヒョンリョル氏(チョン・ガプドクの義理の息子)から建物を賃借していたチョン・ガプドク(売春業者、63歳)と息子のパク・チュンフン(39歳)を過失致死、監禁、恐喝、売春強要などの嫌疑で拘束捜査中であり、逃走したチョン氏の娘、パク・ボクヒョン(40歳)の行方を捜している。

 しかし、今回の事件で現場に無傷で残されていた被害女性の日記帳と手帳が遺族の手によって発見されるなど、警察は、一般人に対するよりもずさんな捜査を行っており、実質的な経営者だったパク・ボクヒョンの逃走が、警察の黙認の下になされた可能性が指摘され、警察と業者の癒着疑惑が高まっている。さらに犠牲者の死因が、有毒ガスによる窒息ではなく他殺である可能性もあるという主張がなされるなど、いまなお多くの疑問がくすぶっている。

業者の監禁、恐喝、頻繁な殴打

 借り主のチョン・ガプドクは、商店として使われていた2、3階を、ベニヤ板を使って改造した。2階に通じる階段は幅約60cmで、人一人がやっと通れる程度だ。窓はすべて鉄格子でふさがれていて、通気口も非常口もまともについておらず、違法改造した建物であることが一目でわかる。2階は全体で26坪。1坪余りの細長い部屋が7つも作られており、内部の通路は幅が60~80cmほどで迷路を連想させ、人一人だけが行き来できる。事実上、売春女性たちの死は予見されたものだった。

 手帳に記された内容を見ると、イムさんは群山に引っ越してきて一千万ウォン以上の借金を負い、毎日の稼ぎの半分を業者に払ったことになっている。売春女性の人権運動に携わってきた活動家は、イムさんのケースは、売春施設の女性の典型的な生活だと言う。たいてい紹介所で五百万ウォンほどが用意され、女性に部屋代とベッド、 TVを強制的に購入させる。1坪余りの部屋の家賃は月約70万ウォンで、食事代30万ウォン、クリーニング代10万ウォンと、百万ウォンを越えるお金を支払わなければならないという。ときどき「仮払」と書かれているのは、イムさんがお金に触ることさえできなかったという意味だ。また、イムさんの日記には、しばしば「病気で休み」「病院に行く」あるいは「コン(客がつかなかったとき)」という文言が書かれているが、このような場合、約15万ウォンの罰金をとられる。

一日も早く自由というものを取り戻したい。一人で銭湯に行って、スーパーに行って、コーヒーショップ行って、窓際に座って、行きかう人を眺めて…

 このように、売春施設の女性たちは完全に監禁された状態で、あらゆる自由を剥奪される。 2月から死亡直前まで、林さんの借金は依然として1000万ウォンに上っていたことからみて、売春女性たちが借金をすべて返済するというのはほとんど不可能である。万に一つ、借金をすべて返したとしても、業者がまたほかの紹介所に売り渡してしまえばおしまいだ。

 ○○オンニ、ビンタ3回。××オンニ、ジョゴン(?)1時間半。怖いという感じよりは悲しかった。お金! お金が何よ… ちくしょう。体の具合は悪いし、お酒まで飲んだら死んじゃう。そしたら追い出されるんじゃないか…

 イムさんの日記からは、売春行為を強いられ、暴力と罵倒に苛まれていたという証拠に加え、常にほかの場所に売られてしまうのではないかと怯えている様子がうかがわれた。「家に帰りたい」と「体の具合が悪い」という文言がいちばん多い。対策委は、イムさんが人工中絶も何度か経験したはずだと言う。

すべてのことを忘れ、ただ死んでしまいたい。人間に嫌気がさしてうんざり。男! 男! 男が嫌い。

 自由になりたいという一心で、何とかしてお金を貯めようとする売春女性たちは、しかし、最終的には売春施設に居続けるほかない。悪徳業者たちが若い女性をひどく殴打する理由も、暴力が激しければ激しいほど、女性たちは容易に無力感にひざを屈し、すべての自信を失ったまま、結局自暴自棄状態になるからだという。

私はまた勝つだろう。いや勝たなければ。それだけが私が生き長らえる最大の方法だから…。ここの生活に馴染んでいる。私は今、どうせ自由もなく、家に帰れもしない。

 群山売春街で7~8か月の間、苦痛にもがいていたイムさんは、結局ほかの4人の売春女性とともに焼死体となって初めて、監禁から解き放たれることができた。

一千万売春女性は国家の責任

 今回の群山火災惨事は、売春女性を徹底的に蹂躙している実態を如実に示している。それは、人間としてのいかなる権利も享受できない性奴隷の姿だ。共対委は「女性がもし自発的に売春を選んだとしても、現実は「人身売買」と変わらない」と言う。

 ペ・クムジャ弁護士は、この事件について「全国売春組織で行われている売買、監禁、暴行など、極端な人権蹂躙の実相を黙認してきた国家と公務員の責任を問いたい」と述べた。

 たんに今回の犠牲者だけの問題にとどまらない。全国いたるところに密かに広がっている売春組織の規模は、想像を絶するほどふくらんでいるというのが、売買春現場の活動家の話だ。売春女性の数も、二百万人から一千万人とまで推定されている。はっきりしているのは、今もイムさんのように監禁され、暴力と性的虐待に苛まれている数多くの売春女性の人権を、もはやこれ以上、国が無視してはならないということだ。


 [緊急診断]売買春を幇助した国家を処罰せよ
群山惨事から見た売買春人権蹂躙(下)

 群山売春施設火災惨事で明らかになった売春女性の人権蹂躙の実態解明に続き、今回の号では、これに対する国家の責任を追及する。

 去る9月19日に発生した群山売春施設火災惨事は、韓国社会の売買春の現状をえぐりだす重要なきっかけになっている。被害女性の日記を通じ、売春女性の人権蹂躙の実態が一つ一つ報告され、警察と市役所の公務員の職務放棄、そして業者との癒着関係が少しずつ明らかになってきており、国が売買春に対する責任から逃れられないことをあらためて立証している。一方、今回の事件は、女性団体を中心とした女性人権運動が、このところ沈滞していた成人売買春問題をあらためてクローズアップさせる契機になるとみられる。

関連公務員の職務放棄に愕然

 今回の事件で、特に共同対策委員会と民弁が注目しているのは、売買春に関わる公務員の職務放棄の実態だ。事件が発生した場所は有名な売春街であり、ソウルの「清涼里オーパルパル(588)」同様、群山では「カムトゥク」といえばそのあたりで知らない人はいないほどだ。管轄地域の警察官たちがこの地域で売買春が行われていることを知らないというのは、常識的にみてお話にならない。さらに、火災が起きた建物は群山駅前派出所から百メートルほどの距離だった。

 「なぜ取り締まらないのか」という問いに、警察は口を揃えて「隠れてやっているのだから取り締まりは難しい」と答える。これに対して、売買春現場の活動家たちは、「誰が犯罪をおおっぴらにやるだろうか」と反問する。活動家らによると、全国的に売買春については、もみ消しを行う利害関係が業者と警察官の間にすでに出来あがっており、取り締まりをするとしても形式的なものにすぎないということだ。

 今回の事件の鍵の一つは、火災が起きた建物の壁にかけられていた「青少年通行禁止区域」という標札である。標札は群山市長と警察庁長官の名義になっている。事件発生直後、共対委側が市役所に責任の所在を問うたとき、「われわれにどんな責任があるというのだ。われわれはまったく知らなかった」という姿勢だった。しかし、市長名の標札については、弁解の余地がない。共対委は、標札がかけられていたということは、市側が、この地域が売買春の行われている特別な場所であることをあらかじめ承知していた、決定的な証拠とみている。

 また、多くの売春施設同様、火災が起きた建物も違法改造された建物で、密閉された状態で中央につながっている細長い部屋が並んでおり、火事が起きたときに大きな惨事になることが避けられない構造になっている。しかし、群山市の建築課の役人は、「建築構造変更が内部変更なので、個人の責任だ」と言い、防火のための取り締まりを担当する役人は、「無許可営業をしている建物は、検査対象ではない」と言うなど、責任回避に汲々としている。

 一方、保護の必要な女性の相談と更生を担当する群山市の女性福祉センターでは、売買春地域についての把握さえまともにできていない状況だ。

 韓国女性団体連合は声明文で、「業者が売春女性たちを監視、監禁、暴行し、長期間不法営業をしてきたのは、何らかの実務的な後ろ楯がなければ不可能だ」と述べ、経営者と建物の借り主だけでなく、関係者全員への徹底捜査を要求している。また、民弁は市役所と警察庁の責任の所在を明らかにし、国が責任を持って売買春防止のための具体的な対策を立てることを促す計画だ。

淪落行為防止法の効力はない

 1996年1月、淪落行為防止法改正案が施行された後、4年が過ぎた今、法の改正で韓国社会で売春の問題が少しでも改善されたという報告はどこにもない。むしろ売春方式の多様化、十代の売春の増加など、売買春はより一層広がっている。

 一部では、法改正が必要だという声もある。法の名称に「淪落」という用語が使われていることからして問題だという指摘もある。売春女性を道徳的に問題視する「淪落」という用語は、「売買春」に置き換えるべきだというのだ。また、犯罪者の処罰のためには、処罰規定が単純すぎるという指摘と、売春女性を更生させるのに実質的な内容を盛り込むべきだという主張が以前から提起されてきた。最近では、売春女性を犯罪者ではなく被害者と規定すべきという主張も出ている。

 しかし、法改正よりも重要なのは、法の執行者の意志だというのが、売買春現場の活動家の意見だ。彼らは、韓国社会で淪落行為防止法が実効を上げることができない理由として、「公務員の安逸な態度」と「売春女性への偏見」を挙げる。改正法で双罰規定が強化されたが、実際には利用者が処罰された事例はほとんどない。さらに売春女性の人権を蹂躙する搾取構造についても調査されたことがなく、社会復帰プログラムに対する制度的な仕組みも不十分である。実態把握はおろか、取り締まりさえしていない実情に加え、業者と役人の結びつきが強い状況を見れば、韓国社会で売買春の根絶は、はるかに遠いものに思われる。

 また、90年代に活発に行われていた売春反対の議論と運動にもかかわらず、韓国社会において売春女性に対する偏見は相変わらずだ。売春に対する国家的放任も、売春女性についてはさまざまな偏見で罪悪視し、利用者の男性については「必要悪」という正当性を付与する、性の不均衡の社会的雰囲気がもたらした結果でもある。

 今回の事件をきっかけに、あらためて売春の構造について問題提起している共同対策委員会の専門家たちは、「関連公務員に対する処罰に加え、売春女性に対する非難の矢を、利用者である男性と、国に向けるべきだ」と指摘した。彼らは、認識の変化とともに売春女性を更生させる保護施設に対する費用補助の義務化、現実的な職業技術教育プログラムの実施、売春密集地域内の専門相談機関の設立と専門相談員の配置など、政府の具体的な対策が整えられるべきだと主張している。

 一方、チョ・スンギョン梨花女子大学女性学教授は、「売買春問題は、韓国の労働市場における女性の地位と密接な関係がある」と指摘し、 「女性運動は、売買春を根絶するために、より根本的な問題を暴いていくべき」と述べた。


 この火災で売春女性5名がなくなりました。上記「女性新聞」のように、当時のマスコミは「現代の性奴隷」を告発しましたが、それもむなしく、わずか一年と少し後の2002年1月19日に、またも同じ群山市で似たような事件が起こり、今度は15人の犠牲者(14人は売春女性、一人は業者の男性)が出ました。


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