1月8日、韓国の裁判所は、徴用工裁判に続き、またも日本政府の神経を逆なでする判決を下しました。
元慰安婦による日本政府を相手取った損害賠償請求裁判です。
こちら(リンク)で、1月8日に配布された報道資料の全訳が読めます。
要約すると、
【判決】
ソウル中央地裁は、原告たち(慰安婦被害者計12人)の請求をすべて認め、日本国が原告たちにそれぞれ1億ウォンずつ支払えという判決を下した。
【判決要旨】
―この事件は、日本帝国が計画的、組織的に広範囲にわたって行った反人道的犯罪行為であり、当時日本帝国によって不法占領されていた韓半島で行われたものであって、国家免除を適用することはできない。
―日本帝国は侵略戦争の遂行過程で、軍人たちの士気高揚のために、いわゆる「慰安婦」を制度化し、法令を整備し、軍と国家機関で組織的に計画を立て、人力を動員、確保し、歴史上前例のない「慰安所」を運営した。
―10代初中盤から20歳余りの未成年または成人になったばかりの原告たちは、「慰安婦」として動員されたあと、日本帝国の組織的で直・間接的な統制下で強制され、一日に数十回、日本軍人たちの性的な行為の対象となった。原告たちは過酷な性行為による傷害、性病、望まない妊娠、安全性が保障されない産婦人科治療を行われ、常時暴力にさらされ、満足な衣食住を保障されなかった。原告たちは最小限の自由も制約され、監視下で生活した。これは当時日本帝国が批准した条約および国際法規に違反しているだけでなく、第二次世界大戦以後、東京裁判所で定められた「人道に反する犯罪」にあたる。
―日本政府は、原告たちが被った精神的な苦痛に対し賠償する義務があり、慰謝料は、少なくとも各1億ウォン以上と見るのが妥当だ。
―原告たちの損害賠償請求権は、韓日政府間の1965年の請求権協定や、2015年の日本軍慰安婦被害者問題関連合意の適用対象に含まれないため、請求権が消滅したとは見られない。
日本政府は、国際法上の「主権免除」(国家が他国の裁判で被告にならないという原則)を主張し、裁判そのものを認めておらず、控訴もしない方針なので、この判決は確定します。
慰安婦について、判決は、
―日本は「慰安婦」を制度化し、法令を整備し、軍と国家機関で組織的に計画を立て、人力を動員、確保し、「慰安所」を運営した。
―慰安婦たちは、10代初中盤から20歳余りの未成年または成人になったばかりで動員され、日本の組織的で直・間接的な統制下で強制され、一日に数十回性的行為の対象となり、常時暴力にさらされ、満足な衣食住を保障されなかったこと。
などとしています。
「動員」という言葉は使われていますが、「強制連行」の言葉はありません。「強制連行」の証拠が見つかっていないことを考慮したのでしょう。
「10代初中盤から20歳余り」とか、「一日に数十回」などは、慰安婦の証言をそのまま事実認定したものと思われます。
慰安婦に加えられた虐待(暴力、衣食住が保障されないこと、自由の制約、監視)などの実行犯は、多くは朝鮮人の業者だったはずですが、それには触れられていません。また、慰安婦たちが報酬を得ていたことも。
これらについて、日本・韓国の研究は、顧みられていないようです。
ポイントは以下の3つです。
1.この裁判に「主権免除(国家免除)」が適用されないとしていること。
2.元慰安婦たちの損害賠償請求権が、韓日間の1965年の請求権協定や、2015年の日本軍慰安婦被害者問題関連合意の適用対象に含まれないとしていること。
3.当時の韓半島が、日本帝国によって不法占領されていたとしていること。
日本政府は、1.や2.について強く抗議していますが、私は3.が大きいと思います。
これは、先の徴用工判決にも通じます。
日本と韓国は、1965年に結ばれた日韓基本条約には、
「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」
と記されています。
これについて、日本は「日韓併合条約が締結当初は有効だったが、1948年の大韓民国成立で無効になった」と解釈し、韓国は「締結当初から無効だった」と解釈し、この解釈を双方が暗黙裡に承認しました。
上の解釈によれば、「日帝時代」は、日本の解釈では合法、韓国の解釈では不法になります。
先の元徴用工裁判の最高裁判決は、この暗黙の合意を覆したものです。
今回のソウル地裁による元慰安婦裁判の判決は、元徴用工裁判の判決を踏襲しています。
もしこれを認めると、「不法な」日帝時代に、韓国人が受けた苦痛は、すべて「法的に」賠償請求・慰謝料請求の対象になり、苦痛を受けたと主張する韓国人(とその遺族)による同様の請求が、無限に続くことになります。
このようなことを防ぐためには、まず「日韓併合条約」が有効・合法であることを韓国に認めさせることから始めなければならないわけですが、それはほとんど不可能です。
日韓の対立は、当分解消できそうにありません。
〈参考〉
元徴用工判決は日韓合意に反している(リンク)
元慰安婦による日本政府を相手取った損害賠償請求裁判です。
こちら(リンク)で、1月8日に配布された報道資料の全訳が読めます。
要約すると、
【判決】
ソウル中央地裁は、原告たち(慰安婦被害者計12人)の請求をすべて認め、日本国が原告たちにそれぞれ1億ウォンずつ支払えという判決を下した。
【判決要旨】
―この事件は、日本帝国が計画的、組織的に広範囲にわたって行った反人道的犯罪行為であり、当時日本帝国によって不法占領されていた韓半島で行われたものであって、国家免除を適用することはできない。
―日本帝国は侵略戦争の遂行過程で、軍人たちの士気高揚のために、いわゆる「慰安婦」を制度化し、法令を整備し、軍と国家機関で組織的に計画を立て、人力を動員、確保し、歴史上前例のない「慰安所」を運営した。
―10代初中盤から20歳余りの未成年または成人になったばかりの原告たちは、「慰安婦」として動員されたあと、日本帝国の組織的で直・間接的な統制下で強制され、一日に数十回、日本軍人たちの性的な行為の対象となった。原告たちは過酷な性行為による傷害、性病、望まない妊娠、安全性が保障されない産婦人科治療を行われ、常時暴力にさらされ、満足な衣食住を保障されなかった。原告たちは最小限の自由も制約され、監視下で生活した。これは当時日本帝国が批准した条約および国際法規に違反しているだけでなく、第二次世界大戦以後、東京裁判所で定められた「人道に反する犯罪」にあたる。
―日本政府は、原告たちが被った精神的な苦痛に対し賠償する義務があり、慰謝料は、少なくとも各1億ウォン以上と見るのが妥当だ。
―原告たちの損害賠償請求権は、韓日政府間の1965年の請求権協定や、2015年の日本軍慰安婦被害者問題関連合意の適用対象に含まれないため、請求権が消滅したとは見られない。
日本政府は、国際法上の「主権免除」(国家が他国の裁判で被告にならないという原則)を主張し、裁判そのものを認めておらず、控訴もしない方針なので、この判決は確定します。
慰安婦について、判決は、
―日本は「慰安婦」を制度化し、法令を整備し、軍と国家機関で組織的に計画を立て、人力を動員、確保し、「慰安所」を運営した。
―慰安婦たちは、10代初中盤から20歳余りの未成年または成人になったばかりで動員され、日本の組織的で直・間接的な統制下で強制され、一日に数十回性的行為の対象となり、常時暴力にさらされ、満足な衣食住を保障されなかったこと。
などとしています。
「動員」という言葉は使われていますが、「強制連行」の言葉はありません。「強制連行」の証拠が見つかっていないことを考慮したのでしょう。
「10代初中盤から20歳余り」とか、「一日に数十回」などは、慰安婦の証言をそのまま事実認定したものと思われます。
慰安婦に加えられた虐待(暴力、衣食住が保障されないこと、自由の制約、監視)などの実行犯は、多くは朝鮮人の業者だったはずですが、それには触れられていません。また、慰安婦たちが報酬を得ていたことも。
これらについて、日本・韓国の研究は、顧みられていないようです。
ポイントは以下の3つです。
1.この裁判に「主権免除(国家免除)」が適用されないとしていること。
2.元慰安婦たちの損害賠償請求権が、韓日間の1965年の請求権協定や、2015年の日本軍慰安婦被害者問題関連合意の適用対象に含まれないとしていること。
3.当時の韓半島が、日本帝国によって不法占領されていたとしていること。
日本政府は、1.や2.について強く抗議していますが、私は3.が大きいと思います。
これは、先の徴用工判決にも通じます。
日本と韓国は、1965年に結ばれた日韓基本条約には、
「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」
と記されています。
これについて、日本は「日韓併合条約が締結当初は有効だったが、1948年の大韓民国成立で無効になった」と解釈し、韓国は「締結当初から無効だった」と解釈し、この解釈を双方が暗黙裡に承認しました。
上の解釈によれば、「日帝時代」は、日本の解釈では合法、韓国の解釈では不法になります。
先の元徴用工裁判の最高裁判決は、この暗黙の合意を覆したものです。
今回のソウル地裁による元慰安婦裁判の判決は、元徴用工裁判の判決を踏襲しています。
もしこれを認めると、「不法な」日帝時代に、韓国人が受けた苦痛は、すべて「法的に」賠償請求・慰謝料請求の対象になり、苦痛を受けたと主張する韓国人(とその遺族)による同様の請求が、無限に続くことになります。
このようなことを防ぐためには、まず「日韓併合条約」が有効・合法であることを韓国に認めさせることから始めなければならないわけですが、それはほとんど不可能です。
日韓の対立は、当分解消できそうにありません。
〈参考〉
元徴用工判決は日韓合意に反している(リンク)
また遡って違法とするのは例の不遡及原則からみて近代国家ではありえない。韓国は他の近代国家とは違うji時空を超えることができる「神聖国家」なのかと思う。
1990年代の初め、関川夏央が『退屈な迷宮』のなかで北朝鮮を神権国家と呼んでいたと思いますが、最近、韓国と北朝鮮は体制は違っても、同じ民族に起因する同質性を感じることが多いです。