犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国飲み屋事情~ガス灯

2007-10-03 00:13:00 | 飲む
「ガス灯」といえば,イングリット・バーグマン主演のサスペンス。

 高校時代に授業をさぼって今はなき渋谷の全線座によく通ったものですが,カサブランカとか第三の男とかガス灯などの名画は,3本立て300円の定番でした。

 二日連続で雨に降られた先週末,「アメリ」を返しに行ったときに,今度は「ガス灯」のDVDを借りてきました。往年のバーグマンの美貌にうっとりとしているうち,いつしか私はソウル・インサドン(仁寺洞)の飲み屋に思いを馳せていたのでした。

 ガス灯は韓国語でワサドゥン(瓦斯燈)

 仁寺洞にワサドンというマッコルリ(韓国どぶろく)のお店があります。確か20世紀の終わり頃,ネットで「ソウルにディープな店がある」という話を読んで,好奇心で行ってみたところ,本当にディープでした。

 仁寺洞入口のバッティングセンター裏。こわれそうな廃屋に,看板もなくひっそりと建っている飲み屋です。
 しかし,入り口の扉を開くと1970年代の喧騒が耳に入ります。高さの不揃いな安物の椅子とテーブルがぎっしり詰め込まれ,ソウルの酔漢たちがたむろしている。

 20代の若者に混じって,50代の男性たちも目につくのは,ここがかつての軍事政権時代,運動圏(学生運動)の闘士たちの溜まり場だったからでしょう。
 激動の時代を見守ってきたご主人は80近いのではないかというお婆さん。

 われわれ3人が席に通されると,何も注文しないのに巨大なたらいになみなみと満たされたマッコルリと得体の知れない脂ギラギラの焼き魚が出る。
 この魚,ホッケのようですが,イミョンスという魚。なんでも,イム・ヨンス(林延寿)さんという太公望がよく釣っていたというのが名前の由来。皿の隅に盛られた塩でいただきます。

 マッコルリの量が半端じゃない。2人なら洗面器,3人ならたらい,4人になるとこれがベビーバス級の大容器になる。

 暗い店内に目が慣れたとき,壁と天井にぎっしりと書き込まれたナクソ(落書)が目に入ります。昔は反体制の檄文で埋められていたに違いありませんが,民主化されて10年以上経った平和なソウルでは,相合い傘にカップルの名前というタイプが増えているところに,時の流れを感じます。

「たらい」からプラスチックのお碗ですくいながら,白濁した液体を酌み交わし,やっと飲み干して,計算(=勘定)でびっくり。

 なんと3人で9千ウォン(当時のレートで900円)!!

 その後,日本からの出張者や旅行者を何度も連れてきましたが,このディープな雰囲気と破格の安さに,みな大満足でした。

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