犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

『帝国の慰安婦』裁判、ついに判決下る

2023-10-26 22:28:54 | 慰安婦問題

写真:『帝国の慰安婦、法廷での1460日』。告訴から丸4年後に出た法廷での闘いの記録

 朴裕河世宗大名誉教授が2014年6月に刑事告訴されて以来、9年以上に及んだ『帝国の慰安婦』裁判に、今日、大法院(最高裁)の判決が下されました。

 結果は、2審の有罪判決を破棄、審理は高裁に差し戻されました。

 1審(17年1月)は「無罪」でしたが、2審(同年10月)は「逆転有罪」。上告審は実に約6年に及びました。

 この裁判の経過については、朴教授のホームページ(リンク)に詳しいですが、私も7年目の節目で、まとめたことがあります。

「帝国の慰安婦裁判」7周年

 韓国のマスコミ各社は、差し戻しの判決が下された直後に相次いで速報を流しました。日本でも、産経新聞が報じました。

「帝国の慰安婦」著者の審理差し戻し 名誉毀損にあたらず=韓国最高裁(聯合ニュース)

「帝国の慰安婦」有罪判決を破棄差し戻し 韓国最高裁「無罪とみるべき」(産経新聞)


勝訴判決に安堵する朴教授

 今後、判決文や、新聞各社、有識者の論評も発表されることと思います。

 それにしても、2審判決から今日の判決まで、6年もかかったというのは不可解です。

 一審の無罪判決は、『帝国の慰安婦』はもちろんのこと、原告(告発側)、被告(朴教授)双方の主張を熟読、吟味して出された緻密な判決でした。

『帝国の慰安婦』刑事一審が名判決である所以

 それに対して、二審判決は、『帝国の慰安婦』も、一審の判決文さえも読まなかったのではないかと疑われるような、原告側の主張を鵜吞みにした判決でした。

 一審判決と二審判決を読み比べればどちらが説得力があるか、ほとんど迷うはずがない。

 きっと、その間に起こった政権交代や、当事者たちの裁判の状況を見守ったことが、審理の遅延を招いたのでしょう。

 裁判当事者であるナヌムの家の安信権所長は、横領で服役中、旧挺対協(現正義連)代表の尹美香は同様の容疑で有罪判決を受け上告中です。

 朴教授は、判決の直後、用意していたと思われるコメントを、フェイスブックに発表しました。

 そこにも書いてありとおり、この裁判は、慰安婦の名前で起こされた裁判ですが、直接的には安信権所長が全面的にサポートし、挺対協が背後から支援した裁判でした。

 『帝国の慰安婦』は元慰安婦支援団体、特に挺対協を名指しで批判する内容が含まれていました。

 支援団体は当初、黙殺しようとしましたが、朴教授が韓国でシンポジウムを行い、さらに日本での翻訳版が2つの賞を受けるなど評判になったため、これ以上朴教授に発言させないよう、社会的に抹殺するために、出版差し止め訴訟、民事訴訟、刑事訴訟と矢継ぎ早に裁判が起こされたものです。

 尹美香は、それまで寄付金集めに利用してきた元慰安婦の李容洙ハルモニから、「集めた金を元慰安婦のために使っていない」などと告発され、その後次々に悪事が表面化しました。

 『帝国の慰安婦』裁判においても、元慰安婦支援団体は、ハルモニたちを利用し、自分たちを批判する学者の口を封じて、韓国政府からの補助金、韓国民からの寄付金、日本政府からの賠償金を永久にもらい続けることを目的にしていました。

 裁判の内容は、「学問の自由」とか「思想の自由」というような、高尚なものではなく、読解力の問題でした。告発した側は確信犯で、『帝国の慰安婦』を曲解(意図的に誤解)したものですが、第三者が客観的に読めば、告発者の曲解はあきらかでした。

 一審の裁判官は、まともな読解力をもっていたので、無罪判決が出ましたが、控訴審の裁判官は読解力が低いのか、本や一審判決を読まなかったのか、不可解な逆転有罪判決を出しました。大法院(最高裁)の判事の読解力がまともだったのは幸いでした。

 事態が長引いたことには、韓国のマスコミの責任も大きい。

 『帝国の慰安婦』を読んだとはとても思えない記事を書いて、朴教授を追い詰めました。

 日本文学が専門の朴教授は、こんなことでその後9年以上、法廷闘争に明け暮れることになりました。実にひどい話です。

 大法院判決を踏まえ、明日以降、どんな「手のひら返し」の記事がでるか、楽しみです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 人生いろいろ~伴侶犬ととも... | トップ | 『帝国の慰安婦』裁判、判決... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

慰安婦問題」カテゴリの最新記事