次は,訳者柳在順の訳者後記の抄訳です。
川村教授が「韓国語版発刊によせて」で明らかにしたように,私もこの本を読みながら,彼がアメリカの女性社会学者の書いた『芸者』を読んで感じた恥ずかしさと腹立ちを,同じように感じないわけにはいかなかった。いや,川村教授が感じた若干の恥ずかしさと腹立ちより,もっと強い羞恥心を感じた。
まず「妓生」という存在が,けっしてわが国の誇らしい文化ではないという,そのような認識のために,いまだ誰も,学問的であれ,社会現象としてであれ,まともな研究がなかったということだ。まさにこれを,日本人学者が,植民地時代の日本の知識人たちの植民史観意識を鋭く抉りだしたという事実に,私は強い自傀の気持ちを抱いた。韓国人が研究し発表すべき事柄が,日本人教授によって書かれたという事実が,何よりも限りなく恥ずかしかった。
しかし,一方ではいくばくかの安心もした。なぜなら,「妓生」という存在が,ややもすれば興味本位に流れたり,一方的に貶められやすいテーマだったからだ。さらに言えば,日本人が認識している「妓生」のイメージとは,70年代の「キーセン観光」程度であり,日本人によって「妓生」の話が書かれるということは,いろいろな面で危険性が内包されていた。
けれども川村教授が書いた『妓生』は,このような憂慮をきれいさっぱり洗い流してしまった。
(中略)
このような点で,『妓生』の韓国語版出版は,韓国読者たちに,驚き,反省,刺激など,たくさんのことを考えさせてくれる本になるだろう。われわれのもの,われわれの文化に対するわれわれの無関心,無知,無視などが,いかにわれわれの姿を貧弱にしているか,この本が赤裸々に感じさせてくれるだろう。
柳在順
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