最近、自宅をリフォームし、蔵書の整理をしていたら、フランスの哲学者、アンリ・ベルグソンの「笑い」という本が発掘されました。
読んだ形跡はあるのですが、なにしろ学生時代のこととて、内容はまったく思い出すことができません(苦笑)。
「笑い」がヒトに特有の行動であるかどうかは、諸説あるようです。
以前、「犬も笑う」という説について紹介したことがあります(→リンク)。
戸川幸夫が著書の中で紹介している自身の経験は、「犬と一緒に相撲をとる遊びをしていたとき、自分がわざと負けてやり、派手に転んでみせたら、犬が大喜びし、その時の顔は明らかに笑っていた、というもの。
これがたんに人間側からの感情移入の結果なのか、ほんとうに笑っていたのかは、意見がわかれるでしょう。
そもそも笑いは顔の表情として表れる現象ですから、そのような表情を作れるほど、顔面の筋肉が発達している必要がある。カラスやイルカは知能は高いかもしれないけれど、あの顔で笑うのは無理でしょう。
その点、人間に近い霊長類のゴリラやチンパンジーが最も笑う可能性の高い動物になります。実際、チンパンジーやゴリラは、くすぐると笑うという報告もある。
でも、喜びの表現としての笑いと、くすぐられたときの生理的な笑い、何かを見て「滑稽さ」を感じて笑うのでは、笑いのレベルが違うような気がします。
「滑稽さ」を感じることが、ヒト以外の動物に可能なのか。
大昔に見たテレビドラマ「ターザン」で、ターザンが連れていたチータというチンパンジーは、人間が何か失敗したとき、手をたたきながら大笑いしていたように記憶しています。
あれはいかにもそれらしく撮影したトリックなのか、「飼育下」で後天的に身につけた行動なのか、それとも知能が高いので「笑う」能力があり野生のチンパンジーでも同じようなしぐさをするのか…。
「滑稽」を辞書で引くと、
その人の言動に予測を越えた意外性があって、期せずして、その場にいる人の笑いを誘うことになる様子だ(新明解7版)。
この定義によれば、まず「予測」があって、それにはずれた言動があったときに、「滑稽さ」は生まれるようです。
すなわち、滑稽さを感じるためには、予測する能力がなければならない。
ふつうに歩き続けると予測していたのに、石につまずいて転んだ、というように。
犬やチンパンジーが、つまずく人間を見て笑うかどうか。私には疑問です。
本能に生きる動物も、危険を回避するために、成り行きを予測しながら行動していると思われますが、それが外れたときに「滑稽だ」と感じるのは人間特有ではないでしょうか。
笑いにもいろいろありますね。微笑、大笑い、爆笑、哄笑など、笑いの程度や笑い方による分類。あるいは、冷笑、嘲笑、ほくそ笑む、苦笑いなど、ニュアンスによる分類。
言語を持たない動物は、本能にしたがって行動をする。抽象的思考ができないので、「今、ここ」にしばられながら、刹那的に生きている。将来を考えたり、過去を振り返ったりすることはできない、というような説をどこかで読んだことがあります。
以前のことを思い出して笑う、「思い出し笑い」は、最も人間的な行動かもしれません。
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