犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ヒト、この不思議なる動物~思い出し笑い

2016-06-04 23:01:09 | 文化人類学

 最近、自宅をリフォームし、蔵書の整理をしていたら、フランスの哲学者、アンリ・ベルグソンの「笑い」という本が発掘されました。

 読んだ形跡はあるのですが、なにしろ学生時代のこととて、内容はまったく思い出すことができません(苦笑)。

 「笑い」がヒトに特有の行動であるかどうかは、諸説あるようです。

 以前、「犬も笑う」という説について紹介したことがあります(→リンク)。

 戸川幸夫が著書の中で紹介している自身の経験は、「犬と一緒に相撲をとる遊びをしていたとき、自分がわざと負けてやり、派手に転んでみせたら、犬が大喜びし、その時の顔は明らかに笑っていた、というもの。


 これがたんに人間側からの感情移入の結果なのか、ほんとうに笑っていたのかは、意見がわかれるでしょう。

 そもそも笑いは顔の表情として表れる現象ですから、そのような表情を作れるほど、顔面の筋肉が発達している必要がある。カラスやイルカは知能は高いかもしれないけれど、あの顔で笑うのは無理でしょう。

 その点、人間に近い霊長類のゴリラやチンパンジーが最も笑う可能性の高い動物になります。実際、チンパンジーやゴリラは、くすぐると笑うという報告もある。

 でも、喜びの表現としての笑いと、くすぐられたときの生理的な笑い、何かを見て「滑稽さ」を感じて笑うのでは、笑いのレベルが違うような気がします。

「滑稽さ」を感じることが、ヒト以外の動物に可能なのか。

 大昔に見たテレビドラマ「ターザン」で、ターザンが連れていたチータというチンパンジーは、人間が何か失敗したとき、手をたたきながら大笑いしていたように記憶しています。

 あれはいかにもそれらしく撮影したトリックなのか、「飼育下」で後天的に身につけた行動なのか、それとも知能が高いので「笑う」能力があり野生のチンパンジーでも同じようなしぐさをするのか…。


「滑稽」を辞書で引くと、

その人の言動に予測を越えた意外性があって、期せずして、その場にいる人の笑いを誘うことになる様子だ(新明解7版)。

 この定義によれば、まず「予測」があって、それにはずれた言動があったときに、「滑稽さ」は生まれるようです。

 すなわち、滑稽さを感じるためには、予測する能力がなければならない。

 ふつうに歩き続けると予測していたのに、石につまずいて転んだ、というように。

 犬やチンパンジーが、つまずく人間を見て笑うかどうか。私には疑問です。

 本能に生きる動物も、危険を回避するために、成り行きを予測しながら行動していると思われますが、それが外れたときに「滑稽だ」と感じるのは人間特有ではないでしょうか。

 笑いにもいろいろありますね。微笑、大笑い、爆笑、哄笑など、笑いの程度や笑い方による分類。あるいは、冷笑、嘲笑、ほくそ笑む、苦笑いなど、ニュアンスによる分類。

 言語を持たない動物は、本能にしたがって行動をする。抽象的思考ができないので、「今、ここ」にしばられながら、刹那的に生きている。将来を考えたり、過去を振り返ったりすることはできない、というような説をどこかで読んだことがあります。

 以前のことを思い出して笑う、「思い出し笑い」は、最も人間的な行動かもしれません。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国便り~空港鉄道 | トップ | ヒト、この不思議なる動物~嘘 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

文化人類学」カテゴリの最新記事