犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

文在寅大統領は北の人権問題を取り上げるべき

2019-09-25 23:28:30 | 韓国雑学
 先に紹介した中央日報の記事を見て、思い出した本があります。

 ノベルト・フォラツェン『北朝鮮を知りすぎた医者 国境からの報告』(草思社、2001.11)です。

 当時の大統領は、金大中。北朝鮮に対して、「太陽政策」を行なっており、日韓間では「教科書問題」が騒がれていました。

 著者のノベルト・フォラツェン氏は、北朝鮮で医療活動をしたことのある医師です。

「ドルに換算するとおよそ三百ドルで買われる美しい北朝鮮の女性。栄養が足りないにもかかわらずまだ働けそうに見える少年。国境地帯の現代の「奴隷市場」は、裕福な中国商人にとって、さしすめパラダイスだ」

「小さな村でひとりの人買いブローカーに会った。彼は大まじめでそれを難民救済と呼び、人道援助者と称していた。注文を受けると,彼は北朝鮮に向かって出発し、お望みの「商品」を探す。たいていは若く美しい女性たちだ。彼女たちは、幸せにぜいたくに暮らせると誘いだされ、夜中に国境を越える。そうでなければ怖くて絶対に越えられなかっただろう。ブローカーは――この男はたまたま北朝鮮から逃げてきたそうだが――国境の役人と顔見知りで、賄賂を使ってぐるになっていることも多い。こうしてひとつの輪が形成されているのだ。そこには地元の警察官、中国の小さな町の酒場の主人やそのほかの有力者などが加わっている。若い女性は売春宿に、少年はベルトコンベヤーの前に。そのうちの何人かは――抵抗したり逃げだそうとしたところを見つかって――ゴミ捨て場に死体となって横たわる」

「ソウルでは数えきれないほどインタビューを受けただけでなく、学校や教会ではさらに多くのスピーチをし、韓国の議会でもスピーチをした――そして、あらたに奇異なことがわかった。それは、この南の兄弟国では北朝鮮の悲惨な状況について本心から関心のある人はだれもいないということだ。とりわけジャーナリストにあまり関心がなかった」

「金大中については次のような噂もある。自分の任期を延ばすために憲法改正までしようとしているのだ。中国政府および北朝鮮の独裁者金正日のすべての人権侵害について沈黙し、それどころかあの非人間的な政治によって人道に関する罪,および国民殺害の罪のあるあの残忍な権力者をソウルに招き、彼とともに第二回目の栄光ある首脳会談を開こうとするこの人物――彼を動かしているのはいったい何なのか? ナイーブさ、愚かさ、打算、それとも太陽政策なのだろうか?」

「一般的に言って、内政で行き詰まると外国との争いに救いを求めるのは、政治の常套手段だ。これはまさに現在の韓国にあてはまる。金大中政権が民主主義の原則をはたして守っているのかという疑い(ストライキをする人たちにたいする警察の対応の仕方、報道の自由、メディア・コンツェルンにたいする税務査察、金剛山プロジェクトにたいする融資などの問題)、ひと言でいえば「太陽政策」全体についての批判が激しくなったため、韓国政府は新たな手に出た。それが,アジアの燐国日本の主観的な歴史教科書に対する批判だ。これは非常に危なっかしい感情的な動きとなり、教科書のみならず経済にまで影響を及ぼしている。それにしても、北朝鮮難民をこれまでわざと無視していた韓国政府が、この教科書問題に関してただちに国連の人権委員会に訴えようとしているのはおかしい」


 北朝鮮の人権問題に無関心なのは、20年前も今も変わらないようです。先にご紹介した記事は、7月末に、脱北した母子が餓死した姿で見つかった事件をきっかけに報道されたようです。

 記事中にある、「コリアフューチャーイニシアチブ」の報告書、「性奴隷:北朝鮮女性の中国内売春とサイバーセックス、強制結婚」は、5月に発表され、そのときにもいくつかの新聞に取り上げられましたが、それっきりになっていました。

 文在寅大統領は、70年も前の植民地時代の糾弾に熱を上げるのではなく、すぐとなりでいまも起こっている人権侵害のほうを問題視すべきです。
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