午前中に新幹線で東京に移動中、韓国語のLINEが入りました。
「東京に来ました。時間のあるとき連絡ください」
去年の10月に、18年振りに再会した、繊維会社の李さんです。
「今、東京に向かっています。今晩どうですか」
「ぜひ会いましょう」
仕事が終わってから、新大久保で待ち合わせました。
3月の終わりに日本に来て、連休明けまで滞在するそうです。今年韓国の高校を卒業した息子さんが、この春から日本に留学するということで、日本の取引先回りの合間に、息子さんの住居を整えたりしているらしい。
入ったのはトンマッコルという韓国料理屋。カムジャタンとチョウムチョロム(韓国焼酎)を頼みました。
「大学ですか」
「いえ、日本語できませんから、まずは日本語学校です。1年か1年半勉強してから大学に入ります」
「韓国の大学は行かないんですか」
「韓国じゃ、ソウル大学出ても延世、高麗を出ても、いい就職はできないんですよ。それなら外国に行かせようと思って」
「で、日本に?」
「息子は日本が大好きなんですよ。今までも、ときどき連れてきたんですけれど、とても気に入っちゃって」
韓国は日本よりも海外留学が盛んです。私が滞在していた頃に海外留学ブームがありましたが、今も続いているのでしょうか。
運ばれてきたカムジャタンは、やや残念な量でした。韓国だったら鍋にうずたかく豚の背骨とジャガイモが積み上げられているのですが、鍋の底が見えるほどスカスカでした。そしてケンニプ(えごまの葉)。韓国では中身が見えないほど、何枚ものケンニプに覆われているのが普通。しかし、たった1枚のケンニプをこまかく切って散らしてある。こんな状態のケンニプは見たことがありません。
「日本だから、仕方がないね」
1本700円(韓国の飲み屋の約2倍)のチャミスルを酌み交わします。
「息子さんは日本で一人暮らし?」
「ええ。でも姉の家のそばです」
李さんのお姉さんは日本人と結婚して東京に住んでいるそうです。
「それなら心配ないね」
焼酎が2本空いたところで席を立ちます。向かい側に同じ名前のバーがあります。店にいたのはアガシ一人。お客さんは私たちだけ。
「日本語上手ですね」
「長いですから」
「何年ですか」
「10年です。父の仕事の都合で日本に来ました」
「日本はいいでしょう?」
李さんが聞きます。
「さあ、ほかの国を知らないから、よくわかりません」
「ずっと日本にいるんですか」
「いえ、そういうつもりはありません。そろそろ韓国に帰りたいです」
これから日本に息子を留学させる人、そろそろ韓国に帰ろうとしている人、いろいろです。
ウイスキーを2杯飲んで、三次へ。
BLUE SKY
新大久保駅の近くのカフェです。ビリアードとダーツがある広い空間で、週末は日韓の若者を集めてパーティー形式になるそうです。
数年前、通っていた時期があったのですが、最近はとんとご無沙汰していました。
「犬鍋さん、久しぶりですね」
男性従業員2人は前のままでした。
相当酔っぱらっていたのですが、まずダーツでは私が勝ち、次のビリヤード(ポケットボール)では李さんが勝ちました。
「きょうは楽しかったです。また飲みましょう」
李さんの家(というか息子さんの家)は東中野なので、新大久保から歩いて帰れるそうです。
「じゃ、また」
ゴールデンウィーク明けまでにもう一回ぐらい機会があるかもしれません。
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