
アントニオ猪木の訃報に接し、子どもの頃の記憶が蘇りました。
私がプロレスに夢中になっていたのは、小学生低学年の頃。
4年半年長の兄といっしょにテレビでよく見ていました。
そのころはプロレス番組がたくさんあったように思います。
ときどきアメリカのプロレスや、女子プロレスなどというのもやっていましたね。
アントニオ猪木は、ジャイアント馬場と並んで日本レスラーのスターでした。
プロレスの技を覚え、兄とプロレスごっこをしたりしました。
もちろん、危険な投げ技はやらず、四の字固めとか、コブラツイストとか、逆エビ固めなどですね。
それぞれのレスラーは得意技を持っていました。
ジャイアント馬場の16文キック、椰子の実割り、大木金太郎の頭突き、サンダー杉山の雷電ドロップ、豊登のさばおり…
あのころの技の名前は日本語が多かったなあ。
アントニオ猪木の得意技はコブラ・ツイスト。あばら折りという日本名もありましたが、コブラ・ツイストが一般的だったようです。その発展形みたいな卍固めというのもありました。
外国レスラーの名前や得意技もよく覚えました。
鉄人ルー・テーズの岩石落とし(バック・ドロップ)、ビル・ロビンソンの人間風車(スープレックス)、覆面レスラー、ザ・デストロイヤーの四の字固め、ブルーノ・サンマルチノの脳天杭打ち(パイル・ドライバー)、ボボ・ブラジルの頭突き(ヘッド・バット)、鉄の爪フリッツ・フォン・エリックのアイアン・クロー…
今でもすらすら出てくるのは、よっぽど夢中になっていたからでしょう。
ある日、兄がすごい秘密を発見したというように教えてくれました。
「プロレスって、うそんきらしいよ」
うそんき(嘘ん気)とは、本気の反対語で、そのころ私の地域の子どもたちの間で使われていた言葉です。
「血が出てるようにみえるのは、血袋っていうのをつぶしてるだけなんだって」
確かに、「本気」のボクシングの場合、防衛戦は年に2~3回なのに、プロレスは毎週やっています。技も、相手の協力なしにかけるのは難しいものが多い。
ロープに飛ばすとなんで正直に戻ってくるのか?
同じ技を繰り返すと、なんで三回目にはかわされるのか?
ボディースラムはなんどやってもダメージがないのに、似たようなブレーンバスターは一発でのびてしまうのはなぜなのか?
子ども心に不思議におもっていました。
「うそんきだったのか…」
私と兄の関心は、一気にプロレスから離れていきました。
兄は「本気」のボクシングにのめりこみ、世界ヘビー級王者のフォアマンが日本で防衛戦をしたときは、見に行きました。
そのフォアマンを破ったモハメド・アリとアントニオ猪木の試合(冒頭写真)では、日本人なのにモハメド・アリを応援していました。
リングに寝転ぶ猪木を見て、
「やっぱりうそんきのプロレスは本気のボクシングには勝てないんだ」
と言っていました。
中学生になると、友だちの中にはプロレスを「ショー」として楽しむ「大人」のプロレスファンもいましたが、私の関心はプロレスに戻りませんでした。
私が韓国関係の仕事を始めてから、猪木が北朝鮮でプロレス興行をやったときは、「よくやるなあ!」と感心しました。
北朝鮮が、プロレスの師の力道山の故郷だったかららしいですね。アントニオ猪木は、17歳のときに移民先のブラジルを訪れた力道山から直接スカウトされて、プロレス界に入ったということです。
故人の冥福をお祈りします。
〈参考〉
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