犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

朴教授、逆転敗訴

2017-11-02 23:09:51 | 慰安婦問題

 『帝国の慰安婦』が元慰安婦の名誉を毀損しているとして訴えられていた朴裕河教授が、刑事裁判の二審で、逆転有罪の判決を受けました。

 以下は10月27日付「京郷新聞」の記事です。(リンク

「自発的売春、虚偽を知りながら摘示」朴裕河二審有罪

・裁判所、『帝国の慰安婦』の名誉毀損認め、罰金1000万ウォンを宣告
・ナヌムの家「一審とは異なり正しい判決」、パク教授「上告する」

 著書『帝国の慰安婦』で、日本軍慰安婦被害者らを「自発的売春」などと表現し、名誉毀損の疑いで裁判にかけられていた朴裕河世宗大教授(60)が、控訴審で有罪判決を受けた。無罪を宣告した一審の判決が覆された。

 ソウル高裁刑事4部(裁判長キム・ムンソク部長判事)は27日、朴教授に罰金1000万ウォンを宣告した。朴教授は『帝国の慰安婦』で「朝鮮人の日本軍慰安婦らは仕事の内容が軍人を相手にする売春であることを知っている状態で、生活のために本人の選択によって慰安婦になり、経済的対価を得て性売買をする売春業に従事した人である」、「慰安婦を誘拐し強制連行したのは、少なくとも朝鮮の地では、そして公的には日本軍ではなかった」とも表現した。

 1月、一審は書籍の全体的な趣旨が価値判断の領域であり、刑事罰の対象でないとして無罪を宣告した。また、一部は朴教授の意見表明に過ぎず、一部は個人ではなく慰安婦という集団に対する内容であり名誉毀損ではないとした。

 しかし、控訴審で裁判所は、問題になった記述は、朴教授の単純な意見表明ではなく、朴教授自らも虚偽であることを知りながら摘示したものと判断した。裁判所は、国連人権委員会特別報告官の1996年の報告書や国際法律家協会の1994年の報告書などを根拠に挙げた。これらの報告書には、慰安婦被害者らが自らの意思に反して連れて行かれ、日本軍が主導的に制御したという内容が含まれている。また、民間業者が運営する慰安所もあったが、許可や管理は日本軍が行ったという内容もある。裁判所は「これらの報告書に含まれている事実は、客観的な国際機構で専門家によって膨大な資料と証言を収集・検討した末に認定したものであり、現時点で慰安婦に関する最も正確なもの」とし、「『帝国の慰安婦』に記述された内容が客観的事実と異なることは明らかだ」とした。

 特に裁判所は、この報告書の内容は日本自身も認めたものであることを強調した。日本の河野洋平官房長官は、1993年8月に発表した談話で、「(慰安婦に)旧日本軍が直接的または間接的に関与した」とし、「当時、韓半島は日本の統治下にあったため(慰安婦の)募集・移送・管理なども総体的に本人の意思に反して行われた」と述べた。ただし、裁判所は、「学界で議論によって解決されるべき事案が裁判官の刑事罰によって判断されるのは望ましくない」として、実刑ではなく罰金1000万ウォンを宣告した理由を明らかにした。

 慰安婦ハルモニたちを支援しているナヌムの家のアン・シングォン所長は、「ハルモニたちが一審判決によって大変傷ついたが、控訴審で正しい判決が出た」、「憲法上の表現の自由とは別にハルモニたちの人格権を朴教授が故意に侵害したということが認められた」と述べた。朴教授は「不当で先入観だけで判断した判決」として、最高裁に上告することを明らかにした。

 二審の判決文を読んでいませんが、一審判決がたいへん緻密な名判決(リンク)だったので、それが覆されたとは意外です。

 こちらのハンギョレの記事(リンク、日本語版)を読むと、一審の無罪の論拠である3点、すなわち大部分が意見表明であり事実摘示ではない、事実摘示の場合も慰安婦の名誉を傷つけていない、または慰安婦が特定されていない、名誉毀損の故意は認められない、について、すべて覆しているようです。

 この判決に対し、『帝国の慰安婦』の日本版の版元でもある朝日新聞は、10月31日の社説で批判しました。(リンク

 研究の対象である史実をめぐり公権力が独自に真否を断じるのは尋常ではない。

 一審は、大半の記述について著者の意見にすぎないとして、無罪としていた。高裁は一転、有罪としながら、学問や表現の自由は萎縮させてはならないと指摘したが、筋が通らない。

 学問の自由が守られるべき研究の領域に踏み込んで刑事罰を決める司法を前に、学者や市民が萎縮しないはずがない。

 朝日の社説の言う通りだと思います。現政権(文在寅)の顔色を窺った判決である疑いが濃厚です。

 朴教授もさっそく反論を書いています。(リンク

 最高裁に上告する朴教授は、法廷闘争から当分の間解放されないようです。やりきれない気持ちは察してあまりありますが、なんとか最高裁で逆転無罪を勝ち取ってもらいたいものです。


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