駅伝の中継の中で,
「○○選手は一般入試で入った選手ですが,地道な努力で出場を勝ち取りました」
という解説をたびたび耳にしました。
(「スポーツ推薦」で入るのが普通なんだ)
年末から新年にかけて,朝鮮日報日本語版で「部活と学業」という連載記事が,翻訳,掲載されています。
12月29日
部活と学業:韓国の高校運動部、合宿所の実態とは
部活と学業:スター選手たちの一言
12月30日
部活と学業:スポーツ部所属は全体の1%、10万2899人
部活と学業:勉強禁止!? 練習漬けの子供たち
新年に入ってからの続きがありますが,省略。
朝鮮日報の記事は,1週間で消えてしまう(有料化)ので,要約しておくと…
部活と学業:韓国の高校運動部、合宿所の実態とは(12月29日)
サッカー部員の教室は一般の生徒たちとは別だった。黒板や机は長い間使用していないことが一目で分かった。掲示板には授業の時間割も連絡事項もない。
サッカー部員はグラウンドと合宿所を行き来するだけの生活をしている。練習時間は1日4時間ほど。しかし授業には出ない。選手たちは「練習のため授業は抜けて当然」と考えている。練習がない日にも、勉強には関心がない。毎日の練習と試合への参加による疲労を癒すためには、ゆっくりと休んだ方が競技力向上のためにプラスになると考えているからだ。
「テストの結果について先生や親から何か言われたことはない。ただ受ければいいだけだ」
全国各地から集まった選手たちは3カ月に1回は自宅に戻る。
「一般の生徒たちはスポーツ選手は頭がよくないという偏見を持っている。久しぶりに地元の友人に会っても気まずいだけだ」
「サッカーで成功できなければ何もできない人間になるのでは」と考えると恐ろしくなるという。
部活と学業:スター選手たちの一言(12月29日)
卓球の金メダリスト,プロ野球,サッカー,バスケット選手,監督,解説者などへのインタビュー。
「自分の周りには勉強に力を入れていた友人はいなかった」
「英語や日本語を勉強したいが、勉強の習慣がないので簡単ではない」
「引退後にサッカーの研修で英国に行ったが、英語ができなくて苦労した。後輩たちには早い時期に人生設計を立て、必要な勉強は必ずやっておくよう助言したい」
「現役時代はバスケットボールのことしか考えていなかった。社会に出て「井の中の蛙」だったことが分かった」
「娘にはスポーツをさせたくない」
「中学時代はテストのたびにカンニングばかりしていた。運動部に所属していれば、それも許されると思っていた」
「韓国ではスポーツ選手はスポーツばかり、一般の学生には座って勉強ばかりさせている」
「スポーツが人生のさまざまな選択肢を奪っている」
「子供たちをスポーツの機械へと作り上げている」
「スポーツばかりやってきた子供たちは、その後の人生で必ず壁にぶつかる。授業と練習をバランスよくさせなければ、本当にいい選手は育たない」
部活と学業:スポーツ部所属は全体の1%(12月30日)
2007年末,大韓体育会に登録されている学生スポーツ選手(小・中・高・大)は10万2899人で学生総数の約1%。サッカー部が最も多く約2万3千人。以下,テコンドー、野球、陸上の順。
1986年のアジア大会,88年のソウル五輪を契機に、国家レベルでスポーツに力を入れて以来,スポーツ選手が勉強する機会はほぼ失われ、今に至るまで続いている。
「学生選手の90%が社会生活に必要な最低限の知的レベルも満たしていない」
学生選手が暮らす合宿所は全国から生徒の住居のために設けられたが、「運動のための機械」を作る施設に変質してしまったという非難が相次いでいる。
選手たちは
「合宿所は軍隊と変らない」
「合宿所で勉強すると変わり者扱いされる」
などと語る。
小学校では2003年の天安小学校サッカー部合宿所の火災事故以来、合宿所の数が約8割減少し,午前中には授業が行われているが,中学校や高校の合宿所はあまり変わっていない。
部活と学業:勉強禁止!? 練習漬けの子供たち(12月30日)
ある高校サッカー部の合宿所に2泊3日し,生活を共にして取材した。選手たちのほとんどは「今年3月に新学期が始まってから、授業に参加したのは全部で2週間ほど」と口をそろえる。
午前と午後の2時間ずつ行われる練習以外は自由時間。共同の部屋でテレビを見たり、ゲームや花札をしたり,売店などで時間をつぶす。
「小学校を卒業してから、いつまともに鉛筆を持ったのか、覚えてもいない」
サッカー部員は、学内ではまさに異邦人だ。一般の生徒たちとは教室も昼食時間も異なる。担任教師の名前を正確に覚えていたのはわずか二人だった。選手たちはもちろん、学校当局も彼らの勉学にはさほど神経を使わない。運動部員は生徒である前に選手であり、勉学は完全に後回しだ。
部費は1カ月に40万ウォン。ある母親は、
「ほかの学校の選手たちは皆練習ばかりしている。うちの子だけが勉強して(試合で大学に行けるだけの成績が出ず結果的に)、大学に行けなくなったらどうするのか」
と語る。
今年初め全国に1380人いた高校3年生のサッカー選手のうち647人が大学に進学し、わずか30人だけがプロや実業団チームへと進んだ。大学のサッカー選手287人の中で、プロや実業団に入れたのは160人。
ある高校生は、「将来どうなるか分からないため、今からでも勉強したいという思いはある。しかし小学校の時から何もしてこなかったので、今はどうしようもない。練習に専念するしかない」と不安な心境を語った。
韓国は2008年の北京五輪で金メダル13個を獲得し、総合7位となった。02年の韓日ワールドカップでは4強にまで進出したスポーツ強国だ。しかし選手たちを育成する環境はあまりにも劣悪だ。
学校外で個人的にトレーニングを行うしかない不人気種目のあるジュニア代表選手は、
「今年学校に行ったのは全部で2週間ほど。英語を勉強したいと思っているが、厳しい練習が終わってから本を読む気力はない」
と語った。
高校3年生でバドミントンのユース代表となったある選手は
「練習が終わって家に帰ると夜9時。疲れて何をする気力も出てこない。学校でも午前中は寝てばかりだ」。
大会が近づくと、1カ月前から午前中の授業にも出ず練習だけするという。
この問題に関しては,当ブログでもとりあげたことがあります。(韓国の高校野球)
国威発揚のためにスポーツを利用してきたツケがこのような形で表れているわけですが,これも韓国が真の先進国になるための過渡的現象かもしれません。
私が韓国にいるときに,学生時代を「サッカー選手」として送ってきて,結局プロに進めず,社会に出て基礎的な学力がないために路頭に迷い,小学生が通う塾にやってきた28歳の青年に出会ったことがあります。
彼は数カ月間、小学生の隣で,黙々と簡単な計算問題をやっていましたが,
「勉強がこんなに面白いものだとは知らなかった」
と言ったときのすがすがしい表情が忘れられません。
続きの連載の中で,日本や米国,ドイツはそんなことはない,というふうに紹介されていましたが,実態はどうなんでしょう。
中学までは義務教育だから授業に出ないということはないでしょうが,高校や大学のスポーツ推薦の学生が学業よりも「練習優先」なのは,韓国と五十歩百歩なのではないでしょうか。
「○○選手は一般入試で入った選手ですが,地道な努力で出場を勝ち取りました」
という解説をたびたび耳にしました。
(「スポーツ推薦」で入るのが普通なんだ)
年末から新年にかけて,朝鮮日報日本語版で「部活と学業」という連載記事が,翻訳,掲載されています。
12月29日
部活と学業:韓国の高校運動部、合宿所の実態とは
部活と学業:スター選手たちの一言
12月30日
部活と学業:スポーツ部所属は全体の1%、10万2899人
部活と学業:勉強禁止!? 練習漬けの子供たち
新年に入ってからの続きがありますが,省略。
朝鮮日報の記事は,1週間で消えてしまう(有料化)ので,要約しておくと…
部活と学業:韓国の高校運動部、合宿所の実態とは(12月29日)
サッカー部員の教室は一般の生徒たちとは別だった。黒板や机は長い間使用していないことが一目で分かった。掲示板には授業の時間割も連絡事項もない。
サッカー部員はグラウンドと合宿所を行き来するだけの生活をしている。練習時間は1日4時間ほど。しかし授業には出ない。選手たちは「練習のため授業は抜けて当然」と考えている。練習がない日にも、勉強には関心がない。毎日の練習と試合への参加による疲労を癒すためには、ゆっくりと休んだ方が競技力向上のためにプラスになると考えているからだ。
「テストの結果について先生や親から何か言われたことはない。ただ受ければいいだけだ」
全国各地から集まった選手たちは3カ月に1回は自宅に戻る。
「一般の生徒たちはスポーツ選手は頭がよくないという偏見を持っている。久しぶりに地元の友人に会っても気まずいだけだ」
「サッカーで成功できなければ何もできない人間になるのでは」と考えると恐ろしくなるという。
部活と学業:スター選手たちの一言(12月29日)
卓球の金メダリスト,プロ野球,サッカー,バスケット選手,監督,解説者などへのインタビュー。
「自分の周りには勉強に力を入れていた友人はいなかった」
「英語や日本語を勉強したいが、勉強の習慣がないので簡単ではない」
「引退後にサッカーの研修で英国に行ったが、英語ができなくて苦労した。後輩たちには早い時期に人生設計を立て、必要な勉強は必ずやっておくよう助言したい」
「現役時代はバスケットボールのことしか考えていなかった。社会に出て「井の中の蛙」だったことが分かった」
「娘にはスポーツをさせたくない」
「中学時代はテストのたびにカンニングばかりしていた。運動部に所属していれば、それも許されると思っていた」
「韓国ではスポーツ選手はスポーツばかり、一般の学生には座って勉強ばかりさせている」
「スポーツが人生のさまざまな選択肢を奪っている」
「子供たちをスポーツの機械へと作り上げている」
「スポーツばかりやってきた子供たちは、その後の人生で必ず壁にぶつかる。授業と練習をバランスよくさせなければ、本当にいい選手は育たない」
部活と学業:スポーツ部所属は全体の1%(12月30日)
2007年末,大韓体育会に登録されている学生スポーツ選手(小・中・高・大)は10万2899人で学生総数の約1%。サッカー部が最も多く約2万3千人。以下,テコンドー、野球、陸上の順。
1986年のアジア大会,88年のソウル五輪を契機に、国家レベルでスポーツに力を入れて以来,スポーツ選手が勉強する機会はほぼ失われ、今に至るまで続いている。
「学生選手の90%が社会生活に必要な最低限の知的レベルも満たしていない」
学生選手が暮らす合宿所は全国から生徒の住居のために設けられたが、「運動のための機械」を作る施設に変質してしまったという非難が相次いでいる。
選手たちは
「合宿所は軍隊と変らない」
「合宿所で勉強すると変わり者扱いされる」
などと語る。
小学校では2003年の天安小学校サッカー部合宿所の火災事故以来、合宿所の数が約8割減少し,午前中には授業が行われているが,中学校や高校の合宿所はあまり変わっていない。
部活と学業:勉強禁止!? 練習漬けの子供たち(12月30日)
ある高校サッカー部の合宿所に2泊3日し,生活を共にして取材した。選手たちのほとんどは「今年3月に新学期が始まってから、授業に参加したのは全部で2週間ほど」と口をそろえる。
午前と午後の2時間ずつ行われる練習以外は自由時間。共同の部屋でテレビを見たり、ゲームや花札をしたり,売店などで時間をつぶす。
「小学校を卒業してから、いつまともに鉛筆を持ったのか、覚えてもいない」
サッカー部員は、学内ではまさに異邦人だ。一般の生徒たちとは教室も昼食時間も異なる。担任教師の名前を正確に覚えていたのはわずか二人だった。選手たちはもちろん、学校当局も彼らの勉学にはさほど神経を使わない。運動部員は生徒である前に選手であり、勉学は完全に後回しだ。
部費は1カ月に40万ウォン。ある母親は、
「ほかの学校の選手たちは皆練習ばかりしている。うちの子だけが勉強して(試合で大学に行けるだけの成績が出ず結果的に)、大学に行けなくなったらどうするのか」
と語る。
今年初め全国に1380人いた高校3年生のサッカー選手のうち647人が大学に進学し、わずか30人だけがプロや実業団チームへと進んだ。大学のサッカー選手287人の中で、プロや実業団に入れたのは160人。
ある高校生は、「将来どうなるか分からないため、今からでも勉強したいという思いはある。しかし小学校の時から何もしてこなかったので、今はどうしようもない。練習に専念するしかない」と不安な心境を語った。
韓国は2008年の北京五輪で金メダル13個を獲得し、総合7位となった。02年の韓日ワールドカップでは4強にまで進出したスポーツ強国だ。しかし選手たちを育成する環境はあまりにも劣悪だ。
学校外で個人的にトレーニングを行うしかない不人気種目のあるジュニア代表選手は、
「今年学校に行ったのは全部で2週間ほど。英語を勉強したいと思っているが、厳しい練習が終わってから本を読む気力はない」
と語った。
高校3年生でバドミントンのユース代表となったある選手は
「練習が終わって家に帰ると夜9時。疲れて何をする気力も出てこない。学校でも午前中は寝てばかりだ」。
大会が近づくと、1カ月前から午前中の授業にも出ず練習だけするという。
この問題に関しては,当ブログでもとりあげたことがあります。(韓国の高校野球)
国威発揚のためにスポーツを利用してきたツケがこのような形で表れているわけですが,これも韓国が真の先進国になるための過渡的現象かもしれません。
私が韓国にいるときに,学生時代を「サッカー選手」として送ってきて,結局プロに進めず,社会に出て基礎的な学力がないために路頭に迷い,小学生が通う塾にやってきた28歳の青年に出会ったことがあります。
彼は数カ月間、小学生の隣で,黙々と簡単な計算問題をやっていましたが,
「勉強がこんなに面白いものだとは知らなかった」
と言ったときのすがすがしい表情が忘れられません。
続きの連載の中で,日本や米国,ドイツはそんなことはない,というふうに紹介されていましたが,実態はどうなんでしょう。
中学までは義務教育だから授業に出ないということはないでしょうが,高校や大学のスポーツ推薦の学生が学業よりも「練習優先」なのは,韓国と五十歩百歩なのではないでしょうか。
「勉強がこんなに面白いものだとは知らなかった」
と言ったときのすがすがしい表情が忘れられません。」
ここのところ感動しました。^^
今年もよろしくお願いします。
では旧正月にソウルでお目にかかりましょう。
ソウルでお会いできるのを楽しみにしています。