夜の鶏

まだ二十代のころ、タイ北部の田舎町に泊まったとき、屋台の焼き鳥を食べた。
明かりも少ない薄暗い道端に炭火の炎が煌々と燃え、香ばしい煙が立ち上る。
モモ肉手羽にと大雑把に分解された鶏が、大きな皿にのって運ばれてくる。滴る肉汁。皮の焼けた香りが鼻の奥を占拠する。
私は無心にかぶり付き、骨をしゃぶって小さな肉の筋までこそげとる。
「君はもう鶏を一羽平らげたぞ」
そう言われるほどに鶏肉が好物だ。

昨晩、知人に教えてもらって出かけた店は、そんな私の胸をざわめかせてくれた。店名をGNSP。グレートにくスペシャルというこの店の店のトップメニューが【ひな丸香味焼き】なのでした。
宮崎の雛鳥を30分かけて焼き上げた鶏は、後輩がナイフを入れると、肉汁がシミだし湯気が立ち上りました。色もこんがり、気のおけないメンバーとの食事会
で、食欲の鬼と化すわたしでした。