net news NHK受信契約は合憲、次の争点は「ネット配信の受信料」へ (ダイヤモンド・オンライン 北条マサ子 2018/03/14)~支払わないユーザー全員に支払いを求める裁判は、無理と思うけど。
昨年12月、NHK受信契約の義務規定に関する裁判で、最高裁が初めて「合憲」の判断を下した。今まで「テレビは持っているけど、NHKは見ていない」など、様々な言い分で受信料の支払いを逃れていた人たちに対しても、「絶対に受信料を支払わなければならない」と最高裁が認めたのだ。これは一般市民にとって、どのくらい重要な出来事なのだろうか。(清談社 北条マサ子)
テレビを持っている人は必ず受信料を払わなければならない
ことの発端は2006年。自宅にテレビを設置した男性に対して、NHKが受信契約を結ぶよう求めたところ、男性がこれを拒否。同年9月にNHKが支払いを求めて訴訟を起こした。その後、11年に裁判が始まり、およそ6年かけて争われた結果、今回の判決に至った。
判決は国民全員に関係があるだけに、具体的に何が決まったのかは気になるところ。弁護士の高畑富大氏に話を聞いた。
「もちろん、今回の判決は、国民全員に関係があります。元々、放送法において、テレビを持っている人はNHKとの間で受信についての契約をすることが義務付けられていました。今回の争点は、その義務が“強制力を持つのか”というところです。被告人男性の訴えは、『放送法の規定は確かにあるけれど、それは強制するような効果を持つものではない』といったことでした。それに対し最高裁は、“法的な効力がある”と判断しました」(高畑弁護士、以下同)
夫婦別姓制度や、非嫡出子の相続問題などの憲法訴訟と同様に、NHKの受信料というのは、全国民に影響のあるもの。だからこそ、ここまで大きく報道されたのだ。
ワンセグ携帯は受信設備?判断はいまだに分かれたまま
また、今回の裁判では、いつから契約が発生するのかという問題も争われた。NHK側は、『NHKが契約者に対し、申し込んだ時点で契約は成立する』と訴えたが、これに対し最高裁は、『申し込みと承諾が必要』と判断したというが、これはどういうことなのだろうか。
「簡単に言うと、テレビなど受信設備を持っている人が承諾した時点で、はじめて契約が成立するということです。これだけなら今までと変わらないのですが、判決が出たことによって、今後は支払いを拒否する人に対してNHK側は勝訴の確定判決を得ることで、契約を成立させることができるようになりました。受信設備を持っている人は、恐らく争いようがないでしょう。受信設備を設置した月以降の受信料を支払うことが決定されます」
今回の裁判で、被告人男性がNHKから、06年のからの受信料を請求されたのは、この考えに基づくもの。一方で、最高裁は「NHKは受信契約の締結に理解が得られるように努めることが望ましい」という趣旨のことも言っている。つまり、契約に応じてもらえなければ即訴訟、という強硬手段ではなく、ちゃんと話し合えということだ。まだ当面は、NHKがむやみに訴訟を起こすことはないだろうと言える。
ただし、これですべてが決まったわけではない。放送法に関してはまだ曖昧な部分が多々あると高畑氏は言う。
「たとえば、ワンセグケータイが、放送法でいう受信設備の設置にあたるのかということについては、いまだに裁判例が分かれています。水戸地裁、千葉地裁松戸支部などはいずれもワンセグにも支払い義務を認めていますが、埼玉地裁では違った判断が出されています。このあたりも今後明確になっていくのではないでしょうか。そのほかのスマホやパソコンも、テレビを受信できる状態になっていれば、ワンセグケータイと同様な問題が生じるでしょう」
今後の争点はスマホとパソコン
加えて、NHKは19年からネットでの番組配信を検討しており、受信料を取ろうと考えている。
「ネットに接続できる端末を持っている人からも、受信料を徴収したいという案です。ネットでの配信はテレビの放送とは事情が異なるので、今回の判決がそのまま妥当するとは思えませんので、この点は大いに争われるでしょう。
また、実際にNHKが受信料支払いの訴訟を起こしたとしても、スムーズに確定判決が出るかは疑問だそうだ。
「消費者側が『テレビがない』と言い張った場合、NHK側がテレビがあることを証明することが果たしてできるのかという問題があります。簡単そうに聞こえますが、室内に勝手に入るわけにもいかないですし、テレビがあることを立証しろというのは案外難しい。手間がかかるはずです。現実的にどうやっていくのかは、これからの課題だと思います」
いずれにしても受信料の支払いは義務化された。訴訟の面ではまだ詰めるべきことがあるようだが、受信設備を持っている以上、受信料の支払いは絶対である。