8月6日午前10時、韓国の首都・ソウルの中心部にある中区の通りには、「NO BOYCOTT JAPAN、行きません。買いません」と、「反日」を謳った大型の旗が掲げられた。中区といえば、ソウル市庁と韓国の大手新聞社が密集している光化門(クァンファムン)、そして観光客で賑わう明洞(ミョンドン)などを含む、まさに韓国の心臓部である。
中区庁のソ・ヤンホ区長(共に民主党所属)は、「中区はソウルの中心で、多くの外国人観光客が行き交う地域だ。全世界に向けて日本の不当さとわれわれの強い意志を見せたい」と意気込んでみせた。
すぐに撤去れた「ボイコット・ジャパン」旗
しかし、この旗はわずか4時間後には地域の商店主たちと韓国国民からの強い抗議を受けて撤去される羽目となった。韓国メディアのインタビューに応じた明洞の商店主は「2週間前から、日本人観光客が半分に減った」「このような状況で反日旗を掲げるなんて、区役所が狂ったとしか思えない」という激しい反応を見せている。
韓国メディアもソ区長の行為を「軽率」と非難した。「国民が自発的に繰り広げているボイコット·ジャパン運動が『官制不買運動』と受け取られる恐れもある」という指摘もあった。
中にはこんな指摘もあった。中区に揚げられた「NO BOYCOTT JAPAN」旗が日本製のプリンタで印刷されたものだ、というのだ。タブロイド週刊誌「日曜新聞」のネット版は、中区関係者の言葉を引用し、「中区が掲げた1100本ものノー・ジャパン旗と太極旗は『バリュージェット』という日本製の印刷機で製作された」と明かした。
バリュージェットは日本の代表的な大型プリンタメーカー武藤工業の製品で、「垂れ幕などの印刷に使われる武藤工業製品を代替できる印刷機は事実上ない、というのが印刷業者の主張だ」と、日曜新聞は報じた。
「日曜新聞」は、「中区庁が地域住民の血税の250万ウォンをかけて、たったの半日で終わってしまうハプニングを演出した」と非難し、釈明を聞くために、中区庁を訪問したが、「区長は休暇中」という回答を得ただけだったと伝えている。
「このボールペンは国産です。これでニュースを終わります」
韓国の異常な「反日」はメディアにも飛び火している。8月4日、公営放送局のKBSは、メインニュースの異例のクロージング・コメントによってネット上の議論を巻き起こした。
「放送中に、私が持っているこのボールペンが日本製ではないかという視聴者の抗議の電話がありました。日本に対する韓国国民の怒りがどれほど大きいかが実感できます。このボールペンは国産です。これで、9時のニュースを終わります。ありがとうございます」
国民の間に蔓延する「反日感情」に寄り添ったつもりでの発言だったのだろう。しかし、このコメントに対する韓国のネットユーザーの反応は意外と冷たかった。
「ボールペンは日本製ではないと伝えるアンカーを撮っているカメラこそがまさに日本製ではないか!」
「そう言うのなら、放送用カメラやスチールカメラはソニーやニコンという日本製だ。全部捨てて国産に替えたらどうだ?」
「そのボールペンの先についているベアリングは日本製だ」
「公営放送が反日運動を煽るクロージングとは! 国の面子が立たない。情けない」
KBS放送局内で民主労総傘下の言論労組と対立している公営労組(第2労組)も非難声明を発表した。
彼らは、「普通、クロージング・コメントはキャスターがあらかじめ準備しておくもので、自分のボールペンは日本製ではないと説明したこの日のコメントは、あらかじめ準備したショーとみられる」「軽率な扇動的報道になりかねない」「そのような論理なら、(KBS)放送局には高価な日本製機材(カメラや編集機など)が多いという事実は、なぜ明らかにしないのか」「無分別な反日報道は韓日どちらにも役に立たない」「すぐに反日扇動報道を取りやめ、客観的で公正な報道をするべきだ」と非難した。
日本車を所有する政権幹部のリスト
最近、韓国メディアでは日本車を保有している文在寅(ムン・ジェイン)大統領府と政府の主要人物のリストが公開された。
リストによると、文在寅政権の核心関係者50人余りが、トヨタなどの日本車を所有しており、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は、夫の名義でホンダ車を保有している。リストを報じたネット紙の「スペシャル経済」は、『ネロナンブル(ダブルスタンダード)の極致』という見出しを使って、文政権に毒舌を飛ばした。
この他にも、7月には日本製品不買を訴える「NO NO JAPAN」サイトの運営者が高価な日本製キーボードを使用していることが判明し、ネットユーザーから非難を浴びた。また、反日世論の急先鋒に立っている政府寄りの放送局JTBCが、実はTV朝日や講談社が株主に名を連ねている会社であることも議論を呼んでいる。
韓国の独立記念日の8月15日を控え、さらに猛威を増していくボイコットジャパン運動。しかし、熱気が高ぶれば高ぶるほど、韓国国民は日本製品が韓国社会にどれほど深く浸透しているのかを切実に感じてしまうという矛盾が生じている。