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マイルス・デイヴィスの甘い罠、『Steamin’』

先日、またいつも立ち寄るレコード店タチバナさんで、マイルス・デイヴィス・クインテットのアルバム『Steamin’』を購入して聴いてみたが、とても魅力的なアルバムであった。ジャケットも、たばこの火を付けるマイルスの写真で結構カッコいい。

このアルバムは“マラソンセッション”によって録音されたものとして有名。“マラソンセッション”とは、1956年にマイルス・デイヴィスクインテットが行った2日間のレコーディングセッションのことで、その音源は4枚のアルバムとしてリリースされた。その4枚のアルバムとは、『Cookin’』、『Relaxin’』、『Workin’』、そしてこの『Steamin’』だが、これらはそのタイトルから”ing4部作”と呼ばれ、ジャズファンの間では良く知られているようだ。

人気絶頂だったマイルスがレコード会社を移籍する前、移籍元のレコード会社との契約が残っていた為、この4枚は言わば“契約消化アルバム”とも言えるもので、プリンスなどもその後レコード会社移籍の際に同じようなことをやっていたが、消化アルバムだからと言って決して手を抜いているわけではなく、逆にこの4枚はマイルスの絶頂期を代表する4枚となり、この過程で一緒にクインテットで演奏していたジョン・コルトレーンが進化したタイミングとも重なり、ジャズファンの間では人気の高い4枚のアルバムなのである。

どのアルバムも1956年に2日間の一発取りでレコーディングされたものだが、その完成度はとても高いと言われている。『Steamin’』に収録されているのは下記6曲。

  • Surrey With The Fringe On Top
  • Salt Peanuts
  • Something I Dreamed Last Night
  • Diane
  • Well You Needn’t
  • When I Fall In Love

僕も素人ながら、この『Steamin’』を聴いたのだが、軽快でオシャレな曲調で始まる1曲目から掴みはOK、マイルスのトランペットに魅了されていく。この曲はかなりスタンダードジャズに近い雰囲気が漂う。一転して、2曲目は激しいドラムとトランペットの応酬で、その後見事なピアノや、トランペットが更に畳みかけていく。まるでニューヨークのジャズバーにでもいるような空気感が何ともオシャレである。そしてまたまた一転して、3曲目は甘いバラード。男女が恋を語らい合うようで、泣きのトランペットが切なく響く。

4曲目の『Diane』は、また洗練されたオシャレなサウンド。軽快でアルバムの中でも一番都会的なサウンドだ。5曲目は重厚感のあるトランペットが特徴的で、スケール感を感じさせてくれる。そして締めはまた甘いバラードで、有名な『When I Fall In Love』。元々ドリス・デイが歌っていたらしいが、ナット・キング・コールが歌ったバージョンが特に有名だろう。実に多くのアーティストにカバーされ続けている定番の名曲バラードである。

この通り、全6曲が収録された『Steamin’』は実に多彩な楽曲で構成されており、リスナーを全く飽きさせない内容。だから聴いていて耳障りがいいし、何とも心地いいのかもしれない。また、マイルス・デイヴィスのトランペットの音色も変化が楽しめ、とても聴きやすいアルバムとなっている。そしてやはり、このアルバムもレコードでじっくり家で聴きたい、そんなアルバムである。

1956年に行われた“マラソンセッション”の全貌を体感する為、これから他の3枚もぜひじっくりレコードで味わいながら聴いて行きたいと思う。

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