今月は、よく映画館に足を運んだ。そして、今日はちょっと毒を吐く・・・。
第二のソフィア・コッポラと言われている(らしい)、若手女性映画監督ゾエ・カサヴェテスのデビュー作 『ブロークン・イングリッシュ』。
俳優として 『ローズマリーの赤ちゃん』 に出演し、インディペンデント映画というジャンルを確立した映画監督、ジョン・カサヴェテスの娘である。母親は女優のジーナ・ローランズ、兄も俳優で、『きみに読む物語』 の監督をしたニック・カサヴェテス。母親は、夫・息子・娘のそれぞれの作品に出演している。
ニューヨークとパリを舞台に、30代独身女性の揺れる感情を、リアルかつロマンチックに描いたラブ・ストーリーという振れ込みだった。ニューヨークとパリ、どちらも行ったことのある好きな街だったので、このふたつの街の風景が観れるということの方に興味を持ち、観たのだが・・・。
結論から言うと、ソフィア・コッポラの足元にも及ばないと思った。比べること自体、ソフィアに失礼だ。個人的な意見だが、ただ単に若手女性ということと、監督・俳優一家の血を引いているという環境が一緒なだけで、“第二の・・・” と言われているだけだと思った。
ニューヨークに住む30代独身女性ノラ。それなりに不満はあるものの、安定した仕事に就き、友達との食事やヨガ通いなども楽しみ、自立して生活している。
親友は自分が紹介した男性と結婚し、そのことで母親に皮肉られ、一夜を共に過ごした男性には恋人がいて、母親が引き合わせた男性は失恋を引きずっていて、恋愛に関しては結局どれもうまく行かない。
愛する人、愛される人がいなくて、恋愛に対して臆病になって行く一方。そのためストレスが溜まり、情緒不安定にまでなって行く。
そんな時、同僚のホーム・パーティで、優しくて情熱的なフランス人男性ジュリアンに出会い、お互いに惹かれ合って行く。
これまでの経験から弱気になるノラとは対象的に、ジュリアンはどんどんアプローチしてくる。“一緒にパリに行こう” というジュリアンの誘いに、自分に素直になれないノラは断ってしまい、やがてジュリアンは電話番号のメモだけを残して、パリに帰ってしまう。
ひとりになったノラは、いつものように親友とヨガに行ったり、ネイル・サロンに行ったりの日々を送るが、ジュリアンのことが気になり、結局行動派の親友と一緒に彼を探しにパリに行く。
しかし、ジュリアンの電話番号のメモを無くし、あてもなく彼を探すが見つかりっこない。親友は夫と問題を抱えていたが、パリに来たことで考え直すことができ、夫とやり直す決心をして帰国するが、ノラはそのまま残る。ノラとジュリアンは、再び出会うことができるのか・・・。
とまあ、結末は伏せておくが、同じ女性として所々で共感できる部分は少しあったものの、チープでありふれたストーリー展開で、不自然さが目立った。
例えば、パリに行くことになるくだり。普通は、行く前に電話をするだろう。もし自分の気持ちを相手に悟られたくないのなら、“久しぶり、元気?” だけでもいい。その時は、パリに行くと言わず、電話番号を確かめるだけでいいのだから。ビックリさせたいから、という気持ちがあるのなら、パリに行ってから連絡をするだろう。しかし、ノラは電話番号のメモを無くしてしまう。そして、それで終ってしまうのだ。
そもそも、ジュリアンとの出会いは同僚のパーティ。確かその同僚がフランスに留学していたときに、ジュリアンの家にホーム・ステイしていたと言っていた。なら、住所もわかるだろうに。メモを無くしたあと、その同僚に電話しているが、留守電だったと言っている。いや、それで終らないでしょ、普通は・・・。
ニューヨークにいるのなら少しは諦めるかも知れないが、パリにまで来ているのだから、話が出来るまで電話するし、電話が欲しいとメッセージを残すのも当たり前のこと。
ジュリアンが、電話番号だけ残して行ったっていうのも不自然。現代の話なんだから、メール・アドレスも教えるのではないか。音響の仕事をしているジュリアンに、インターネット環境がないとは思えない。
これらは皆、演出だ、映画だからと言われるとそれまでだが、等身大の女性をリアルに描くと言うのなら、もっと現実的に描いても良いと思う。ノラの人物像も、どこか中途半端だったし、ジュリアンの背景もほとんど描かれていなかった。
あと、誰もが予想できるラストの展開。最後の最後に、“ありきたり” の波がどっと押し寄せた。ロマンチックだとは、私には到底思えなかった。
辛口なことばかりだが、つまらなくて寝てしまうほどではなかったのは、ニューヨークとパリの風景が紛らしてくれたので、淡々と観ていられたという感じ。
そしてこの映画は、男性が観ると絶対につまらないだろう。
ノラのファッションは可愛かったが、ドレア・ド・マッテオ演じる親友のキャラクターの方が、ノラよりもインパクトがあった。
ジュリアン役のフランス人俳優メルヴィル・プポーは、なかなかイイ男。彼は兄弟でバンドを組み、ソロ・アルバムも出しているミュージシャンらしい。
ケイト・ハドソン主演の2003年作 『ル・ディヴォース~パリに恋して~』 に、ナオミ・ワッツの夫役として出演している。