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『ブロークン・イングリッシュ』

2009-01-30 | cinema & drama


今月は、よく映画館に足を運んだ。そして、今日はちょっと毒を吐く・・・。

第二のソフィア・コッポラと言われている(らしい)、若手女性映画監督ゾエ・カサヴェテスのデビュー作 『ブロークン・イングリッシュ』。
俳優として 『ローズマリーの赤ちゃん』 に出演し、インディペンデント映画というジャンルを確立した映画監督、ジョン・カサヴェテスの娘である。母親は女優のジーナ・ローランズ、兄も俳優で、『きみに読む物語』 の監督をしたニック・カサヴェテス。母親は、夫・息子・娘のそれぞれの作品に出演している。
ニューヨークとパリを舞台に、30代独身女性の揺れる感情を、リアルかつロマンチックに描いたラブ・ストーリーという振れ込みだった。ニューヨークとパリ、どちらも行ったことのある好きな街だったので、このふたつの街の風景が観れるということの方に興味を持ち、観たのだが・・・。
結論から言うと、ソフィア・コッポラの足元にも及ばないと思った。比べること自体、ソフィアに失礼だ。個人的な意見だが、ただ単に若手女性ということと、監督・俳優一家の血を引いているという環境が一緒なだけで、“第二の・・・” と言われているだけだと思った。

ニューヨークに住む30代独身女性ノラ。それなりに不満はあるものの、安定した仕事に就き、友達との食事やヨガ通いなども楽しみ、自立して生活している。
親友は自分が紹介した男性と結婚し、そのことで母親に皮肉られ、一夜を共に過ごした男性には恋人がいて、母親が引き合わせた男性は失恋を引きずっていて、恋愛に関しては結局どれもうまく行かない。
愛する人、愛される人がいなくて、恋愛に対して臆病になって行く一方。そのためストレスが溜まり、情緒不安定にまでなって行く。
そんな時、同僚のホーム・パーティで、優しくて情熱的なフランス人男性ジュリアンに出会い、お互いに惹かれ合って行く。
これまでの経験から弱気になるノラとは対象的に、ジュリアンはどんどんアプローチしてくる。“一緒にパリに行こう” というジュリアンの誘いに、自分に素直になれないノラは断ってしまい、やがてジュリアンは電話番号のメモだけを残して、パリに帰ってしまう。
ひとりになったノラは、いつものように親友とヨガに行ったり、ネイル・サロンに行ったりの日々を送るが、ジュリアンのことが気になり、結局行動派の親友と一緒に彼を探しにパリに行く。
しかし、ジュリアンの電話番号のメモを無くし、あてもなく彼を探すが見つかりっこない。親友は夫と問題を抱えていたが、パリに来たことで考え直すことができ、夫とやり直す決心をして帰国するが、ノラはそのまま残る。ノラとジュリアンは、再び出会うことができるのか・・・。

とまあ、結末は伏せておくが、同じ女性として所々で共感できる部分は少しあったものの、チープでありふれたストーリー展開で、不自然さが目立った。
例えば、パリに行くことになるくだり。普通は、行く前に電話をするだろう。もし自分の気持ちを相手に悟られたくないのなら、“久しぶり、元気?” だけでもいい。その時は、パリに行くと言わず、電話番号を確かめるだけでいいのだから。ビックリさせたいから、という気持ちがあるのなら、パリに行ってから連絡をするだろう。しかし、ノラは電話番号のメモを無くしてしまう。そして、それで終ってしまうのだ。
そもそも、ジュリアンとの出会いは同僚のパーティ。確かその同僚がフランスに留学していたときに、ジュリアンの家にホーム・ステイしていたと言っていた。なら、住所もわかるだろうに。メモを無くしたあと、その同僚に電話しているが、留守電だったと言っている。いや、それで終らないでしょ、普通は・・・。
ニューヨークにいるのなら少しは諦めるかも知れないが、パリにまで来ているのだから、話が出来るまで電話するし、電話が欲しいとメッセージを残すのも当たり前のこと。
ジュリアンが、電話番号だけ残して行ったっていうのも不自然。現代の話なんだから、メール・アドレスも教えるのではないか。音響の仕事をしているジュリアンに、インターネット環境がないとは思えない。
これらは皆、演出だ、映画だからと言われるとそれまでだが、等身大の女性をリアルに描くと言うのなら、もっと現実的に描いても良いと思う。ノラの人物像も、どこか中途半端だったし、ジュリアンの背景もほとんど描かれていなかった。
あと、誰もが予想できるラストの展開。最後の最後に、“ありきたり” の波がどっと押し寄せた。ロマンチックだとは、私には到底思えなかった。
辛口なことばかりだが、つまらなくて寝てしまうほどではなかったのは、ニューヨークとパリの風景が紛らしてくれたので、淡々と観ていられたという感じ。
そしてこの映画は、男性が観ると絶対につまらないだろう。

ノラのファッションは可愛かったが、ドレア・ド・マッテオ演じる親友のキャラクターの方が、ノラよりもインパクトがあった。
ジュリアン役のフランス人俳優メルヴィル・プポーは、なかなかイイ男。彼は兄弟でバンドを組み、ソロ・アルバムも出しているミュージシャンらしい。
ケイト・ハドソン主演の2003年作 『ル・ディヴォース~パリに恋して~』 に、ナオミ・ワッツの夫役として出演している。

『Paris パリ』

2009-01-27 | cinema & drama


ズバリ、『Paris パリ』 というタイトルの映画。もちろん舞台はパリ。パリに暮らす人たちの群像劇。昨年、Yahoo! JAPANに特集ページがあって、そこで予告を観て興味を持った。
Bunkamuraル・シネマは帰宅途中に寄れるので、無駄足ではなかったが、いつ行っても満員で、先週やっと観ることができた。
監督は、セドリック・クラピッシュ。(代表作は、『猫が行方不明』 『スパニッシュ・アパートメント』 『ロシアン・ドールズ』 など。)
物語は、ある姉弟を中心に展開して行く。3人の子持ちのシングル・マザーの姉エリーズ役は、私の好きな2作品 『存在の耐えられない軽さ』 と 『ショコラ』 でヒロインを演じたジュリエット・ビノシュ。
ムーラン・ルージュのダンサーだった弟ピエールが心臓病とわかり、彼を支えるために一緒に暮らすようになるところから物語は始まる。
死を意識したピエールが、アパートのベランダから眺めるパリの街。向かいのアパートに住む美しいソルボンヌ大学生、その大学生に恋してはしゃぐ老教授、マルシェ(市場)で働く人々、いつも文句ばっかり言っているパン屋の女主人、ファッション業界の派手な女たち・・・などなど。
それぞれがパリを愛し、パリに生き、パリに文句を言い、パリで悩む日常。誰もが抱えている痛みや辛さ、哀しみや喜びが交差して行く。そこには、いつもと変わらないパリの街がある。
残された日々を悶々と過ごすピエールには、今までの不満だらけの何気ない日常も、大切なものになって行く。

特にクライマックスがあったりするような展開ではなく、淡々と過ぎて行く人々の普通の日常を、要所要所にユーモアを交えながら、ひとつひとつ丁寧に描いている。
人と人との繋がりが、別のようで別ではない接点があったり、思いがけないところでその接点を発見することができる。でも、登場人物がとても多くて、繋がりを把握しきれない部分もあった。
何気なく通り過ぎて行く日々を、もっと大切に、そして自分自身で楽しまなきゃということを教えてくれる。生きていることを改めて実感する、人間味のあるいい映画だった。
予告編のイメージ・ソングがKeane(キーン)の 「Somewhere Only We Know」 だった。でも、劇中やタイトル・ロールでも一切この曲は流れなかったので、日本だけのオリジナルなのかも知れない。この曲は、既にキアヌ・リーヴス主演の 『イルマーレ』 の主題歌になっているから、逆にそれで良かったと思う。

それにしても、ジュリエット・ビノシュがキュートだった。『ショコラ』 では明るく朗らかな美しい女性、『存在の耐えられない軽さ』 では芯の強いコケティッシュな女性を演じていたが、今回とても彼女を身近に感じたのは、“普通” が描かれていたからかも知れない。とても魅力的だった。


パリの風景はとっても美しく、画になるメジャーなエッフェル塔やノートルダム大聖堂、モンマルトルのサクレ・クール寺院を始め、ディープなカタコンブや地元の人たちの生活に密着したマルシェや、パリに欠かせないカフェなど、パリのいいところも悪いところも様々な角度から伝えようとしている、メッセージのような映像だった。
ラスト・シーンで、ピエールの目線で流れて行くパリの街のアングルが、特に切なくて美しく、印象的だった。
パリでなくてもいい。東京でも大阪でも、ニューヨークでもロンドンでも同じ。生きているのだから、それぞれが抱える問題はつきもの。その街が好きか嫌いかはともかく、自分の人生、悔いのないように生きなきゃ!






★日本版公式サイトはこちら
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Razorlight / Slipway Fires

2009-01-25 | music : favorite


日本では、以前のような盛り上がりはちょっとなくなってしまったように感じるが、本国UKでは押しも押されもせぬ相変わらずの人気っぷりのRazorlight(レイザーライト)。
昨年11月にリリースされた3rdアルバム 『Slipway Fires』 に合わせて早くも来日し、東京公演を終えて、この後名古屋・大阪を控えている。
しかし、国内盤の発売が来日の約1週間前だったのは、少し無謀ではなかっただろうか。前回はクアトロという小さいハコだったが、連日SOLD OUTという盛況ぶりだったのに比べ、今回東京ではSHIBUYA-AX1回のみで、しかも動員はあまり芳しくないのか、AXの2階席は通常すぐに売り切れるのがずっと残っていたし、イープラスから招待メールなんかも届いていた。
ニュー・アルバムはさほど期待していなかったのだが、私の2008年のベスト10内にも入ったほど聴けば聴くほど良くなり、ライヴも行きたかったのだが、仕事の都合で行けなかった。
もちろん私のように輸入盤で聴いてる人も少なくないだろうが、やはりボートラありの国内盤を購入する人の方が多いのではないだろうか。これはレコード会社と招聘先のクリエイティブマンのスケジュール・ミスと言えよう。もったいない・・・。

さてアルバムだが、今回もまたオリジナルと国内盤とではジャケットが違う。別に変える必要はないと思うのだが・・・。
UKの1stシングルとなった、ピアノの音色が綺麗なM-1 「Wire To Wire」 でしっとりと始まる。過去2枚のアルバムとは違った出だしだ。Johnny Borrell(ジョニー・ボーレル)のVo.は、冴えまくっている。
哀愁漂うアコギが響く、M-2 「Hostage Of Love」 も美しい。エモーショナルなサビになると、これまでのRazorlightっぽさが垣間見えてくる。
ピアノ、アコギに続いてM-3 「You And The Rest」 は、ドラムのバチ捌きが軽快でちょっとコミカルなリズムを奏でるポップなナンバー。
タイトに疾走するロック・チューンM-4 「Tabloid Lover」 では、女性コーラスも入ってサウンドに厚みが出て、軽快に突っ走っている。
ゆったりとしたグルーヴを感じるM-5 「North London Trash」、ダークで寂しげなM-6 「60 Thompson」 と続き、ダイナミックなイントロのM-7 「Stinger」 では、前半は儚く歌い、最後は歌い上げる。
アルバムの中でいちばん明るいM-8 「Burberry Blue Eyes」 の、とってもポップで覚え易いメロディーは、つい一緒にくちずさみなくなる可愛い曲。こういうRazorlightが私はとても好きだったりする。
狂おしいくらいに切なく始まるM-10 「Monster Boots」。しっとりバラードかと思いきや、ドゥルドゥルドゥルドゥルルル~というドラミングが入り、ガラッと変わってアップ・テンポで突っ走って行くのが気持ちいい。
最後M-11 「The House」 は、再びピアノをフィーチャーした美しいバラードで締めくくる。

これまでとは違ってロック色は薄い感じがするが、今回とにかく目立つのが、Johnnyの歌唱力。アグレッシヴでドラマチックで、感情豊かに歌い上げるその声は、とても心を揺さぶられる。
スケールの大きい楽曲が多いが、スノッブな雰囲気があって、鋭さも持ち合わせている彼のVo.が響き渡っている。
曲の流れがとても滑らかなので耳触りが良く、聴き流してしまいがちだが、聴く度に良いな~という気持ちが大きくなって行くのを感じる。


 ボートラが5曲も入っている、国内盤のジャケット


Ben Kweller/How Ya Lookin' Southbound? Come in...

2009-01-21 | music : favorite


明日・・・と言ってももう日付が変わったので、今日1月21日、Ben Kweller(ベン・クウェラー)の4thアルバム 『Changing Horses』 が、日本先行でリリースされる。今回、日本のあとオーストラリア・ニュージーランド、次にUK及びヨーロッパ諸国、そして最後に本国USで3月3日にリリースされると言う、ちょっと変わったスケジュールである。
その前に、昨年10月に7曲入りのEP 『How Ya Lookin' Southbound? Come in...』 がリリースされた。買うのを少し迷っていたのだが、円高につられて12月にオーダーして、クリスマス休暇や年末年始を挟んだということもあり、約1ヶ月かかって先日やっと届いた。
マイスペで何曲か聴いていたが、このEPはまるごとカントリー。USの音楽市場では、今でも需要が高いカントリー・ミュージックだが、Benちゃんが演るとコテコテではなく、ポップでキャッチーなカントリーになっているので聴き易い。
そして、テキサス育ちのBenちゃんにとって、小さい頃から慣れ親しんできた音楽であろうカントリー・ミュージックを、Benちゃん流に料理している。
そしてこのEPから3曲、「Fight」 「Things I Like To Do 」 「Sawdust Man」 が、ニュー・アルバムにも収録されている。
そのM-1 「Fight」 は、とっても覚え易いメロディーで、ホンキー・トンク・ピアノやドブロのスティールが軽快に響く。
M-2 「Things I Like To Do」 は、7曲の中でいちばんカントリー色が強い。
ピアノをフィーチャーしたM-4 「Sawdust Man」 は、Benちゃん独特のほのぼのしたゆる~い歌い方のちょっと愉快な曲。
このEPは、ロード(つまりBenちゃんのツアーのことだと思う)にいそしむ人たちと、彼らを支える家族に捧げたアルバムで、曲間に車の走行音がSEで入っていたりする。
優しいタッチのM-5 「The Biggest Flower」 と、エコーがかかって美しく響き渡るM-7 「Somehow (Singlemalt version)」 の間のM-6 「F Train Blues / Gypsy Rosita」 は、1分15秒のテープ逆さ回しのお遊びっぽい曲で面白い。
プライベート・レコーディング風で、フル・レングスのアルバムとはひと味違った、リラックス度全開のアット・ホームな雰囲気の曲ばかり。
ニュー・アルバムに向けてのウォーミング・アップと言った感じだ。

『once ダブリンの街角で』

2009-01-18 | cinema & drama


2007年に公開された映画、『once ダブリンの街角で』 が、主役のふたりのデュオThe Swell Season(スウェル・シーズン)の来日に合わせて、一週間限定でレイトショーでアンコール上映されていた。
前から観たいと思っていた映画だったし、Jack's Mannequin(ジャックス・マネキン)のライヴが終った時間が早かったので、食事してから観に行った。
今回のこの公開はたまたまインターネットで見つけて、来日公演もその時知ったのだが、チケットはSOLD OUTで追加公演も決定という大盛況ぶりに驚いた。映画への期待も膨らむ。

邦題にあるとおり、舞台はアイルランドの首都ダブリン。
ストリート・ミュージシャンの男性と、彼の歌を聞いていたチェコ移民の女性の、音楽が心と心をつなぐハート・ウォーミングな物語。
それぞれ俳優ではなく、本物のミュージシャンが演じているので、歌や演奏は元より、ミュージシャンとしての苦悩なんかもよりリアルに表現されていた。
男(劇中で名前は明かされない)は、地元アイルランドの人気バンドThe Flames(フレイムス)のフロントマンGlen Hansard(グレン・ハンサード)で、しかも監督はそのバンドの元ベーシスト。女(こちらも名前は明かされない)は、チェコのSSW、Marketa Irglova(マルケタ・イルグロヴァ)が演じている。ちなみにGlen Hansardは、1991年の映画 『ザ・コミットメンツ』 にも出演している。
男は母親が死んでから、父親の家業である掃除機の修理屋を手伝うかたわら、ボロボロのギター1本でストリートで演奏する日々を送っていた。
他の男とロンドンに行ってしまった愛する恋人が忘れられず、部屋には写真を飾り、寂しい気持ちを歌に託していた。
人通りの多い昼間は誰もが知っている歌を歌い、夜は思いっきりオリジナルを歌う。そんな男の前に、ある夜ひとりの女が現れ、10セント硬貨をギター・ケースに投げ入れる。“10セントか・・・” と言う男の皮肉は通じず、女はまるで尋問のように根掘り葉掘り男に質問する。そのシーンでは、なんか嫌な女だなと感じてしまうくらいしつこかった。
結局掃除機の修理まで約束させられ、翌日本当に掃除機を持って再び男の前に現れた女。その時も、今から休憩だから後にしてくれという男につきまとい、一緒にランチをする。
そこで音楽の話になり、初めて素直に打ち解けることができたふたりは、女がピアノを弾かせてもらえるという楽器店に行き、セッションする。初めてとは思えないほど息が合い、通じ合うものを感じた男は、一緒に曲作りや演奏をすることを提案。ものおじしない女は、即答でOK。
音楽を通して、ふたりの中で特別な感情が生まれて行く。しかし、男は去って行った恋人が忘れられずにいる。一方女には祖国に別居中の夫がいて、子供には父親が必要だと思っている。
やがてロンドンに渡る決心をした男は、女にデモ・テープのレコーディングを手伝ってくれないかと言う。男はバック・バンドをストリートでスカウトし、女はスタジオ代を値切ったり、古着屋で男のスーツを見立てたり、ミュージシャンに憧れていた銀行の頭取から貸付を承諾させたりとチャキチャキこなして行き、その行動力に男は圧倒されるほど・・・。
レコーディング当日、最初は見くびっていたスタジオのエンジニアも、音を聴いた途端その素晴らしさに気付き、協力して行く。
無事にレコーディングが終り、男がロンドンに発つ時が近付いてくる。お互いに惹かれ合っているふたり、その後は・・・。

この映画は、アメリカでクチコミで広がり、大ヒットしたそうだが、ホーム・ビデオのように撮られているのが身近で親しみを感じる。ストリートでのシーンは、カメラを隠して撮影したそうで、主役の彼は既に顔を知られているので、色々苦労したらしい。
レコーディングを終えたメンバーを、海へとドライブに連れ出すスタジオのエンジニアの粋な計らいと、多くを語らずに男の夢を応援する男の父親がすごく良かった。
ストリートでスカウトしたバンドが、“オリジナル? 俺たちはThin Lizzy(シン・リジィ)しかやらないよ” と言うのには受けた。さすが、アイルランド!(笑)
その他、フィドルやチェロとのホーム・パーティでのセッションなどもあり、アイルランド文化の歴史に欠かせない音楽の伝統が、さり気なく描かれれていた。
男と女の微妙な心の動きを、音楽を通してひとつずつ丁寧に描かれた作品で、感情表現も歌に乗せることによって、とっても自然体でリアルに響いてくる。
ふたりの心が通じ合い、お互いに意識していると、通常はすぐキスして抱き合って・・・となるが、一時の気の迷いで一線を越えるということはなく、プラトニックなままなのがいい。
そして最後に、ふたりの心がひとつになった時のメロディだけが流れて行く。そのメロディが、ふたりに夢と希望と優しさを添え、柔らかく包み込むように流れて行くのが印象的だった。
ハッピー・エンドでも悲しい結末でもない、ひと言で表すことのできないこの終り方には、中には納得できない人も居るかも知れないが、私はこれはこれでアリだと思う。
全編で音楽が溶け出して、ふたりの心の痛みや切なさになって行く様は、音楽好きにはとっても浸透して行く温かい作品だった。
劇中のThe Swell Seasonの曲は本当に切ない曲ばかりで、力いっぱい熱唱する男の声に絡む、女の儚いハーモニーが心に沁みて、より切なく感じさせた。
私がダブリンに行ったのは1990年、去年京都で逢ったダブリンから観光に来ていた人は、“その頃とはずいぶんと変わったわよ” と言っていた。今はEU統合で通貨もユーロになり、経済面での成長が伺われる反面、移民などの貧困率が高い傾向もある背景も、そこかしこに描かれていた。





Jack's Mannequin @Club Quattro, Shibuya 01/12/09

2009-01-16 | performance


2年前のライヴが1月13日だったので、丁度まる2年。楽しみにしていたJack's Mannequin(ジャックス・マネキン)の東京公演2日目に足を運んだ。
祝日で、17時開場ということに気付いたのが開場時間25分前。バスの中で 「まだ~?」 という友達からのメールを受け、急ぎ足で会場に着いた時は、既に自分の整理番号の入場は過ぎていた。でも先に入っていた友達のお陰で、クアトロでの定番位置で見ることができた。今回、初日がSOLD OUT、2日目もほぼ満員状態だった。

15分強押して始まり、ピアノの前に座ったニコニコ笑顔のAndrew McMahon(アンドリュー・マクマホン)は、まずこう言った。“セイジン、オメデトウ!”。(笑)
オープニング曲はニュー・アルバムから 「Spinning」。のっけから熱く激しくシャウトする。軽快なリズムに乗ってノリノリ。Andrewは腰を浮かせて立ち弾きしながら、正面からと左側からの2つのマイクを器用に使って歌う。途中、ハンド・マイクで立ち上がり、モニターの上に乗って両手を挙げてオーディエンスをあおり、私たちもそれに応える。
続いて前作から 「The Mixed Tape」、1曲目のテンションをそのまま継続してエモーショナルに弾けて行き、可愛いくて大好きな曲 「Drop Out- The So Unknown」 のあとは「Swim」。この曲は、白血病を克服した彼の、生きることの大切さを教えてくれる、とても切ないけれども前向きな曲。アグレッシヴに振り絞るように歌い上げるサビの部分は、生で聴くとより一層ジーンときた。
その後も新旧織り交ぜて、パワフルで熱いパフォーマンスを見せてくれた。
途中、缶ビール片手に “カンパーイ!” と言いながら日本語は難しいと言ったり、紙飛行機を飛ばしたりして、みんな手を挙げてそれに応えて大盛り上がり。
“イッショニ、オドッテ、クダサイ” と一所懸命に日本語で語りかけた 「Crashin」 では、クアトロが揺れていた。
オルタナ調の 「Bloodshot」 では、手を振り挙げてリズムを取る誘導をしてハンド・マイクで歌い、途中から疾走するかのように鍵盤を叩く。
「Dark Blue」 と 「Holiday From Real」 の連続にステージもオーディエンスもMAXになって行った。途中、一部分Andrewが歌わずに私たちに歌わせるところがバッチリだったので、PAのおじさんが満足そうに微笑んでいたのが印象的だった。
そして、「Caves」 のしっとりとした弾き語りです~っと落ち着かせ、心に沁みるバラードを奏でた。途中歌詞を間違えてしまってちょっと止まってしまったりしたが、中盤でバンド演奏になり、切ないほどの熱唱。終ったあとに、ギターの人の方に向かってペロッと舌を出していたのが可愛かった。
ラストは2年前と同様 「MFEO」 で締めくくり。楽しい! 自然と笑みがこぼれる。
すぐに戻ってプレイしたアンコールは3曲。Something Corporate(サムシング・コーポレイト)の 「Me And The Moon」 もやり、最後は 「La La Lie」 で手をかざしながら大合唱。

今回も、鍵盤の上に立ったり、お尻で鍵盤を叩いたりという熱いパフォーマンスは健在で、見ている私たちの気持ちをとっても高揚させてくれて、ハッピーな気分にさせてくれた。
激しくアグレッシヴな分、バラードは更に胸に響き、みなぎる力を振り絞るかのように体の底から歌う彼の歌声は、最初から最後まで衰えることなく、本当に楽しくて素晴らしいライヴだった。

『英国王 給仕人に乾杯!』

2009-01-12 | cinema & drama


最近は、映画館で映画を観ることが少なくなり、公開からだいぶ経った後にDVDをレンタルして観ることが多かった。
でも当然のことだが、やはり大画面で臨場感のある音と共に観る方がいいに決まっている。
昨年、The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)の 『Shine A Light』 を観た時に、つくづく思った。(それがライヴものだったということもあるが・・・)
その後、観たい映画の公開が続き、タイミング良く時間も取れ、このところはよく映画館に足を運んでいる。

先日レディース・デイの水曜日、チェコ映画の 『英国王 給仕人に乾杯!』 を観てきた。本国では2006年に公開された、チェコ映画の巨匠イジー・メンツェル監督の作品だ。
昨年、“Ahoj! チェコ映画週間” で観た内のひとつ、『厳重に監視された列車』 は、メンツェル監督が28歳の時の長編デビュー作で(現在監督は70歳)、ナチス・ドイツ占領下時代のチェコスロバキアを舞台に描かれた、とても素晴らしい作品だったが、今回観た 『英国王 給仕人に乾杯!』 も、同じ時代背景である。
『厳重に監視された列車』 同様、チェコの国民的作家ボフミル・フラバルの同名小説が原作で、本国では当時出版禁止となり、ビロード革命(1989年)以降に公に出版された作品である。

さて、肝心の内容だが、タイトルにある “英国王” は、一切出て来ない。なら、よくある邦題の矛盾かと思いきや、チェコ語の原題の英訳も “I served the King of England” なのだ。果たして、そのタイトルの理由とは・・・。
物語は、主人公ヤンが監獄から出所するところから始まる。そして、“私の幸運は、いつも不幸とドンデン返しだった” という言葉と共に、現在のヤンが15年前の自分を振り返りながら進んで行く。何故、彼は監獄に居たのか?
現在のヤンと過去のヤンは、ふたり一役。小柄で童顔の若いヤンは、愛嬌ある表情で可愛く、小さい故にちょこまかしたその行動ひとつひとつが笑いを誘い、現在のヤンは渋くて人間味のある風格が漂っている。
 15年前のヤンと現在のヤン

億万長者になって、一流ホテルのオーナーになることを夢見ていたヤンは、まず駅のホームのソーセージ売りからスタートした。
その後、小さな街のホテルのレストランで給仕見習いとなり、ソーセージ売り時代にひょんなことがきっかけで知り合った、ユダヤ人商人の後見もあって、その後どんどんと出世して行く。
最初の見習いの時の給仕長の、“何も見るな、何も聞くな、全てを見ろ、全てを聞け” という教えのとおり、その小さな体を生かして仕事をこなしながら、幸と不幸を同時に体験し、やがてプラハ一の高級ホテル “ホテル・パリ” のレストランの主任給仕にまで昇りつめる。
そこで出会った “英国王の給仕もした” と言う給仕長は、ヤンの尊敬する人物。ここで初めて “英国王” というセリフが出てくる。
 英国王の給仕をした給仕長とヤン

やがて、ナチス・ドイツの占領下となったプラハで、ヤンは自分より背の低いドイツ人女性と出会い、結婚し、夢であった一流ホテルのオーナーになるのだが・・・。
彼女との出会いから結婚までのくだりで、ナチス・ドイツが当時いかに人々に影響していて、それがどういうものだったかということが、コミカルでシニカルに描かれているのが興味をそそる。
そして、妻は軍人となり、尊敬する給仕長はナチスに抵抗して国家秘密警察(ゲシュタポ)に逮捕され、恩人のユダヤ人商人も強制収容所に送られる。
しかし、メンツェル監督は、こう言った様々な人間模様を政治的になりすぎず、素晴らしい表現力で伝えている。
何故監獄に入れられたのかはここでは伏せるとするが、現在のヤンがたくさんの鏡の前で過去と向き合うラスト・シーンは、とても切ない。
ナチス・ドイツに翻弄された母国の如く、ヤン自身もまた時代に翻弄され続けたのではないだろうか・・・。そんな姿が、ふたりのヤンによって見事に描かれている。

若かりしヤンを演じたのは、イヴァン・バルネフというブルガリア生まれの舞台出身の俳優。
公開当時の彼は33歳だが、とても歳相応には見えず、可愛くて憎めない。小柄で身のこなしの軽やかな演技からか、全米ではチャップリンを彷彿させると絶賛されているらしいが、本当に彼の存在感が大きく、彼なくしてこの作品は成り立たなかったのではないだろうか、と思う。
そして、公開に伴って来日した監督がインタビューで言った、“コミカルな要素があると、悲劇が際立つ” という印象的な言葉が、映画を観終わった後、更に脳裏に焼きついてくる。
次々と出てくるチェコ・ビールは、アルコールがダメな私は現地で飲めなかったが、ちょこっと出てきたプラハの景色は、先日行ってきたばかりだったので感慨深かった。
でも、そんなことよりも、時代背景を伝えつつ、チェコ人としての誇りも巧みに組み込み、ひとりの男の生きた人生を、幻想的かつユーモラスに描き、いやらしさのないエロティシズムも交えた温かい人間味のある作品で、バックに流れるオーケストラ音楽もステキだった。
しかも伝えたいことを、全て給仕という場面でメッセージを送っているというのが、鮮やかだった。

それにしてもこの邦題、勘違いされやすいのではないだろうか。タイトルだけ見ると、てっきり英国王室の話かと思ってしまいがち。
“英国王” と “給仕” の間にスペースはいらないのでは・・・。繋げるか、“の” を入れた方が誤解がないと思う。
Wikipediaでは、小説の邦題は、「僕はイギリス国王の給仕をした」 になっている。でも、ヤンが給仕をしたのではなく、彼が尊敬する給仕長が英国王の給仕人だった訳で、何ともややこしい。






★日本公式サイトはこちら。現在東京で公開中だが、1/24から大阪を皮切りに、全国で公開される。
オリジナル公式サイトは、チェコ語と英語ver.があり、とってもステキなサイト。

James Morrison / Songs for You, Truths for Me

2009-01-10 | music : favorite


“酔いしれる” というのは、正にこういう音楽を言うのだということを、心の底から実感させてくれるアルバム。
UKのSSW、James Morrison(ジェイムス・モリソン)の2年ぶりの2nd 『Songs for You, Truths for Me』。
彼のデビュー作 『Undiscovered』 は、完全に波に乗り遅れて後追いだったのだが、そのソウルフルでハスキーな歌声と、才能の豊かさが伺える楽曲の素晴らしさに一聴しただけで大好きになった。
そして待望の新作では、そのソウルフルな歌声は更に磨きがかかって味が出て、ポップでブルージーな心温まる素晴らしい曲がビッシリ詰まっている。
アップ・テンポなM-1 「The Only Night」 で幕開け。イントロから掛け声なんかがあってかなり弾けているが、歌に入ると軽快なピアノに乗って、もうそこは彼の世界。ヴァースの滑らかなメロディ・ラインにはぞくっとさせられる。
M-2 「Save Yourself」 のサビ・メロも素敵だ。ゴスペルっぽい女性コーラスが更に盛り上げる。
M-3 「You Make It Real」 は、昨年9月に先行シングルとして発売された曲で、ゆったりとしたグルーヴィな切ないナンバー。
カナダの女性シンガーNelly Furtado(ネリー・ファータド)とのデュエットM-5 「Broken Strings」 は、とても力強くて説得力があって、ふたりの絡み合う歌声がとてもセクシーだ。
M-6 「Nothing Ever Hurt Like You」 では、ベーシックなソウル・ミュージックへのオマージュが伺える。
M-7 「Once, When I Was Little」 の淋しげな歌い出しと、広がりが感じるサビの展開は、もう鳥肌が立つほどキューッとなるメロディで、ストリングスとコーラスが合わさって素敵なハーモニーを奏でる。
M-8 「Precious Love」 は、文句なしで私のツボに入りまくりの一曲。大好きな3連で、オルガンのメロディがどこか懐かしく、横揺れのソウルフルなグルーヴが気持ちよくてストレートに響いてくる。
多彩でポップなM-10 「Fix the World Up for You」 も、シンプルなバラードM-11 「Dream on Hayley」 も素晴らしい。

本当に白人のイギリス人が作り出す音楽とは思えないほど、魂が溢れている。目を閉じて聴いていると、そこには黒人の聖歌隊が浮かんでくるほど、ブラックなインスピレーションを感じる。
どの曲も本当に素晴らしく、深みのある心に沁みる曲ばかりで、何度も何度もくり返し聴いてしまう。
『Songs for You, Truths for Me』 という、とってもピュアなタイトルについて、彼はこう語っている。“このアルバムをそう呼ぶのは、僕が感じていることだから。全ての歌はジル(ガールフレンド)とみんなのための歌なんだ。だって、僕にはそれが当り前のこと。僕がどんなにそのことを感じているかなんだ。” と・・・。
イベントやショーケースで来日はしているものの、昨年残念ながら喉の病気のために初の単独来日が中止になったままなので、現在国内盤が発売延期というのが気になるが、この素晴らしい2ndの曲を引っさげて早く再来日してほしい。

"The Redwalls news flash" pt.16

2009-01-07 | music : special


昨年11月から12月にかけて、The Zutons(ズートンズ)のサポート・アクトとして、UKツアーを成功させたThe Redwalls(レッドウォールズ)。
拙い和訳ではあるが、ツアーの最終日、The Zutonsの故郷リバプールでのショーの前に行なわれた、Logan(ローガン)のインタビューを紹介。

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━ The Redwallsが早い段階で見い出され、有力な仲間を得ているということは常に素晴らしいことだ。最初にoasis(オアシス)、次にKeane(キーン)からのオファーを受け、現在はThe Zutonsのサポートとして国内(UK)を駆け巡っている。

「レコード契約したときは、僕らはまだ子供だったんだ。」

━ リード・シンガー&リズム・ギターのLogan Baren(ローガン・バレン)は、シカゴ訛りでゆっくりと話す。

「僕らはアメリカ中をツアーするために高校を中退して、ライヴ活動に精を出したんだ。
oasisは僕らにUKでやってみないかと言ってきたので、僕らはそれに答えたのさ。今回僕らは、UKで本当に成功させるために戻ってきたんだ。
The Zutonsは、僕らにとっても親切にヘルプしてくれたよ。僕らを気に入ってくれたふたつのバンドにすごく感謝してるんだ。」

━ しかし、彼らがサポートしたもうひとつのバンド、Keaneに対する評価はあまりなかった。

「僕らはKeaneとThe Zutonsと一緒にUSツアーをしていたんだ。Keaneは全く個性に欠けていたんだ。僕らはツアーを乗り切るためにも、The Zutonsとの友好を深めざるを得なかったんだ。彼らはとってもいい奴らさ。彼らを愛してるよ。
2ヶ月前、僕らはリバプールの街を一緒にぶらぶらしてたんだ。そして、彼らが招いてくれて、今ここにいるんだ。もちろんさ、とOKするのは心が躍ったよ。」

━ The Redwallsのデビュー・シングル 「Memories」 は、年間優秀シングルを狙うには遅い。しかし、英国での成功ほど、彼らを喜ばせるものはないだろう。

「僕らは、ソウルフルなものは何にでも夢中になってるよ。そして、それらの多くは偶然にも英国の音楽なんだよね。
The Kinks(キンクス)、The Stones(ストーンズ)の初期の素晴らしい楽曲、更にSam Cooke(サム・クック)のような故郷(シカゴ)の古い音楽とかね。
ブルースの街シカゴ。僕らは正に、素晴らしい音楽が息づく街に生まれ育ったんだ。」

━ 彼らは、既にいくつかの大きな成功を掴んでいる。

「僕らは確かに、いくつか面白いことをこなしたよ。」(笑)
「oasisとの大規模なショーとか、レターマン(*1)やレノ(*2)の番組出演なんかがそうさ。そして、僕らが想像しているより以上に、そういうのだけが目立ってしまってるよね。でも、誰もがやってることもしてるさ。例えば新しい友達に出会ったり旅行したり、深夜に外出したりね。
でもそうすることが時々困難になるけど、僕らはそんな何でもないことを楽しまなきゃと思ってるから、今でもやってるさ。」

「僕はここが好きだな。ここにはたくさん僕らの友達がいるし、リバプールでは長い時間を費やすよ。この街の人たちも好きだし、今は第二の故郷って感じだよ。」

━ そして、彼らはリバプールの音楽の大ファンだ。

「僕は、この街から生まれたThe Beatles(ビートルズ)という古いバンドが好きなんだ。」(笑)
「他にも、Rory Storm(ロリー・ストーム)、The Zutons、Candie Payne(キャンディー・ペイン*3)、Howard Eliott Payne(ハワード・エリオット・ペイン*4)、The Sixteen Tonnes(シックスティーン・トンズ)、そしてBruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)!」(笑)

━ リバプールでのショーに向けて、最後に彼はこう約束した。

「4人のシカゴアン(シカゴ市民)は、リバプール市民で溢れる会場に、素晴らしいロックン・ロールを届けてみせるよ!」


*1:アメリカCBSのトーク番組 『Late Show with David Letterman』
*2:アメリカNBCのトーク番組 『The Tonight Show with Jay Leno』
*3:The ZutonsのSean Payne(ショーン・ペイン)とThe StandsのHowie Payne(ハウィー・ペイン)の妹
*4:The StandsのVo/G、Howie Payne 
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このツアーの前に、長年バンドを共にしてきたギタリストのAndrew Langer(アンドリュー・ランガー)が、バンドを去った。
ツアーでは、Logan&Justin(ジャスティン)兄弟のいとこJason Roberts(ジェイソン・ロバーツ)が、ギターとバッキングVo.を務め、今年から正式メンバーとなった。
そして彼らはこの春、再びUKツアーを行なう。

Jack's Mannequin / The Glass Passenger

2009-01-04 | music : favorite


久しぶりのCDレビュー。昨年9月頃から、気になるアーティストの新譜が続き、それぞれなかなか良くてハズレがなかったので、旅行記も終ったことだしボチボチ取り上げて行こうと思う。
まず今日紹介するのは、12日にライヴを控えたJack's Mannequin(ジャックス・マネキン)の2nd 『The Glass Passenger』。
前作 『Everything In Transit』 と比べると、弾けっぷりがおとなしめなので、初めて聴いた時はもの足りなささえ感じた。でも、何度かくり返し聴いて行く内に、やはり楽曲の良さがだんだん伝わってきて、いいな~という気持ちが徐々に大きくなった。聴けば聴くほど味を占めるアルバムというのは、飽きがこない。
M-1 「Crashin」 は少しインパクトに欠けるが、流れるようなメロディが漂い、M-2 「Spinning」 にうまく繋がって行く。
アグレッシヴに歌い上げるM-3 「Swim」 や、オルタナ風のサビ・メロが印象的なM-6 「Suicide Blonde」 は、とてもクウォリティが高い。
いろんな試みが垣間見える中、M-9 「Drop Out- The So Unknown」 は最も前作に近い雰囲気を持った曲。しかし、これがもし一曲目だったら、何も変わっていないと感じて逆にダメだったかも・・・。
“子守唄” と題されたM-10 「Hammers and Strings (A Lullaby)」 での熱唱は、とても切ない。そして、静かに語りかける様に歌うM-13 「Caves」 は、ぐっとくるとても美しいバラードで、後半からぐわ~んと盛り上がって綺麗なメロディが広がって行き、最後はしっとりと終わる。この2曲は特にピアノの旋律が存分に活かされている。
そう、Andrew McMahon(アンドリュー・マクマホン)の書くメロディは、ピアノの美しい旋律に滑らかに纏い、高めの歌声が綺麗に響き渡る。
M-14 「Miss California」 はボートラだが、流れから行くと 「Caves」 でしっとりと終わった方が良かったのでは?とは思うが、いい曲なので良しとしよう。(笑)
今作は、ピアノを全面に出したアレンジよりも、バンドとしての音でタイトにまとめているのが多く、オーケストレーションを入れたりバッキング・コーラスも充実しているのが新鮮で、まとまった構成だがメリハリが効いている。
めちゃくちゃ楽しくてハッピーな気持ちにさせてくれた、丁度2年前のライヴ。果たして今回は、どんなステージを見せてくれるかが楽しみだ。


★2007年のライヴ・レポはこちら