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Summer Sonic 09 ステージ割

2009-05-27 | music : other


今年で10周年ということで、開催日程を3日間にしたサマソニ。
さぞかし豪華で最強のラインナップになることだろう・・・と期待していたのだが、同じ3日間開催のフジ・ロックには敵わなかった。
それでも、Teenage Fanclub(ティーンエイジ・ファンクラブ)とThe Vaselines(ヴァセリンズ)にとても魅力を感じていて、最終的に背中を押してくれたのが
Keane(キーン)。
彼らのサマソニ出演が決まり、先日の単独が素晴らしかったので、絶対もう一度見たい!という気持ちが大きくて、8月9日だけ行くことにした。
しかし、しかしだ。いろんなところで物議が醸されているが、Keaneがマリン・ステージ出演ということが決まって以来、気持ちが晴れない。
しかも、何なんだ、これは?!と誰もが突っ込みを入れたくなるようなラインナップ。エレファント・カシマシとユニコーンに挟まれてKeaneが演るなんて、有り得ない! どうして邦楽に挟まれなきゃならないのか? エレカシとユニコーンを続ければいいのに・・・。これを決めたスタッフのセンスを疑う。いくらなんでも無茶苦茶すぎだ。
現段階でマリン・ステージ出演バンドは6組と、例年よりも少ないので、もしかしたらこれからまだ発表されるアーティストがいるのかも知れないが、もしいるのなら、系統の近いバンドをKeaneの前後に持ってきて欲しい。
それに比べてソニック・ステージの何と素晴らしいこと! The Vaselinesに続いてTeenage Fanclubなんて、涙もの(ちゃんと見れるかどうかが心配だが・・・)。そのあとは、Sonic Youth(ソニック・ユース)で、トリはThe Flaming Lips(フレーミング・リップス)という最高の流れだ。あぁぁぁ・・・Keaneもソニックに持ってきて欲しかったな・・・。
心配なのが、Keaneの単独公演の時のような一体感は期待できないだろうなってこと。あの時はバンドと観客との一体感が本当に素晴らしく、それはTom(トム)を始め、バンドのメンバーにも伝わり、彼らも本当に喜んでいた。
Keaneを見に行く人たちは、きっと私と同じような気持ちに違いない。彼らをガッカリさせないためにも、邦楽ファンに負けないように応援しなくては!

The Enemy @Club Quattro, Shibuya 05/21/09

2009-05-23 | performance


サマソニ出演前に来日したThe Enemy(エナミー)のワン・ナイト・ギグは、思いっきり熱い英国ロックを肌で感じることのできた一夜だった。
Primal Scream(プライマル・スクリーム)の 「Rocks」 など心地良いBGMが流れる中、だんだんフロアが埋まって行った。
開演時間7時が過ぎ、Pulp(パルプ)の 「Common People」 が流れてきて音量がだんだん大きくなったので、この曲を機にスタートか?と思って気持ちが高ぶったのだが、途中で場内アナウンスが流れてガクッ。で、続いてThe Verve(ヴァーヴ)の 「Bittersweet Symphony」 が流れてきて、より一層ヴォリュームが上がり、客電が落ちて3人が登場した。
Vo.のTom(トム)のポジションは左端で、クアトロの柱がちょっと邪魔だったが、ギリギリ全部見える位置にいたので3人はよく見えた。Tomの後ろにキーボードが見え、サポートがいたようだったがほとんど見えなかった。
“Hello! Tokyo!” と言って 「Away From Here」 でスタート。いきなり “ウウェオウェオッ” とは! 大好きな曲なので気持ちが高鳴った。
そして信じられないことに、全く間髪入れずにぶっ通しで曲が続いた。MCもない。でもこのぶっ飛ばしが、ある意味高揚した気持ちを持続させ、ぐいぐいと引き込まれて行った。
小柄なTomは迫力ある声でシャウトしまくり、同じく小柄なドラムスのLiam(リアム)のビートは、その華奢な体からは想像できないほどの力強いビートを打ちかましてしっかりと音を支えていた。
そしてベースのAndy(アンディ)だが、演奏はともかく残念だったのは、コーラスが下手だったこと。ただ吠えてるだけで、全くハーモニーになっていない。CDではきれいにハモっているのに、ライヴでこうだとちょっと・・・。
「Had Enough」 から 「40 Days 40 Nights」 への流れは最高で、アドレナリンが止まらなかった。
中盤でアコギに持ち替えて “この曲をみんなに贈るよ” と言って歌った 「51st State」 では、それまで勢いまっしぐらだった流れを、爽やかな空気で包み込んでひと息付かせ、また 「We'll Live And Die In These Towns」 で一気にヒート・アップ。だんだんと高揚して行くような盛り上がりが気持ち良く、途中サビを客だけに歌わせ、続く 「This Song」 でも大合唱。そのあとは再び勢いまっしぐら。
「It's Not OK」 ではAndyのダイブがあり(お決まりらしい)、次にまさか演るとは思わなかった 「Happy Birthday Jane」。メランコリックなバラードを、情感たっぷりに聴かせてくれた。
本編最後は 「You're Not Alone」 で、この曲も大好きな曲。ぶっちぎりの疾走感に満ち溢れていた。
アンコールは2曲。“サマーソニックで会おう!” と言って全18曲、一気に駆け抜けたライヴが終った。
意外にもニュー・アルバムからの曲は少なく、「Be Somebody」 を期待していたのだが、やらなかったのが残念。
音がもの凄くぶ厚くてヘヴィで体の芯までビートが響き、とにかく溢れんばかりの勢いのある、エネルギッシュでタイトなライヴで、正に “ワン・ステージ完全燃焼” という感じだった。きっと彼らはライヴ・バンドとして、どんどん大きくなって行くに違いないと確信させられた、満足の行くライヴだった。
客層は男女半々くらいで、UKバンドを観に来る男の子は結構オシャレなんだけど、今回はメタボな(それもかなりの)男子が目立ったなぁ・・・。


★写真は、UKのファンサイトより。

『MILK』

2009-05-22 | cinema & drama


2008年度の第81回アカデミー賞主演男優賞とオリジナル脚本賞を受賞した作品、『MILK』 を観に行ってきた。
同性愛者であることを公表し、ゲイの権利活動家・政治活動家としてアメリカ史上初の公職任務に就いた実在の人物ハーヴィ・ミルクの半生を描いた、ショーン・ペン主演、ガス・ ヴァン・サント監督の作品である。
実話ということもあり、ドキュメンタリー・タッチでところどころに当時の映像を織り込め、とても活気ある素晴らしい作品だった。
何と言ってもショーン・ペン、彼が見事だった。スクリーンの中の彼は、正にハーヴィ・ミルクそのものだった。

時は70年代、舞台は合衆国におけるヒッピー・ムーブメントの中心地、サンフランシスコ。
サンフランシスコは、私が唯一好きなアメリカ西海岸の街で何回か行っているが、実際に行ったことのある場所や地名が出てきたことも、この作品を楽しませてくれた要素のひとつだった。
同性愛者というマイノリティが、社会で生きて行くのがどれだけ厳しいかということ。そしてそんな逆風に屈することなく、バイタリティ溢れる精神で社会と向き合って行く、希望に満ちたハーヴィの姿はとても前向きで勇敢で、そんな彼を支持する人がどんどん増えて行ったのは、とても自然なことだったということがわかる。
物語は、ハーヴィが “もしものために” と題し、暗殺された時だけ公開してほしいとメモを残し、自分の半生をテープに録音しながら語って行く。そしてそれと同時に、映像が展開して行く。
ニューヨークで同性愛者であることを隠して暮らしていたハーヴィは、ひと目惚れしてナンパしたスコット・スミスと共にサンフランシスコに移住し、カストロ地区で暮らし始める。今でもここにはゲイのコミュニティーがある。
そこで小さな店を構え、やがてゲイ・コミュニティーの代表としてリーダーシップを取り、“カストロ通りの市長” と呼ばれるようになるハーヴィ。
サンフランシスコ市議会に立候補し、2度落選したが、その度に支持者をどんどん増やして行き、3度目にして当選。そして彼は、ゲイであることを公表した上で、合衆国の大都市の公職に選ばれた最初の人物となったのだった。
在職中はサンフランシスコ市の同性愛者権利法案を後援し、“条例6” という同性愛者という理由で職を解雇できるとする法条例の破棄運動に精力を費やしたのだったが、辞職した議員ダン・ホワイトによって、ハーヴィの功績を支持した市長と共に、市庁舎で射殺されてしまう。
辞職を無効にしようと躍起になったホワイトだったが、市長の判断で再任命されず、それによって精神的に追い詰められた結果取った行動だった。
ハーヴィの葬儀の夜、多くの人々が彼の功績をたたえ、死を悼み、キャンドル・ライトを手に行進する様子は、圧倒的な感動のシーンだった。この行進は、自然発生したものだったそうだ。
一般庶民との連帯はなかったと言われる彼だが、それでも多くの人に愛され、敬われていたのは、彼のチャーミングなその人間性であろう。
そのことは、大通りの遥か彼方まで埋め尽くされたキャンドル・ライトの灯が物語っていた。

当選パーティの場面で流れたSly & The Family Stone(スライ&ファミリー・ストーン)の 「Everyday People」 が、そのシーンにピッタリで、自分も一緒に当選のお祝いをしているような気分になり、とても心踊らされた。
エンド・ロールでは、ハーヴィと彼の傍で一緒に戦い、支えた仲間たちの実際の写真が出たのだが、ハーヴィ本人はもちろん、みんな本人と瓜ふたつというくらい似ていた。
途中、活動家として大きくなって行くハーヴィの元を去って行くスコットだったが、最後までハーヴィを愛していたんだということがヒシヒシと伝わってくる、スコット役のジェームズ・フランコ(『スパンダーマン』 の主人公のピーターの友人で敵のハリー役)も好演だったし、ハーヴィの側近のひとり、グリーヴ・ジョーンズ役のエミール・ハーシュは、最後にクレジットが出るまで誰だかわからなかった。ショーン・ペン監督の 『イン・トゥ・ザ・ワイルド』 とは全く違い、本当にグリーヴ・ジョーンズ本人そっくりだった。
ハーヴィ・ミルクというひとりの人物をちゃんと知ることができ、そして、ショーン・ペンとハーヴィ・ミルクのふたりの魅力に触れることのできる、素晴らしい作品だった。



『ベルサイユの子』

2009-05-18 | cinema & drama


昨年秋に、急性肺炎のため37歳の若さで亡くなったフランスの俳優、ギョーム・ドパルデュー主演の 『ベルサイユの子』 を観てきた。
観光客で賑わう華やかなパリとは裏腹な、フランス社会の抱える現実問題を題材に描いた、2008年度カンヌ国際映画祭 “ある視点” 部門にも出品された作品。
小さな子供エンゾと共に路上生活を送る若い母親ニーナが、ある日ホームレス支援隊員に保護されて、パリ郊外のベルサイユにある施設で一夜を過ごす。
翌日、仕事を求めるためにパリに戻る駅へ向かう途中、ふたりはベルサイユ宮殿の森に迷い込んでしまい、その森に住む社会からドロップ・アウトした男ダミアンと出会う。
しかし、ニーナは翌朝エンゾを残して去ってしまった。置き去りにされたエンゾと一緒にいることを余儀なくされたダミアンは、最初はエンゾをうっとうしく思っていたが、やがて情が移り、父親を知らないエンゾにとってもダミアンとの森での生活は新鮮で、すぐに順応して行く。
その後、一度は森に戻ったニーナだったが、その時は既にダミアンの小屋は火事にあってふたりは別の場所に移動していたため会えずじまい。
やがて病気になったダミアンは、ベルサイユ宮殿に救いを求めに走ったエンゾのお陰で一命を取り止め、それを機に長年疎遠になっていた父親の元に戻る。
母親ニーナは、いつか必ずエンゾを迎えに行くという強い意志を持って介護の仕事に励み、一方ダミアンもエンゾの親権を得るために、社会に復帰する。
晴れて法律上の親子となったダミアンとエンゾ、これでふたりは幸せになるのか・・・。そして母親は・・・。

エンゾの母親と、エンゾとは何の縁もないダミアンが、それぞれ子供のために変わろうとして行く姿。そして、母親に置き去りにされても泣いたりしないで現実を受け止め、その場に順応して行く芯の強いエンゾ。
大人の身勝手さに振り回されながらも、必死で生きて行こうとするエンゾの姿には、心打たれるものがあった。
これが映画初出演というエンゾ役の子役は、クリクリした大きな瞳で訴えかけ、ほとんど台詞はないのに、その目としぐさでその時々の気持ちを伝える見事な演技。
ギョーム・ドパルデューは義足ということをあとで知ったが、そんなことは全く感じさせない演技で、突然一緒に暮らすことになった子供に対して、やがて芽生えた愛情に対する不器用な表現や、反発しながらも父親との確執を乗り越えて、エンゾのために人間らしさを取り戻して行こうとする姿を見事に演じていた。
ベルサイユ宮殿という華やかな舞台裏にある目には見えない現実、フランス社会が抱える深刻な問題、そしてその社会に対する制度などがわかり易く描かれていて、ちょっと重い内容だったが、考えさせられることも多分にあり、いい作品だった。
ただ、結末には納得できないが・・・。

 この大きな瞳で訴えかけるいたいけな表情がたまらない!
 次第に芽生える父性愛

The Enemy / Music For The People

2009-05-14 | music : favorite


ライヴまであと一週間。ようやく聴きこなせるようになってきた、The Enemy(エナミー)の2ndアルバム 『Music For The People』。
初めて聴いた時は、なんだか少し取っつきにくかったのだが、何度か聴いている内に、だんだんしっくりしてきた。
このアルバム・タイトルは、これまで語っていた彼らのスタンスとは真逆のようだ。1st 『We'll live and die in these towns』 と比べると、サウンド面にかなりの変化があり、そこには成長している様が垣間見える。
1stにあった、非常に優れたとてもチャーミングだったメロディが、今作ではちょっとなりを潜めてしまったのが、残念なところ。
それとアルバムの構成。私は、M-1 「Elephant Song」 やM-10 「Silver Spoon」 のような、なかなか歌に入らなかったり、曲が終ってから数分のブランクが空いてからまた曲が始まるというのはあまり好きではない。
本人たちには意図するものがあるのだろうが、聴き手側にはそういうのは不要に思う場合も時にある。
「Elephant Song」 はまだ音があるので、これから始まる曲への導入と言った感じで受け入れられるが、「Silver Spoon」 の空白部分はどうしても飛ばしてしまう。
最後に流れてくる曲がなかなかいいので、ひとつの短い曲としてエンディングにしても良かったのにな・・・と思う。
1stシングルのM-2 「No Time For Tears」 の重圧な音とスケールの大きい曲構成に、最初は戸惑いを感じずにいられなかった。
M-4 「Sing When You're In Love」 で、ようやく(私の求めている)彼らが持つメロディ・ラインを感じることができた。アコースティック調で哀愁感があり、同世代の若者に向けてメッセージしている内容の歌詞にも共感。
続くM-5 「Last Goodbye」 への流れは心地良く、ストリングスを入れて情感たっぷりに歌い上げるバラードで、彼らの新しい一面が見られる。
クールなギターのストロークと弾むようなドラミングがカッコいい、M-6 「Nation Of Checkout Girls」 や、パワフルなM-7 「Be Somebody」 では、彼らが本来持っているスピード感が心地良く表れていてカッコいい。
厚みのあるグルーヴが感じられるM-8 「Don't Break The Red Tape」 や、壮大なバラードM-9 「Keep Losing」 では、確実にバンドの成長が伺える。

アレンジではピアノを前面に出し、ストリングスや女性コーラスを取り入れているところに、サウンド面の変化が感じ取れる。
巷ではThe Clash(クラッシュ)やPulp(パルプ)、The Jam(ジャム)、The Verve(ヴァーヴ)などの焼き直しなどと言われているようで、確かに彼らが影響を受けてきたであろう様々なUKバンドの音が、あちこちに顔を出している。
それはある意味仕方のないことかも知れない。でもそれが単なる真似で終らず、The Enemyとしてのバンドのサウンドとして多様化させ、向上していると感じる。
自国を思いっきり批判している歌詞は、若者たちの代弁者としてメッセージを伝えているかのようだし、ロック・バンドとしてのサウンドを確立させた、とてもスケールの大きい作品に仕上がっている。
Vo.のTom Clarke(トム・クラーク)は、元々いいメロディの曲を書く才能があるので、その素晴らしい才能を無駄にしないで、どんどん成長して行ってほしいと思う。

東京小美術館めぐり

2009-05-10 | art


台風の影響で雨が続いたが、今日は久しぶりに青空が拝め、初夏のように気温も上がった。
ゴールデン・ウィーク中は途中で休みの日もあったが、人ごみの中に繰り出すのは気が向かなかったので何処にも出かけることがなかったが、今日は都内散策をしてきた。
今、国立西洋美術館と国立新美術館で、ふたつの “ルーヴル美術館展” が開催されているが、連日超満員という噂・・・。今回の出展作はいまひとつ興味が湧かないので、他に何かないかなと調べたところ、私を満足させてくれそうなものがあったので、一日かけてついでに都内をちょこっと散策してきた。

都バスの一日乗車券(500円)をSuicaに入れて、まず最初に、目黒にある東京都庭園美術館に行った。
ここは戦後の一時期、国の迎賓館などとして使用されていたこともあった朝香宮(あさかのみや)邸として建てられた建物が、現在は美術館として公開されている。
 東京都庭園美術館入口
 旧朝香宮邸、現美術館

まず、広大な緑溢れる庭園に入って行くと、雨あがりのあとの匂いが漂ってきて、ヒーリング効果抜群。ところどころに置かれた彫刻を見たりしながら散歩。
東京でこれだけの緑がある所に行ったのは、久しぶりだった。つつじはまだ少ししか咲いていなかったが、バラやボタンなどが咲いていた。
家族連れや外国人の姿もあり、芝生でお弁当を広げたり、寝転がって読書をする人たちの姿はとてものどかな雰囲気だった。
 緑溢れる庭園
 イスラエルの彫刻家の 「ピルタイとパシュフル」 という作品

庭園に囲まれた洋館では、モスクワの国立トレチャコフ美術館所蔵の 『エカテリーナ2世の四大ディナーセット』 という展覧会が開催中で、ロシアの宮廷晩餐会を飾った、威厳と崇高さ極まる豪華なテーブル・ウェアのコレクションがたくさん展示されていて、こんな豪華な食器で食事していたんだ・・・とため息さえ出た。
女帝エカテリーナ2世が発注した、ドイツのマイセン、イギリスのウェッジウッド、ブローチで有名なカメオなどのオリジナルの豪華な磁器が、年代別に展示されていた。
とりわけ、ウェッジウッドの “クリーム・ウェア” と呼ばれる乳白色の磁器に描かれたイギリスの風景画が繊細で素敵だった。

庭園美術館を出たあと1区間だけバスに乗り、次は白金台の松岡美術館に行った。
ここで開催されているのは、『エコール・ド・パリ展』。20世紀前半に、パリのモンマルトルやモンパルナスで活動した、ピカソやシャガールやモディリアーニ、ユトリロ、ローランサン、藤田嗣治らの作品が展示されていた。
数は少ないが、来場客も少なかったので、殆んど独占状態で鑑賞することができた。大好きなピカソの作品は2点、シャガールの 「婚約者」 という作品はとても心が和み、ベルナール・ビュッフェはサインがカッコ良かった。
ユトリロの作品を生で見たことがなかったので、先日行ったモンマルトルの街の風景画にとても惹かれた。
この美術館は、国内の美術館では珍しく写真撮影が可能だったが、殆んどの作品がガラス・ケース入りだったので、私の腕とカメラではちゃんとした写真が撮れなかったのが残念。(苦笑)
1階ロビーに展示されていたジェコメッティの 「猫の給仕頭」 というブロンズ像がとても可愛くて、常設展では古代オリエント美術が興味深く、エジプトの 「エネへイ像」 という浮彫の神像は、とても美しかった。
 松岡美術館
 マルク・シャガール 「婚約者」(1977)
 モーリス・ユトリロ 「モンマルトルのジュノ通り」(1926)
 ディエゴ・ジェコメッティ 「猫の給仕頭」(1967)   エネヘイ像 

再びバスに乗り、これで一日乗車券の元は取れ(笑)、ひとまず麻布十番駅前で下車。
実はパリから帰ってきてから、相変わらずコンビニのパンは一度も食していなく、日々美味しいパンを探し求めているのだが、麻布十番なんてこういう機会でもないと行かないので、「pointage(ポワンタージュ)」 というパン屋さんに行って、夕食用のパンを購入。
麻布十番から六本木までの丁度いいバスがなく、昔はこの区間をよく歩いたが、結構暑かったのでここだけは地下鉄でひと駅。
そして、芋洗坂にあるイタリアン・バール 「DEL SOLE(デル・ソーレ)」 で遅めのランチ。パスタ・ランチを戴いて、パスタもデザートのジェラートも美味しくて満足。
食後の運動と思い、東京ミッド・タウンまで歩いて行って、戻る途中で見つけたフローズン・ヨーグルト・ショップ 「GOLDEN SPOON」。ジェラートを食べたばかりだったが、外は夏のように照り付ける太陽で暑かったので、いちばん小さいサイズでラズベリー・フレーバーを買い、食べ歩きしながら六本木のバス停に向かった。
途中、東京タワー近くで下車。昔は職場がすぐ近くだった東京タワーも、今はここもこういう機会でもないとなかなか来ない所だ。
土曜日ということもあって、はとバスや観光バスがたくさん停まっていた。エッフェル塔を真下から見上げたので、東京タワーも・・・と思ったのだが、真下が建物になっているので比べることができなくてちょっと残念だった。
 足元から見上げた東京タワー

さて、次の目的地までまたバスに乗り、終点の東京駅丸の内口まで行った。土曜日なので、東京駅までの道はとても空いていた。
東京駅丸の内側の赤レンガの駅舎は、国指定の重要文化財に指定されているが、現在駅舎を本来の姿に復元するための工事が行なわれている最中。
 東京駅丸の内側駅舎

地下の八重洲口側に通じる自由通路を歩き、八重洲地下街を抜けてブリヂストン美術館に行った。
ここで今開催されているのは、『マティスの時代』 という、アンリ・マティスと彼と交流のあった同時代の作家の作品の展覧会。
こじんまりとしたとても綺麗な近代的な美術館で、マティスの作品を中心に、ここでも大好きなピカソに出会うことができて、「腕を組んですわるサルタンバンク」 という作品は、色使いやタッチが初めて見るものだったので、その絵の前に置かれた椅子に座ってずっと眺めていた。
ここも人が少なかったので、じっくりたっぷりと素晴らしい作品に触れることができた。特に気に入ったのが、ゴッホの 「モンマルトルの風車」。私の知っているゴッホの作品と言えば、色鮮やかでうねりのあるタッチの作品がほとんどなので、この作品の何とも言えない哀愁感に胸を打たれた。
で、肝心のマティスはというと、4つのテーマに分けて展示されていて、入館時にもらった解説が書かれた小冊子片手に鑑賞。
壁にはマティスの言葉が記されていて、その中でいちばん心に残ったのが、“私は人生から感じ取ったものをそのまま絵に写し取る” という言葉(思わずメモしてきた)。
そして、チラシの裏にも書かれている “私は一枚の絵を見るとき、何が描かれているかは忘れてしまう。大切なのは線と形と色だけである” という言葉のとおり、線と色を追求したかのような作品が印象的だった。
あまり好きではないのだが、カンバスに直接絵の具を搾り出して塗り、乾いては削り、その上からまた塗るという手法のルオーの作品は、めちゃくちゃ力強い作品だった。
 パブロ・ピカソ 「腕を組んですわるサルタンバンク」(1923)
 フィンセント・ファン・ゴッホ 「モンマルトルの風車」(1886)
※館内は撮影禁止なので、画像検索で探したもの。

美術館を出るとすっかり日も暮れ、再び丸の内側まで行って新丸ビルにあるパン屋さん 「POINT ET LIGNE(ポワン・エ・リーニュ)」 に行って、翌日のランチ用のパンを購入。
とてもパン屋さんとは思えないくらいの、スタイリッシュでモダンなデザインの対面販売のお店で、もっといろいろ買いたかったが、食べものなのでそういうわけには行かない。選びに選んだ明日のランチが楽しみだ。
そして、帰りも目黒駅までバスで行き、あとは定期券なので殆んど交通費をかけずに帰宅した。
たくさん歩いたし、緑溢れる自然と芸術とグルメを楽しんだ一日は、久しぶりにとても充実感のある外出だった。それに、普段は殆んど電車なので、バスに乗って滅多に通らないところを見ながら行くのは、とても楽しかった。

Tinted Windows / Tinted Windows

2009-05-05 | music : newcomer


一応デビュー・アルバムなので、カテゴリーを “newcomer” にしたが、この人たちをnewcomerとするのはあまりにもおこがましい。
少し前から、あのバンドにいたあの人が始動するという噂があり、そしてキャリアも人気も第一線を行く4人が集結してバンドを結成。3月にテキサスの音楽祭SXSWでお披露目し、ついにアルバムを発表した。
その4人とは、元Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ)のJames Iha(ジェイムズ・イハ)がギター、Fountains of Wayne(ファウンテインズ・オブ・ウェイン)のAdam Schlesinger(アダム・シュレシンジャー)がベース、ドラムスにはCheap Trick(チープ・トリック)のBun E. Carlos(バン・E・カルロス)、そしてVo.を務めるのは、Hanson(ハンソン)のTaylor Hanson(テイラー・ハンソン)という、豪華な顔合わせ。もうここに挙がった名前を聞くだけで、ステキなポップ・ミュージックが頭の中をこだまする。
バンド名はTinted Windows(ティンテッド・ウィンドウズ)、アルバムタイトルも同じだ。
AdamとTaylor、IhaとAdamという交流からバンドを結成し、ドラムスは是非にと頼まれたBun E.が、快く引き受けたという。
私なんかがHansonと聞いてすぐに思い出すのは、「キラメキ☆MMMBOP」 だ。兄弟3人組バンドHansonが1997年に放った、日本でも大ヒットしたデビュー曲 「MMMBop」 の邦題。
デビュー当時14歳だったTaylorも今では26歳。デビュー当時はアイドル視されていたが、10年以上の年月が経った今でも3人はHansonとして活動し続けている。
Ihaは、2000年にスマパンが解散した後、2006年の再結成時には参加せず、現在に至る。
Hansonのアルバムは聴いたことがないのだが、Matthew Sweet(マシュー・スウィート)と共作したりと、良質のパワー・ポップをやっていることは知っていた。
このアルバムを聴いて、大人になったTaylorの声を聴いてまず思ったのが、The Goo Goo Dolls(グー・グー・ドールズ)のベース&Vo.のRobby Takac(ロビー・テイキャック)に歌い方や声がとても似ているということだった。
そして、音楽の方はと言うと・・・良くないわけがない。アップ・テンポの曲はスピード感溢れる煌きを放ち、しっとりとした曲は泣きメロ全開。
11曲中7曲がAdam、Ihaが2曲、Taylorが1曲、AdamとTaylorの共作が1曲といった構成。
M-1 「Kind Of A Girl」 のイントロを聴いただけで確信できる、究極のパワー・ポップ。ついつい踊り出したくなるようなご機嫌で覚え易いメロディに、“Woah-Woah” というコーラスとIhaのギターが絡み、気持ちいいスピード感でM-2 「Messing With My Head」 につなげる。
M-3 「Dead Serious」 のサビ、“I'm serious” “Yeah baby dead serious” のあとにギターのメロディが追いかけるように流れてくるのだが、こういうのを “泣きのギター” というのだと実感させられるような音。こういうメロディ、こういうギターの音は、私の琴線に触れまくる。
「Dead Serious」 でキュンとなったあとは、ロック・チューンのM-4 「Can't Get A Read On You」 でたまらない疾走感を生み出し、Ihaの作ったミディアム・ナンバーM-5 「Back With You」 で、再び切なく迫ってくる。
M-7 「Cha Cha」 やTaylorが作ったM-9 「Nothing To Me」 は、80年代のパワー・ポップを彷彿させ、どこか懐かしく感じる。
M-10 「Doncha Wanna」 では、Ihaのギターが炸裂する。
AdamとTaylorが共作した最後のM-11 「Take Me Back」 は、一見単純なメロディのようだが、途中で変化して行く様が面白い。

Taylorとは親子ほどの歳の差のあるBun E.は、さすが大御所。正確でタイトな力強いリズムを淡々と刻み、AdamとIhaはコーラスに徹している。
しかし、全11曲、Ihaのギターなくして語れない。それほどに、彼のギターが重要な要素となり、Adamが作り出す素晴らしいポップ・ナンバーをより一層盛り上げている。そして、そんな3人に支えられて歌うTaylorは、とても張りのある伸びやかなVo.を響かせる。
パワー・ポップ・ファンは必ずハマるであろう、気持ちの良い曲のオン・パレードで、聴きながらにんまりと口元が緩んでしまう。


★Tinted Windows / Kind Of A Girl