without A trace

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Jason Mraz @C.C. Lemon Hall, Shibuya 02/24/09

2009-02-25 | performance


何年経っても、この名前はしっくりこない。C.C. Lemonホール・・・。経営の都合とは言え、渋谷公会堂でいいのに・・・。
名前が変わってから初めて行った。いったい何年ぶりだろう。少なくとも10年以上ぶりだ。今日は、楽しみにしていたJason Mraz(ジェイソン・ムラーズ)のコンサート。
座席指定なので、ギリギリまで近くでお茶してから行った。会場はほぼ満員。仕事の予定がわからなかったので、チケットを買ったのが公演前一ヶ月を切っていたため、席は2階席のほぼ真ん中辺りで、周りはほとんど外国人だった。それに、全体的にも外国人が多かった。いつも行くクラブでのライヴよりも、遥かに多く見かけた。

20分ほど押して開演。まずキーボードのEric(エリック)さんが登場して演奏を始め、やがて、白い長袖Teeにグレーのパンツ&スニーカー、帽子を被ったムラーズさんが登場。ギターのボディには、日の丸のステッカー。
オープニング曲は、「The Dynamo of Volition」。早口Vo.が滑らかに響き渡り、サビでは両手を挙げてパフォーマンス。間奏でベースのIan(イアン)さんとぴょんぴょんジャンプする姿がキュートだった。歌詞に “Tokyo” と入れて盛り上げる。
続く 「Only Human」 では、手話のようなパントマイムのような仕草を交えながら、Jazzyに歌う。とってもいい感じ。
「Life is Wonderful」 は、トランペットの音色が艶っぽくて、まるでムード歌謡のようだったけど、大好きな曲が聴けてうっとり・・・。生で聴くと、更に切なくなった。
そして、「Love For A Child」、「Live High」 と立て続けに好きな曲が続き、とても優しい気持ちになって心が癒された。
「Live High」 ではDVDで見たのと同じで、途中でGrooveline Horns(グルーヴライン・ホーンズ)の3人が2階席にやってきて演奏。パーカッショニストのToca(トカ)さんとの息もピッタリ。
ムラーズさんはあまり喋らないが、仕草が本当にコミカルでお茶目。そして、曲が終って発する言葉が、何故か “メルスィー”。時々 “ダンケシェーン” とも言っていた。もちろん “アリガトウ” も言っていたが、“メルスィー” が多かった。フランス語なのかフランス語っぽく喋ってるのかわからないが、何やら呟いていたし、フランス贔屓なのか?
“ジェイソ~ン!” という黄色い声に混じって、“じぇいそーん!” という野太い声も飛び交い、タンミング良く呼びかけた人には、ムラーズさんも “Yes!” と瞬間的に反応する一面も・・・。
ムラーズさんを始め、メンバー全員が白いヘルメットを被ってエレキ・ギターに持ち替えて歌った 「Geek in the Pink」 は、ホーンをフィーチャーしたアレンジで、後半はGrooveline Hornsが前に出てきてムラーズさんと一緒になってダンスしながら演奏。とっても楽しそうだった。
そのまま “これ、気に入ってるからこのまま歌うよ” と言って、ひとりだけヘルメットを被ったままSteely Danのカヴァー 「Peg」 を歌い、そのあとヘルメットを脱いで、“いちばん好きな曲は何? これは僕のいちばん好きな曲” と言って歌ったのが、「A Beautiful Mess」。しっとりと歌い上げ、美しいメロディと歌声に引き込まれて行った。
本編ラストは、「Butterfly」。間奏でサックスのCarlos(カルロス)さんとパントマイムでお遊び。メンバー紹介ではポラロイド写真を撮って客席に投げるというサービスっぷり。自分の時はドラム・セットの上にカメラを置いて、セルフ・タイマーで写していた。サックスのメロディとユニゾンで一緒に口ずさんでジャムったり、もの凄い高音でスキャットしたりと、歌の上手さに脱帽。
アンコールは、まずムラーズさんがひとりで 「Gypsy MC」 を弾き語り。トレモロのメロディが心地良かった。
そしてスペシャル・ゲストと言って呼んだのが、なんとウクレレを持ったタレントの長谷川理恵さん。ムラーズさんと軽くハグをして、「I'm Yours」 のイントロを弾き出した。彼女がウクレレを弾くなんて知らなかったので、正直驚いた。帰宅してからちょっと調べてみたら、サザンの関口和之氏に師事しているそうだ。
控えめに演奏していたが、トロピカルな雰囲気が漂い、なかなか良かった。
曲が終ると、彼女は再びムラーズさんとハグをしてハケて、その後ムラーズさんを真ん中にメンバー全員が前に出てきて肩を組んで最後のあいさつ。

会場のせいもあるのだろうが、ライヴというより、コンサートと言った方が相応しい雰囲気で、“聴かせる” “見せる” コンサートだった。ムラーズさんの歌の上手さに改めて感動し、そしてとってもセクシーなシンガーだと認識した。
ホーン・セクションとパーカッションがメインのシンプルなバンド構成で、ギターはムラーズさんだけ。でも、そのギターがまたとても上手い。
歌が上手くて演奏も上手くて、ルックスも良くてお茶目なムラーズさん。ちょっといつもとは違う、アダルトなひとときを過ごした気分。
昨日はどうやら 「The Remedy」 や 「Lucky」 をやったらしいが、 「The Remedy」 は聴きたかったので残念。「Lucky」 のColbie Caillat(コルビー・キャレイ)のパートは誰が歌ったのだろうか・・・。


★setlist★

・The Dynamo of Volition
・Only Human
・Life is Wonderful
・Love For A Child
・Live High
・Ray of Sunshine
・Geek in the Pink
・Peg ~cover of Steely Dan~
・A Beautiful Mess
・No Stopping Us
・Butterfly

~encore~
・Gypsy MC
・I'm Yours

『つみきのいえ』

2009-02-24 | cinema & drama


CONGRATULATIONS!!

『おくりびと』 が第81回アカデミー賞の外国語映画賞を受賞し、日本映画界初のオスカー受賞という快挙。やはり嬉しいものだ。
納棺師という、あまりにも日本的すぎる内容が、海外の人々の心に届いたというのが素晴らしい。死者を弔い、送り出すといういとなみが、とても神聖なものとして受け止められたということだろう。これは、是非とも観に行かなければ・・・。
『おくりびと』 は、モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞したり、つい先日発表された日本アカデミー賞の各賞を総ナメしたので、作品の評価はわかっていたが、それよりも何よりも気になったのが、同アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞した、加藤久仁生監督の 『つみきのいえ』。
12分という短いフィルムで、全部鉛筆の手描きのアニメーション。受賞のニュースでその映像の一部が流れたのだが、画のタッチがとても温かくてほのぼのしている。そして、主人公のおじいさんが、とってもチャーミングだ。
海面上昇という現在の抱える問題を背景に、積み木のように家を上へ積み上げて建て増ししていくひとり暮らしのおじいさんが、亡くなった奥さんや結婚して家を出た子供の思い出とともに人生を振り返るという、ノスタルジックでかつ現実的に描かれている作品。
既にDVDが出ていて、絵本にもなっていることがわかったので、さっそく入手してみようと思う。


 絵本    DVD(ナレーション:長澤まさみ)

こちらで絵本の一部が読める。

Ben Folds / Way to Normal

2009-02-21 | music : favorite


去年、Ben Folds(ベン・フォールズ)がフジロックで来日した時に出演した 『ベスト・ヒットUSA』 で、ニュー・アルバム 『Way to Normal』 からのファースト・シングル 「Hiroshima (B B B Benny Hit His Head) 」 についてのエピソードを語り、そのビデオ・クリップが流れた。
私は最初、「Hiroshima」 というタイトルを見た時、てっきり原爆を受けた広島について歌った曲だろうと思っていた。
が、そんな深刻な内容とは大違い。以前広島でのライヴで、彼がステージに登場した瞬間ステージから落っこちて、頭から血を流しながらライヴを続けたという実話を歌にした自虐ネタだった。
歌詞にはその一部始終が細かく綴られていて、可愛いクレイ・アニメのビデオ・クリップも歌詞に合わせて作られていた。
その 「Hiroshima (B B B Benny Hit His Head) 」 を1曲目に、アルバムはスタートする。
ピアノ・ロックの真骨頂とも言えるM-2 「Dr. Yang」 や、ポップでキャッチーなアクセル全開のM-9 「Bitch Went Nuts」、エレクトリックな音を取り入れたM-3 「The Frown Song」、ちょっとノイジーに仕上げたM-10 「Brainwascht」 など、マルチ・プレイヤーBen Fldsならではのいろんなタイプの曲が聴ける。
彼がこの3年の間に3度も経験した離婚を曲にしたという、今回のアルバム。そんな中、Regina Spektor(レジーナ・スペクター)という女性SSWをフィーチャーしたM-4 「You Don’t Know Me」 は、気持ちのすれ違いを歌っているのに、とっても可愛い曲。
別れを歌ったM-6 「Cologne」 は、バックのチェロの音色がじわ~っと響く美しいバラード。
いきなりア・カペラで始まるM-10 「Effington」 は、スピード感があってとてもカッコいい。
最後の曲、流れるような優しいバラードM-11 「Kylie From Connecticut」 は、既にもう再婚しているというお相手のことを歌ったのだろうか・・・。
元気いっぱいのパンキッシュで疾走感溢れる曲からしっとりバラードまで、弾けるピアノが心地良く、ポジティウでアグレッシヴな傑作だ。
ただ、トランスっぽいM-8 「Free Coffee」 だけは、ジリジリチクチクしたノイズ音が、i-Podで聴いていると気持ち悪くなってきて飛ばしてしまう。

『ホルテンさんのはじめての冒険』

2009-02-17 | cinema & drama


二週間ほど前になってしまうが、映画の試写会に行ってきた。
この頃はもう滅多に試写会の応募はしないのだが、たまたま公開されたら絶対観に行こうと思っていた作品だったので応募したところ、まんまと当選。
『ホルテンさんのはじめての冒険』 という2007年のノルウェー映画で、試写会の場所はノルウェー王国大使館。それだけでも、なんだかわくわくしていた。
広尾の閑静な住宅街を抜けて行くと、右にノルウェー王国大使館、左にはスイス連邦大使館があった。
門のところで係りの人が出迎えてくれ、敷地内に入ってプール付きの庭に面した多目的ホールに入り、受付でノルウェー関係のパンフレットやポストカードをもらった。
50脚ほどの椅子が並べられた白木造りのホールの壁には、ノルウェーのポスターや、日本人アーティストが織ったというノルウェーの伝統的な模様のタペストリーが飾られていた。
開演前に大使館の人から挨拶があり、ノルウェーについての話の中で、国の独立を最初に承認したのが日本で、ノルウェーからはとても身近に感じられている国なのだということを初めて知った。

映画はまだ公開前なので、詳しい内容には触れないようにするが、とにかく素敵な映画だったということは先に伝えておこう。
観なくちゃと思いつつも結局まだ観ていない、『キッチン・ストーリー』(2003年)のベント・ハーメル監督の新作。
ノルウェーの首都オスロと、ノルウェー第2の都市ベルゲン間を結ぶベルゲン急行の生真面目運転士、オット・ホルテンさん67歳が主人公。
勤続40年、規則正しい生活を毎日送り続けてきたホルテンさんが、ついに定年を迎えるという日の前夜、同僚たちが送別会を開いてくれた。
鉄道ファンが泣いて喜びそうなそのパーティの趣向が、笑いを誘う。そんな場でも、ホルテンさんは生真面目。翌日の勤務に備えて早く帰ろうとしたが、二次会に誘われて断れずに結局付いて行った先で、予期せぬ出来事に遭遇。
そして、かなり笑えるその予期せぬ出来事によって、最後の勤務に大遅刻してしまったから、さあ大変! そこからゆ~っくりと、ホルテンさんの中の何かが解けて変わって行く。
「人生はいつも手遅ればかりだ。だけど逆に考えれば何でも間に合う」 と言う登場人物のセリフ。“そういう考え方もあるんだ” と改めて思うと、ポジティヴに考えることができる。
決められた枠の中で人生を送ってきたホルテンさんが、一歩を踏み出すことによって、戸惑いながらも今までとは違う何かを感じて行く。
そして、定年退職後もずっと制服を着ていたホルテンさんが、初めて私服になったことがメッセージとなる、人生最大の冒険(ホルテンさんの場合は何なのかは、観てのお楽しみ)へと臨んで行く姿に、温かい気持ちになって勇気をもらうことができた。
 ひと癖もふた癖もある欠かせない登場人物たち
 初めて私服になったホルテンさん

セリフは少なく、ゆる~く進んで行くが、そこかしこにクスッと笑えるユーモアが散りばめられていて、ほっこりとした気持ちにさせてくれる、とても優しくて温かい作品だった。
そして、いつもとは違うことに一歩踏み出すことは勇気はいるけど、それがいかに大切かということ、そうすることによってこれまで見えていなかったものが見えてくるということを教えてくれる、素敵な作品だった。
ポスターやフライヤーでホルテンさんが抱えている大きな犬のモリーは、特にストーリーに絡んでくるわけではないが、何とも言えない存在感がある。
このモリー(本名も同じ)は、本作品で2008年カンヌ国際映画祭パルム・ドッグ賞審査員特別賞を受賞しているらしい。パルム・ドッグ賞とは、その年の出品作で優秀な演技を見せた犬に贈られている賞で、映画祭の最高賞パルム・ドールをもじって名づけられた賞。
「ニッサンが日本の会社だって知ってたか? スウェーデンって言うならわかるけど、日本だなんて信じられないよ」 というセリフや、ホーム・バーにサントリーのウィスキー “響” が置かれてあったりして、監督は日本好き?なんて思ったりする一面もあり、列車の連結の様子や、運転席からの車窓、真っ白な雪原風景や趣きのある街の様子など、旅行好きにとってもわくわくさせられる映像がたくさんあり、バックに流れる音楽も優しくて美しく、物語にとても合っていた。






★日本公式サイトはこちら。オリジナル公式サイトはこちら
★この(↑)予告編はUS版だが、上記公式サイトで日本版とオリジナル版を比べてみるのも面白い。やはり日本版はツボを得ていて、観たいという気持ちにさせる。
  でも、決して良いとこ取りの予告編ではなく、本当にステキな映画なので、是非お薦めする。そして、北欧好き、旅行好き、鉄道好きにもお薦めだ。
★2月21日より、東京Bunkamuraル・シネマ、大阪梅田ガーデンシネマ、神戸シネ・リーブル神戸にて公開。以降、順次全国で公開。

Jason Mraz feat. Colbie Caillat / Lucky

2009-02-15 | music : favorite


前回に引き続き、Jason Mraz(ジェイソン・ムラーズ)に関すること。
3rdアルバム 『We Sing, We Dance, We Steal Things』 に収録されている、女性SSWのColbie Caillat(コルビー・キャレイ)とデュエットしている 「Lucky」。
セカンド・シングルとして、先月からこの曲のビデオ・クリップが配信されているのだが、それを見たらこの前行ってきたばかりの旅行先、プラハの映像だったので、“あっ、あそこだ!” と声を上げながらちょっと興奮。懐かしさもあって、一日一回は見ている。(笑)
セピア色のプラハの街を歩く、黒のスーツに白のタイでビシッと決めたカッコいいムラーズさんと、フル・カラーの太陽に輝くアメリカ西海岸の海辺を歩いている、真っ白なサマー・ドレスと小麦色の肌が眩しいColbieとの映像が、歌に合わせて掛け合いで流れる。
始まりは、プラハ旧市街広場。そして、ティーン聖母教会や聖ミクラーシュ教会、ヴルタヴァ河越しのプラハ城、旧市庁舎時計塔、ヤン・フス像、チェフ橋に石畳の旧市街の道と、全部自分がこの目で見てきた風景なので、何だか嬉しい気持ちになる。
それにしても、切なく美しいラブ・ソングのこの曲に、ノスタルジックな美しいプラハの街がとてもよく似合う。




Jason Mraz / Mr. A-Z

2009-02-12 | music : favorite


Jason Mraz(ジェイソン・ムラーズ)の2nd 『Mr. A-Z』。
2005年リリースのこのアルバムを聴いたのは、3rd 『We Sing, We Dance, We Steal Things』 を聴いて、ムラーズさんの大ファンになってから。
タイトルの 『Mr. A-Z』 が、そのまんま “Mraz” になっているというのが、こじゃれているというかお茶目というか・・・、ユーモアのセンスがいい。
そんなお茶目な感じとは相反するような、哀しげなメロディのM-1 「Life is Wonderful」 で、アルバムは始まる。
まるで、恋愛映画の悲しいワン・シーン、そう、雨の中ヒロインが泣きながら歩いているようなシーンを思わせるような、もの憂げで切ないメロディが漂う。
続くお得意の早口ソングM-2 「Wordplay」 では、ガラッと変わってポップですがすがしい気持ちにさせてくれる。
M-3 「Geek in the Pink」 は、イントロにスクラッチなんかを入れて、ファンキーにカッコ良く決める。それにしても、オタク(Geek)のことを歌にするなんて、ムラーズさんならではだ。
美しいピアノの音色に乗せて優しく包み込むように歌う、M-5 「Mr. Curiosity」 は、後半オペラ歌手のようなビブラートのかかった歌声が流れてくる。しかし、クレジットを見てもどこにも女性歌手の名前がない。なんとムラーズさん自身が歌っていた。その歌の上手さと声の美しさに改めて感動し、後ろに流れるチェロの音色も心に沁みた。
軽快なリズム感溢れるM-6 「Clockwatching」 の爽やかなサビ・メロは、とても気持ち良くて、思わず笑みがこぼれそうになる。
M-7 「Bella Luna」 を初めて聴いた時、その切ないメロディと透明感のある美しい声が鳥肌が立つほど素晴らしく、しばらく耳から離れなかった。
続くM-8 「Plane」 でもしっとりと歌い上げ、M-9 「O. Lover」 で軽快に飛ばす。早口なのに、言葉がハッキリしていて聴きやすい。
M-9 「Please Don't Tell Her」 は、このアルバムでいちばん好きな曲。徐々に広がって行くメロディ展開が、とても優しくて温かく感じる。そしてこの曲では、語尾の “n” や “m”、“g” の発音を、強調して歌っているのがよくわかる。
ラストM-12 「Song For a Friend」 は、静かにしっとりと、そして最後の最後にクライマックスがやってきて、気持ちを高揚させてくれる。
いろいろなタイプの曲が聴ける、温かみのある叙情豊かなアルバムだ。

ムラーズさんの美しい声は、本当に癒される。そして後追いとは言え、彼の歌の上手さには感動するばかりだ。
CDで聴いて歌が上手いと思っても、実際ライヴではどうってことないシンガーも少なくないが、『We Sing, We Dance, We Steal Things』 のライヴDVD付 “Expanded Edition” の映像に、ギター一本で歌う曲がたくさん収録されていて、ムラーズさんの歌の上手さはただ者ではないということがよくわかる。
仕事の予定がわかったあと、早速今月のライヴのチケっトを購入した。一ヶ月を切っていたので、当然2階席しかなかったが、彼の歌声を生で聴けるだけで嬉しい。

Keane / Perfect Symmetry

2009-02-07 | music : favorite


約2年ぶりのKeane(キーン)のニュー・アルバム 『Perfect Symmetry』 は、80年代のエレクトリック・ポップを彷彿させるような、キラキラ輝きのあるポップ・チューンが満載。
エレクトリック・ポップと言っても、私はピコピコ・サウンドは苦手なので、そうではない部類のものだと思って頂きたい。E.L.O.に近い感じだろうか・・・。
1stは優しくて甘く、もの哀しげな透き通ったアルバム、2ndはアグレッシヴで、サウンド面でいろんな試みを施した実験的なアルバムだった。そして3rdは、とにかくポップ度全開だ。
また、ライヴ以外ではこれまで頑ななまでにギター・レスでやってきて、2ndではピアノにエフェクターを繋いで似た音を出していた。今回、ん?これはギターの音?と思ってクレジットを見ると、やはりギターだった。ついに彼らもギターの音を入れたという訳だ。
Tom Chaplin(トム・チャップリン)の美しい歌声は健在で、とてもビート感があってダンサブルで楽しい曲が多いのも印象的。いい意味で期待を大きく裏切られたと言った感じだ。凄くいい!
斬新なシンセ・サウンドのM-1 「Spiralling」 で、“フーッ” という掛け声のコーラスがあり、これまでのKeaneになかった感じなので少し戸惑ったが、すぐに馴染んだ。
M-2 「Lovers Are Losing」 のサビは、泣きメロ全開。そして一緒に口ずさみたくなるような、親しみ易くて綺麗なメロディ・ライン。
ハンド・クラッピングが入って、ちょっとおどけた感じのM-3 「Better Than This」 は、セレブに熱狂的な人達をファンキーな曲に仕上げたらしい。
アルバムの中でいちばんピコピコしているのがM-4 「You Haven't Told Me Anything」 だが、メロディーが美しいのであまり気にならない。
アルバム・タイトル曲のM-5 「Perfect Symmetry」 は、これまでのKeaneに最も近い感じの、切ない叙情的なピアノ・サウンド。途中のコーラス部分なんか、素敵すぎて涙が出そうになる。
美しいバラードのM-6 「You Don't See Me」 では、特にTomの歌声が心地良く耳に響く。
M-7 「Again and Again」 とM-10 「Black Burning Heart」 は、壮大なスケールの存在感のある曲。
ダンサブルなM-9 「Pretend That You're Alone」 では、サックスを取り入れ、ドラマチックなバラードのM-11 「Love is the End」 では、ヴァイオリンとチェロのストリングスをアレンジに加え、最後にしっとりと聴かせる。

過去にドラッグの摂取で活動を休止し、その後復帰したものの、メンタル的に完全ではなく、再び深刻な状況に陥ってしまったTomだったが、もう心配ないだろう。アルバム・タイトルが示すように、“Perfect Symmetry” つまり “完璧な調和” は、完全復帰を表しているとも言えよう。
ある意味、ひとつの殻を破って弾けているような感じがするし、幸福感も伝わってくる。
昨年のベスト・アルバムの10位に挙げたが、今なら5位くらいまで上げたいほどで、全11曲を聴き終えても尚、余韻に浸って目を閉じたままでいたくなるくらい、愛しいアルバムだ。


★ずいぶんスリムになって健康そうなTom(カッコ良くなった)がちょっと演技している、泣きメロ全開の 「The Lovers Are Losing」。
  このビデオ撮りで走って、更に引き締まったかも?(笑)