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『Paris パリ』

2009-01-27 | cinema & drama


ズバリ、『Paris パリ』 というタイトルの映画。もちろん舞台はパリ。パリに暮らす人たちの群像劇。昨年、Yahoo! JAPANに特集ページがあって、そこで予告を観て興味を持った。
Bunkamuraル・シネマは帰宅途中に寄れるので、無駄足ではなかったが、いつ行っても満員で、先週やっと観ることができた。
監督は、セドリック・クラピッシュ。(代表作は、『猫が行方不明』 『スパニッシュ・アパートメント』 『ロシアン・ドールズ』 など。)
物語は、ある姉弟を中心に展開して行く。3人の子持ちのシングル・マザーの姉エリーズ役は、私の好きな2作品 『存在の耐えられない軽さ』 と 『ショコラ』 でヒロインを演じたジュリエット・ビノシュ。
ムーラン・ルージュのダンサーだった弟ピエールが心臓病とわかり、彼を支えるために一緒に暮らすようになるところから物語は始まる。
死を意識したピエールが、アパートのベランダから眺めるパリの街。向かいのアパートに住む美しいソルボンヌ大学生、その大学生に恋してはしゃぐ老教授、マルシェ(市場)で働く人々、いつも文句ばっかり言っているパン屋の女主人、ファッション業界の派手な女たち・・・などなど。
それぞれがパリを愛し、パリに生き、パリに文句を言い、パリで悩む日常。誰もが抱えている痛みや辛さ、哀しみや喜びが交差して行く。そこには、いつもと変わらないパリの街がある。
残された日々を悶々と過ごすピエールには、今までの不満だらけの何気ない日常も、大切なものになって行く。

特にクライマックスがあったりするような展開ではなく、淡々と過ぎて行く人々の普通の日常を、要所要所にユーモアを交えながら、ひとつひとつ丁寧に描いている。
人と人との繋がりが、別のようで別ではない接点があったり、思いがけないところでその接点を発見することができる。でも、登場人物がとても多くて、繋がりを把握しきれない部分もあった。
何気なく通り過ぎて行く日々を、もっと大切に、そして自分自身で楽しまなきゃということを教えてくれる。生きていることを改めて実感する、人間味のあるいい映画だった。
予告編のイメージ・ソングがKeane(キーン)の 「Somewhere Only We Know」 だった。でも、劇中やタイトル・ロールでも一切この曲は流れなかったので、日本だけのオリジナルなのかも知れない。この曲は、既にキアヌ・リーヴス主演の 『イルマーレ』 の主題歌になっているから、逆にそれで良かったと思う。

それにしても、ジュリエット・ビノシュがキュートだった。『ショコラ』 では明るく朗らかな美しい女性、『存在の耐えられない軽さ』 では芯の強いコケティッシュな女性を演じていたが、今回とても彼女を身近に感じたのは、“普通” が描かれていたからかも知れない。とても魅力的だった。


パリの風景はとっても美しく、画になるメジャーなエッフェル塔やノートルダム大聖堂、モンマルトルのサクレ・クール寺院を始め、ディープなカタコンブや地元の人たちの生活に密着したマルシェや、パリに欠かせないカフェなど、パリのいいところも悪いところも様々な角度から伝えようとしている、メッセージのような映像だった。
ラスト・シーンで、ピエールの目線で流れて行くパリの街のアングルが、特に切なくて美しく、印象的だった。
パリでなくてもいい。東京でも大阪でも、ニューヨークでもロンドンでも同じ。生きているのだから、それぞれが抱える問題はつきもの。その街が好きか嫌いかはともかく、自分の人生、悔いのないように生きなきゃ!






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