一応デビュー・アルバムなので、カテゴリーを “newcomer” にしたが、この人たちをnewcomerとするのはあまりにもおこがましい。
少し前から、あのバンドにいたあの人が始動するという噂があり、そしてキャリアも人気も第一線を行く4人が集結してバンドを結成。3月にテキサスの音楽祭SXSWでお披露目し、ついにアルバムを発表した。
その4人とは、元Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ)のJames Iha(ジェイムズ・イハ)がギター、Fountains of Wayne(ファウンテインズ・オブ・ウェイン)のAdam Schlesinger(アダム・シュレシンジャー)がベース、ドラムスにはCheap Trick(チープ・トリック)のBun E. Carlos(バン・E・カルロス)、そしてVo.を務めるのは、Hanson(ハンソン)のTaylor Hanson(テイラー・ハンソン)という、豪華な顔合わせ。もうここに挙がった名前を聞くだけで、ステキなポップ・ミュージックが頭の中をこだまする。
バンド名はTinted Windows(ティンテッド・ウィンドウズ)、アルバムタイトルも同じだ。
AdamとTaylor、IhaとAdamという交流からバンドを結成し、ドラムスは是非にと頼まれたBun E.が、快く引き受けたという。
私なんかがHansonと聞いてすぐに思い出すのは、「キラメキ☆MMMBOP」 だ。兄弟3人組バンドHansonが1997年に放った、日本でも大ヒットしたデビュー曲 「MMMBop」 の邦題。
デビュー当時14歳だったTaylorも今では26歳。デビュー当時はアイドル視されていたが、10年以上の年月が経った今でも3人はHansonとして活動し続けている。
Ihaは、2000年にスマパンが解散した後、2006年の再結成時には参加せず、現在に至る。
Hansonのアルバムは聴いたことがないのだが、Matthew Sweet(マシュー・スウィート)と共作したりと、良質のパワー・ポップをやっていることは知っていた。
このアルバムを聴いて、大人になったTaylorの声を聴いてまず思ったのが、The Goo Goo Dolls(グー・グー・ドールズ)のベース&Vo.のRobby Takac(ロビー・テイキャック)に歌い方や声がとても似ているということだった。
そして、音楽の方はと言うと・・・良くないわけがない。アップ・テンポの曲はスピード感溢れる煌きを放ち、しっとりとした曲は泣きメロ全開。
11曲中7曲がAdam、Ihaが2曲、Taylorが1曲、AdamとTaylorの共作が1曲といった構成。
M-1 「Kind Of A Girl」 のイントロを聴いただけで確信できる、究極のパワー・ポップ。ついつい踊り出したくなるようなご機嫌で覚え易いメロディに、“Woah-Woah” というコーラスとIhaのギターが絡み、気持ちいいスピード感でM-2 「Messing With My Head」 につなげる。
M-3 「Dead Serious」 のサビ、“I'm serious” “Yeah baby dead serious” のあとにギターのメロディが追いかけるように流れてくるのだが、こういうのを “泣きのギター” というのだと実感させられるような音。こういうメロディ、こういうギターの音は、私の琴線に触れまくる。
「Dead Serious」 でキュンとなったあとは、ロック・チューンのM-4 「Can't Get A Read On You」 でたまらない疾走感を生み出し、Ihaの作ったミディアム・ナンバーM-5 「Back With You」 で、再び切なく迫ってくる。
M-7 「Cha Cha」 やTaylorが作ったM-9 「Nothing To Me」 は、80年代のパワー・ポップを彷彿させ、どこか懐かしく感じる。
M-10 「Doncha Wanna」 では、Ihaのギターが炸裂する。
AdamとTaylorが共作した最後のM-11 「Take Me Back」 は、一見単純なメロディのようだが、途中で変化して行く様が面白い。
Taylorとは親子ほどの歳の差のあるBun E.は、さすが大御所。正確でタイトな力強いリズムを淡々と刻み、AdamとIhaはコーラスに徹している。
しかし、全11曲、Ihaのギターなくして語れない。それほどに、彼のギターが重要な要素となり、Adamが作り出す素晴らしいポップ・ナンバーをより一層盛り上げている。そして、そんな3人に支えられて歌うTaylorは、とても張りのある伸びやかなVo.を響かせる。
パワー・ポップ・ファンは必ずハマるであろう、気持ちの良い曲のオン・パレードで、聴きながらにんまりと口元が緩んでしまう。
★Tinted Windows / Kind Of A Girl